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17. 不穏な足音 ★お知らせあり

お知らせ:シーズン2『エピソード14』『エピソード15』『エピソード16』で投稿順序に間違いがありました。ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。再投稿につきましては、以下の時間帯を予定しております。


2月2日8時15分頃 『エピソード15』


2月2日12時15分頃 『エピソード16』


2月2日18時15分頃 『エピソード17』


(通信状況等によっては30分〜1時間程遅れる場合があります。ご了承くださいませ)



大変ご不便をおかけしますが、よろしくお願い致します。


「はぁ〜、本当に〝災厄〟ーー。」


「クロノさん……こればっかりは仕方がありませんねーー。断るのも何ですし、発展した領地を見せる良い機会と捉えてはいかがですか?」


落ち込むクロノに宥めるシェリカ。


「領主様ーー紅茶をお持ちしましたが……お飲みになりますか?」


エリスがティーカップ片手にーークロノに問いかける。


「ああ、もらうよーー」


「わかりましたーーでは、」


ジョロロロロロロロロッーー


エリスが自身の頭よりも高い位置から紅茶をティーカップに綺麗に流し込む。


おかげで心落ち着く匂いが周囲に広がったーー。


「すんすんーーこれって、〝妙煎薬〟かーー?」


「ええ、私が幼少の頃より……愛用していた茶葉です。……まさか、この屋敷にも置いてあるとは驚きでしたがーーさすが領主様。よく匂いだけで判別できましたねーー」


エルフの住む里の紅茶ーー。とても甘美な匂いがして、先程イライラしていたのが嘘のように消えていたーー。


「ところでーー領主様は何をお気になさっていたのですかーー?」


エリスが入れ終えた適温の程よい紅茶をクロノの前に差し出して問いかける。


「…………ああ。ちょっとーー嫌な客がやってくる事になったんだーー」


「嫌な客ーーですか?」


事はーー、ニ週間前に遡る。


《ランスロット家》屋敷ーー。


「ウハハハハハハッーーなかなか良く手入れをしているではないかアルメテウスよーー。十二爵家〝最下位〟のランスロット家にしてはーーだがな。」


「これはこれはーー《ラモラック家》の当主直々にお褒めいただき光栄の極みにございますーー。」


ラモラック家当主ーー《マーティン・サー・ラモラック》。〝十二爵家〟六位の《ラモラック家》当主である。


「うむーー小さいながらも良くやっているではないかーー。それにしても……今日は見かけんなぁ……あの〝痣持ち〟の少年は……。死んだか?」


マーティンは薄ら笑いをしながら、アルメテウスに問いかける。


「……ええ、残念な事にーー。我が妻ーーミーリアが亡くなった事で生きる気力を失い……旅中に盗賊に襲われそのまま。全くもってやらせない気持ちで……今もまだ立ち直れそうにありませんーー」


わかりやすい演技をしながらアルメテウスは溢れ笑いをする。


「それはそれはーー何ともよかったですなーー。《ベディヴィア家》や《トリスタン家》のように滅ぶ事が無くてーー」


マーティンは皮肉笑い混じりに、アルメテウスのいつも食卓で座るーー〝当家の椅子〟に座って足を組む。


「〝厄災〟ーー。あんなものは災いを呼びこの世を滅ぼす悪となりますーー。我が息子が罪なき人々を殺す事にならなくてよかったとーー納得せざるを得ませんなーー」


「ホッホッホーー。なかなか面白い冗談をーー。ところで、これは《クアラウン家》の今年の〝豊穣〟なのですがーー、一杯いかがですかな?」


そう言って、マーティンは持ってきたブドウ酒をアルメテウスの前に差し出す。


「これはなかなかーーぜひ頂きましょうーー」


……………………。


「チッーー〝成金貴族〟が……。」


「何を言ってるんですか父上〜?《ラモラック家》はれっきとした公爵家ーー。我ら《ランスロット家》とも縁が深い貴族家ですよ〜」


そう言ってーーランスロット家・第三子ーー《カイル・シャー・ランスロット》があどけなく笑う。


「そんな事知っておるわ!」


ダンッーーとイライラが最高潮のアルメテウスは、机を叩く。


「どいつもこいつもバカにしおってーー我らの事を〝落ちた貴族〟だとーー!?ふざけるな!!初代聖天大使・シユウ様から頂いた家名に泥を塗る不埒者どもがーー!!」


アルメテウスのこめかみに、わかりやすく亀裂が走る。


「でーー、ウチのシユウ様は結局どうしてんのよーー?」


またもや挑発するように、カイルが父に問いかける。


「フンッーー!あんな〝劣化版〟の厄災の名など口にするなーー腹立たしい!!」


「うわ〜……母様が聞いたら泣きそう〜」


そこにーー、コンコンコンッ、とドアをノックする音が。


「ーー入れ」


「失礼しますーー」


グルーヴィス・ランスロット。《ランスロット家》の第一子だ。


かつてアルメテウスがシユウを処刑しようと企んだのを、《ランスロット家》に利をもたらす存在になるやもと不当な断罪を止めた第一人者でもある。


判断力に優れているが……情に熱いわけでは無い。


かつてシユウを救ったのも言葉の通りで、ただ捨てる駒より飼って生かす駒にする方を選んだだけなのだからーー。


「父上ーー、来年度の予算案が出来ました。……南東に位置する《オスカール領》が手持ち無沙汰で赤字を垂れ流していますが……いかが致しましょうか?」


グルーヴィスは淡々と問いかける。


「知るか!赤字続きのところなどさっさと切ってしまえーー。……いま私は別件で忙しいのだ!」


八つ当たり気味の父に、肩をすくめながらグルーヴィスはーー。


「わかりました。適当に見繕って売却してきますーー。それでは……」


そうーーグルーヴィスが背を向けて立ち去る間際ーー何かふと思い出したように問いかける。


「そういえば父上……そのシユウですがーーランハム卿のご息女ーー《シェリカ・イザレア・セントルイス》をご存知ですかーー?」


グルーヴィスが、振り向きざまに問いかける。


「んーー?ああーー、〝出来損ないの姉〟とは違って幼少より他貴族家が注目しているーー〝天才少女〟か。それがどうしたーー?」


アルメテウスが手で顔を覆い隠し、疲れた様子で息を吐く。


「それがどうやらーー現在シユウが行った辺境の領地で領主補佐をしていると言う事ですがーーそれはご存じで?」


「っーー!!何だとーー!?」


バンッーー、と両手で机を叩き立ち上がる。


「バカな……何故あんな〝痣持ち〟のところにーー。あれほど頭の切れる子が一体何の目的があってーー」


不可解な事で頭の整理が追いつかないアルメテウス。


しかしそれよりも……青ざめた表情で怒りを露わにする存在がもう一人ーー。


「う……嘘だ、あのシェリカちゃんがーーボクのシェリカちゃんがーーあんなゴミクズの所に行っただなんて…………」


わなわなーーと、立ち上がるカイル。


「むーー?いたのかカイル。そうだ……。それに、それだけじゃ無い……どうやらシユウの元には、あの〝剣帝エドワード〟までもが剣術を教えているようですーー」


「な……何だとぉぉぉーー!!!」


勢いよく立ち上がるアルメテウス。


何故あんな厄災持ちの子供一人の所にエドワードとシェリカ。二人の天才がいるのかーー理解が及ばない様子の表情だった。


「それ以外は特に変わった報告はありませんーー。ご用が無ければこれで失礼します。」


「ああーー。わかった。下がれーー」


失礼します。と、静かに退出するグルーヴィス。


「このままではまずい…………。何とかしなければーー」


頭を抱えて怯えた様子の父に、カイルが話しかける。


「父上ーーボクが行ってくるよーー。」


「…………カイル?」


「ボクがーーシユウの魔の手からシェリカちゃんを守る!!」


……………………。


「……それで、カイル様とはどのような方なのですか?」


エリスが首を傾げ問いかける。


「う〜ん……あんまりパッとしない人だったな〜。お兄さんのグルーヴィスさんはちょっとだけ印象に残っているけどーー」


「は……はは。あらそうーー」


(あれでも時期ランスロット家は安泰だと公爵家のお偉方から評判のグルーヴィス兄さんに、〝ちょっとだけ〟って言えるのは……アメリアかシェリカぐらいのものだろうなーー。)


「わたしは〜…………ずっとクロノさん一筋でしたから♪」


「…………はいはい……冗談はこの手紙だけにしてね〜」


……………………。


夕方ーー。


「またね、プルシュスカちゃん。今日は助かったよ!はい、りんごーー」


「アリガトウ、オバチャン。マタネ〜」


最近は領地の人達もプルシュスカを見慣れて来たのか、プルシュスカがよくお手伝いに行っている。


その影響もあって、プルシュスカの人間語を覚える速さも段違いに上がったーー。


「よかったなプルシュスカ。……最近、おばちゃん達から人気じゃないか?」


「えへへ〜!ご主人様がケイコしている間、わたしも領地の人達と仲良くなりたくって!」


最近ではめっきり、プルシュスカの悪口や亜人だからと警戒する人もいないーー。


……当人の頑張りもあるがきっと、陰口を言うと裏で女性陣に尻を叩かれているのだろうーー。


そして、いい事はもう一つ。


「訓練お疲れ!……そろそろ今の段階じゃあ物沙汰不足だろうーー?」


「まぁ……そうですね。一ヶ月もずっと同じ訓練ばかりしてましたからーー」


結局あれから大してメニューは変わらないーー変わったことがあるとすれば寧ろそれはーー


「ずいぶんといい体付きになってきたじゃねぇかーー。今ならもっと上の訓練でも大丈夫そうだなーー」


エドワードはそう言って、クロノのみぞおちに軽くパンチを入れる。


「領主ーー明日からは実戦訓練だ。詳しい内容は明日話すーーそれじゃ、帰るかーー」


今日の夕焼けはーーいつにも増して綺麗に見えたーー。


……………………。


「……………………」


深夜ーー。


陰にまみれてーー何者かがクロノの部屋を訪れる。


「…………スゥーー、スゥーー」


小さく寝息を立てて横たわるクロノの前で、護身用のナイフを取り出した。


「《エンドラ領》領主クロノーー。お命……頂戴する!!」


そしてそれをそのままーークロノの胸元へ挿し込むーー。


「っーー!!」


バッーー!!と、クロノは起き上がる。


目の前には誰もいない。


「何だ……今の?……まさか、《天啓眼》かーー」


《天啓眼》ーー自身に関わる事で重大な未来の一部始終を不規則的に見る事ができる眼だ。《未来眼》とは違い、自身の望むタイミングでの発動はできない。


それでもーー身を守る能力としては十二分の働きを得たーー。


「暗くてよく見えなかったなーー、一体誰がーー?」


クロノはそのまま寝静まるーーその時を警戒しながらーー。


チチチチチチチッーー。


「…………結局一睡もできなかったーー」


あの後ーー特に何が起こる訳でも無かった……。強いてあった事といえば、寝ぼけて入ってきたプルシュスカを追い出して自室に帰らせた事くらいなものだったがーー。


(《天啓眼》でも未来予知が外れる事があるんだなーー)


「おはようございますクロノさんーー。目元、クマができてますけど……大丈夫ですか?」


心配そうに、クロノの顔を覗き込むシェリカ。


「ああーーシェリカ。おはようーー」


目をしょぼしょぼさせながらふらつくクロノの隣で、心配そうに歩いていた。


「おはよう御座いますお坊ちゃまーー。目元がしょぼくれておりますが、あまりよく眠れなかったのですかーー?」


アーモンドもまた、心配そうに首を傾げる。


「ああ。おはようーー。まぁ心配は無いよーー。」


そのままパシィッーーと両手で頬を叩いて意識を覚醒するクロノ。


「エリス。紅茶をくれーー」


「かしこまりましたーー〝領主様〟ーー」


エリスの作った紅茶を啜りながら、クロノは新聞を読み耽る。


「最近ーーご主人様とシェリカちゃんーーずっと難しい字の紙読んでるね〜」


クンクンッ、と新聞の匂いをかぎながら不思議そうにプルシュスカが問いかける。


「フォッフォ。領主とその補佐をする者ですから、お二方とも世の情勢が気になるのでしょうなーープルシュスカも読みたいのですか?」


コクリーー、と小さく頷くプルシュスカ。


「ではーー、プルシュスカはクロノ様が稽古している間ーーわたくしと字の勉強をしましょうかの?」


「えっーーいいの!?」


ブンブンッーーと、尻尾を振るプルシュスカ。


「もちろんーー。最近はエリスのおかげで負担がだいぶ楽になりましたからのうーー」


それを聞いたエリスは目を伏せて、恐縮でございますーーと言い立ち去る。


「やった!アーモンドのおじちゃんありがとうーー」


「おじっーー!?」


初めておじちゃん呼ばわりされたからかーー不意打ちを食らってドキッとするアーモンド。


「あーーごめんなさい……アーモンドさんーー」


しょんぼりとして、しゅんと耳を伏せるプルシュスカ。


きっと、おじちゃん呼ばわりしたのは……最近親しくなった証の現れでもあるのだろうーー。


その様子を見たアーモンドは。


「フォッフォ。構いませんよ。……そうですか……おじちゃんですかーー」


まるで孫ができたように嬉しそうな表情で顎髭を整えるアーモンド。


おじちゃん呼びの許可が出たプルシュスカは嬉しそうにばんざいをした。


……………………。


昼ーー。


「それでーー今日の訓練内容ってーー?」


「まぁ……そうだな。とりあえずこれをーー」


クロノは投げ渡された木刀を受け取る。


「まずは俺に一本入れてみろーー。それが今日の訓練内容だ」


クロノはニヤリーーと笑う。


「へぇ〜……一本でいいんですか?」


対してエドワードもニヤリーーと、笑ったーー。


「舐めるなよーー?おめぇみてぇにケツの青いガキに遅れを取るほどーー俺の剣は軽くねぇぜーー?」


お互い間合いをとって……ジリジリとせめぎ合う。


互いに隙を伺いながらーーその時を待つ。


そして……風がなびいた音を合図にーークロノが最初に仕掛けた。


「〝《睨みつけ》〟!!」


一瞬ーーエドワードが威圧されそうに見えるーーが。


「ハッーーそれがどうした!!」


エドワードには《睨みつけ》は全く効かなかったーーだが、


「〝《隠密》〟!!」


姿を眩まし、クロノがエドワードに近づく。


エドワードの胸元はガラ空きーー。


(よしっーー!いけるーー)


クロノが一太刀入れようとしたーーその瞬間。


「殺気がバレバレだぜ!!」


「なっーー!!」


見えないはずの……気配遮断を使ったクロノの一撃をいとも簡単に見破ったエドワード。


「どうやってか知らねぇがオメェはずいぶんとスキルを持ってやがるな……だが、スキルってのはーー使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよーー。さっきの《隠密》だってそうだーー。一流の暗殺者は人を殺す時殺気なんか出しちゃいないーー。まるで散歩がてら小便でもしてるみてぇにあっさりと人を殺すもんだーー。オメェのその殺気丸出しのやり方じゃあ素人は倒せても〝気配察知〟が優れた奴らには一瞬で見抜かれるーー〝鈍い俺〟ですらモロバレだったんだからなーー」


「くそっーー!マジかーー」


エドワードはいとも簡単そうに、クロノの居場所を特定した。


それだけーー戦場において『殺気の使い方』というのは重要になるのだろうーー。


相手を怯ませるも気づかせないのも殺気一つーーというところだろうか。


「ならこれならどうだーー!!」


クロノは再び《隠密》で気配を消しーー《ポイズン》を使ってエドワードに攻め込む。


「なるほど毒か……それも悪くねぇーーだが!」


スパッーーと、エドワードが一振りするだけーーそれだけで、発生した風圧が毒を周囲に飛ばす。


「なっーー!!」


「この程度じゃあぬるいなーー俺に毒浴びさせてぇならタッチしてゼロ距離で発射するくれぇしねぇとなーー」


またも歯噛みするクロノ。


エドワードにとってはクロノの攻撃一つが全てーー今までの実践で見てきた想定内の攻撃。


それを破るには、エドワードに通用する手を織り込むしか無いーー。


(俺の持ってるスキルで……唯一先生の〝想定外〟を作れるものなんて……そんなの……っ!!)


あるーー、一つだけ。


初めてエドワードと剣を構えたあの日ーーエドワードを欺いた秘策が……一つだけ。


エドワードが勝てる気がしないと言った、敵が使った〝スキル〟がーー、一つだけ。


「もしかしたら…………俺のこの〝眼〟ならーー先生ともやり合えるかもしれないーー」



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