表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/71

03 ダンジョン探索①


「うわぁ〜!……すごいですねーー」


クロノがダンジョン内部の光り輝く魔鉱石を見て珍しく感嘆の声をあげる。


その様子を、微笑むように見守るエリスフィールが問いかけた。


「ふふっ♪領主様は初めてのダンジョンですものね。これは《発行石》といって、灯篭代わりに使われる事が多いんですよ♪」


「へぇ〜……少し採掘していって、領内で流通させておくのもいいかもしれないなーー」


クロノの嬉しそうな表情をみて満足そうなエリスフィール。


とーー、そこに。


「きたぜ……お客さんだ。」


奥から現れた十匹の黒羽の悪魔(ブラックバット)が。


すぐさまエドワードは戦闘体制を構えた。


「エリスフィール!手を出すなよ……領主にもやらせねぇといけないからな」


「承知しました。領主様ーーお気をつけくださいませ」


「ああ、ありがとう二人ともーー」


そのままクロノは駆け出し、お得意の短剣であっという間に十匹全てのブラックバットを討伐する。


宙を舞うコウモリ相手にどう戦うか思案していたエドワードだったが、《未来眼》のあるクロノには造作もない戦いで危なげなく討伐していったーー。


「こんなもんかな!」


「お見事です、領主様ーー」


そのままダンジョンの中を突き進む。


しかし、出会う魔物はしばらくの間黒羽の悪魔(ブラックバット)のみであったーー。


……………………。


一つ、このダンジョンが奥に進むに連れて気づいた事がある。


それはーー奥の方で《発光石》が少なくなってきてエリスフィールが注意喚起をしていた時の事だーー。


「領主様、エドワード様ーーここから先は随分と暗くなってきております。灯りの準備を致しますので、少しお待ちくださいませーー」


「……まぁ、どんな罠があるかもわからねぇしーー無闇に進むのは得策じゃあねぇなーー」


そう言って、ランプの準備をいそいそと進めるエリスフィールと、その合間にストレッチをするエドワード。


そんな二人に、首を傾げながらクロノが疑問を問いかける。


「ええと……二人とも、何やってるんだ?」


クロノの言葉に、何か不手際があったのではと心配そうな顔をするエリスフィール。


「えっとーー領主様。ここから先は暗闇が続く為灯りを持っていこうと思うのですが……どうかなさったのですか?」


何を言っているのかーー?という不思議そうな顔をするクロノ。


「すごいんだなエリスフィール。これだけ明るいのに先が暗いかどうかわかるなんてーー」


「「えっ!?」」


「えっ?」


何か、変な事を言っただろうかという風に、冷や汗を垂らす。


どうやら、二人には今のクロノの言動が意外なものだったらしいーー。


「おめぇ……これだけ暗い中()()()だなんて……強がりにも程があるだろう」


「えっ?でも……さっきからエリスフィールも先生も罠の位置を把握して避けてましたよねーー全部」


「「えっ!!?」」


「えっ?」


また何か言っちゃっただろうかーーそんな風に口を歪めて固まるクロノ。


「私は《精霊魔法》で罠の探知をしていたから問題ありませんし……エドワード様もそういう方面の嗅覚が鋭いとお聞きしていたのですがーー決して全部目で見て避けていた訳では無いのですよ?」


エリスフィールは顎に手を当て首を傾げる。


「ああ……しかも罠にかからねぇよう避けてたから、エリスフィールはともかく俺はわざわざ言う事もなかったがーーおめぇ本当に俺たちの動き全部あの暗闇の中見えてたのか?」


エドワードの問いかけにーーこくり、と不思議そうに頷くクロノ。


それを誇らしそうにエリスフィールが。


「さ……さすが領主様です!こんな暗い道でも夜目が効くなんてーー」


両手を合わせて誇らしそうに笑みを浮かべる。


「あ、あはは……そうだねーー」


昨日まで夜目が効かなかった事から、薄々なぜそうなったのかを悟るクロノであったーー。


……………………。


「〝ステータスシールド〟ーーオン」


相変わらずよくチェックし忘れるこの機能だが……先程の一件が気になって自身のスキルを確認する。


「やっぱり……そうだったんだな」


新しく習得したであろう、《夜目》スキル。これは先程の黒羽の悪魔(ブラックバット)を倒した際に手に入れたスキルなのだろうか?


何故か一度も意識して使っていないにも関わらずスキルレベルが4まで上昇していた。


「……もしかして、スキルを持っている相手を倒すとスキルが重複するから、その分スキルレベルに上乗せされるのか?」


それなら知らぬ間に《夜目》スキルが発動していたとしても頷ける。


というのも最近……《未来眼》のスキルもレベルが高くなったからか、あまり意識せずとも色々な未来が見えてしまうのだ。


例えば、今エリスフィールが昼食の用意をしているのだが……手が滑ってやっぱりーー落っことした。


それを涙目になりながら《精霊魔法》で浄化をかけている。


「ん?どうされたのですか……領主様?」


「いいや……何でもないよ」


実に平和だ。だけど、一つだけ気になる事がある。


ダンジョンというものは何日もかけて潜るものーーと先生は言っていた。いくら難易度が高く無いとはいえ……現にエリスフィールも、先程から《精霊魔法》による警戒を怠っていない。


だけど何故だろうか……あまり危険だという意識を感じないのに、妙な胸騒ぎを覚える。


こう言う経験……前にした事があるような気がする。何と言うか、〝前世〟であった記憶?みたいなーーそんな不確かな違和感だ。


まぁーー、それでも先生とエリスフィールがいるから問題は無いだろうーー。


……………………。


一階層終盤ーー。


「グゥオオオオオオッ!!」


骸骨兵士(ボーンナイト)の群れが現れた。その数およそ三十体。


一階層とはいえ、終盤にしては少しイージー感が否めないがーーそれでも呆気なく倒せた。


「〝風よ・吹き荒れろ〟」


割と雑に省略されたエリスフィールの《風魔法》で骸骨兵士の動きが鈍る。


先程エリスフィールに教えてもらったのだが、どうやら魔法というものは省略すれば威力が激減するが……味方を巻き込まずに済む為に《風魔法》や《水魔法》なんかは足止めとして使うのにちょうど良いらしい。


「今です!エドワード様、領主様!!」


エリスフィールが作った隙に突入をかまして、一気に先生と連携を取って骸骨兵士(ボーンナイト)を駆逐していく。


「グオオオオオッーー」


ガラガラゴロッーーと音を立てて、粉砕されていく骸骨兵士。


その直後、倒れた骨の前にエリスフィールが静かに手を合わせてーー


「〝汝らに・安寧と祝福の加護ありて・黄泉の国にて・幸ある事を〟ーー」


エリスフィールがそう唱えた瞬間ーー無数の骸骨兵士の魂が浄化されていく。


《精霊魔法》を使ったエリスフィール風の……〝黄泉送り〟の儀だそうだーー。


「きっと、ここで永劫の時を生きるよりも……彼らにとっては浄化される事の方が、幸せかと思います。……勝手な主観ではありますが、それでもーーどうか彼らがこれから歩む道が幸多い事を願いたくて祈りましたーー」


寂しそうに、ニコッと微笑むエリスフィール。


伏し目がちな彼女の横顔はひどく寂しそうで、ふわりと優しく撫でるその銀色の髪は、彼女の心を鏡写しにしているように煌めいた。


こういうエリスフィールの笑顔を見ると、改めて本当に根っからの優しい子なんだなと思いーー気づけばふと頭を撫でていた。


「エリスフィールは優しいなーー」


「っ!!……領主様ーー」


照れた表情でポッと頬を赤らめて、俺の手をほっぺすりすりするエリスフィール。


その様子を見て、同調して熱が伝わってきた。


「そ、そろそろ野営の準備をしようか……」


「…………ふふっ。はいっ!ーー」


……………………。


次の日。


「これが階段……ですか?」


「ああーーどうやらここの〝ダンジョン主〟は変わった趣向が好きらしいーー」


「ですが少し……色鮮やかで綺麗ですね」


地下二階へと続く階段。


そこには、来るものを祝福するように、赤、緑、青、黄色、白、紫、と多色の魔鉱石をふんだんに使われていた。


先生いわくダンジョンでは魔物が下に下がる事はあっても、上に上がってくる事はまず無いらしいーー理由はナワバリを守る習性から来ているとか深追いをし過ぎないのは生物としての危機管理能力だとか……そんな事を言っていたが、シンプルに〝そういうものだと覚えろ〟と言われた。


ダンジョン内は日付の境や時間がわからなくなる為ーー時計を頼りにして日暮の時刻になったら探索を終えたーー。


この日は魔物に出会う事は殆ど無く、鉱石を採掘したり古の壁画を鑑賞したりと、本当に観光気分の一日だったーー。


……………………。


ダンジョン探索三日目ーー。


地下二階の中間地点までやってきた。


あの後からも特に何かあったわけではなく……ただただ初めてのダンジョンをもの珍しく楽しみながら討伐に勤しんでいた。


出てくるのは主に迷宮蛇(ダンジョンスネーク)光る小鬼(キラリゴブリン)噛みつき小鬼(ガブリン)上位骸骨兵士(ハイボーンナイト)等が多かった。


中でも光る小鬼(キラリゴブリン)から取れる歯や爪などは高値で取引されるらしく、エリスフィールが丁寧に採取をしてくれていた。


思えば確かに、光る小鬼(キラリゴブリン)出会う頻度は一番少ない方だったよう感じる……。


「領主、そこだ!」


「了解っ!!」


先生の合図で、上位骸骨兵士(ハイボーンナイト)の討伐も無事完了する。


これはCランクの魔物。基本的にランクは同一の者が五人束となって勝てると言われているため……Cランク五人分の力は、既に俺にはあると言う事だろう……。


まぁ、アーモンドも俺は〝A級クラス〟相当だと言っていたし……これくらいの相手だったら苦にならずに倒せるのだがーーそれでもやはり、油断するのはよく無い。


人が負ける時……その殆どは、足元を掬われる事にあるのだからーー。


……………………。


夜ーー。


「領主様、そろそろダンジョンにも慣れてきた頃合いだと思います……。なので、《水魔法》の訓練を始めましょうかーー」


エリスフィールがにこやかに、問いかける。


「ああ、よろしく頼むよ。エリスフィールーー」


いつもはエドワードが先生だけど、今日からはエリスフィールも先生だ。


ちゃんと敬意を持って言う事を聞かないとなーー。


「それじゃあ領主様ーー私の手を握ってください」


…………これは、言う事を聞いた方がいいのか?


まぁ、大人しく握るけど……。何の時間なんだこれ?


「エリスフィール……これ、何の意味があるんだ?」


「領主様を感じているのですーー」


もう一度問いたい。これ、何の時間なんだ?


「……領主様の中に流れる、〝マナ〟の流れ具合を把握したほうがーー魔法を教えやすくなりますので。最初は簡単な魔法から行きましょう♪」


エリスフィールが手を離すと、そのまま詠唱を唱え始める。


「〝自然よ・水神よ・我にその力を与えたまえ・我の願いの元に・今ここに一飛沫の水を放出させよ〟ーースプラッシュ・ウォーター!!」


エリスフィールの魔法により、軽いビシャッーーと水飛沫が放出される。


初めての魔法に、ちょっとだけ緊張する。


「それでは、同じようにやってみてください♪」


「わ、わかったーー〝自然よ・水神よ・我にその力を与えたまえ・我の願いの元に・今ここに一飛沫の水を放出させよ〟ーースプラッシュ・ウォーター!!」


同様に唱えると、クロノの手元から水飛沫が放出される。


初めて使えた魔法への感動に、クロノの興奮は最高潮だった。


「す、すごいよエリスフィール!魔法が……魔法が使えた!!」


初めて使った《水魔法》。


心の底から喜んでいる様子のクロノをみて、大変満足そうにエリスフィールは頷く。


「さすが領主様です。……まさか一度でできてしまうなんて」


ほろり、と嬉し涙が滴るエリスフィール。


その様子からは、我が子を慈しむ母親のような嬉しさが伝わってきた。


「確かにそうだけど……エリスフィールが手を握りしめてくれたおかげだよ。……なんて言うか、マナの流れ?みたいなものがいつもより少しだけ感じられたんだ!」


「ふふっ、お役に立てて嬉しい限りです。領主様♪」


そんな二人の様子をエドワードはちょっと不満げに見つめていた……。


「はぁ〜……ったく、剣術もまだまだ半人前の癖に魔法にまで手を出しやがってーー」


それからしばらくの間ーーエリスフィールの魔法訓練が続く。


流石に一度で覚えられる数には限度があった為……効率を考えてこの日はひたすら〝スプラッシュ・ウォーター〟の訓練に勤しむのだったーー。


……………………。


暗い暗いーー地底の闇。


日の光が届かないような場所でーー、鎖に繋がれた一人の少女がたじろぐ。


「ん……んん。…………ん?」


全身が傷だらけ、その両手は壁と一体の手錠で繋がれており、一枚布の服もボロボロ……ボサボサに伸び切った紺色の髪は何年も手入れされていない。まるでその少女の様子は囚人のような有様だったーー。


そんなーーひどく憔悴しきった表情でその少女は、紺色の虚な瞳でどこか遠くを見つめていた……。


「…………神気の……気配?」


朧げな意識を手放し……やがて、再び眠りにつく。


両手を壁に縛り付けられるその様子はーーまるで神に祈りを捧げているようだったーー。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ