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16. 厄災序列

※諸事情により投稿時間が遅れました事を深くお詫びします。


お知らせ:シーズン2『エピソード14』『エピソード15』『エピソード16』で投稿順序に間違いがありました。ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。再投稿につきましては、以下の時間帯を予定しております。


2月2日8時15分頃 『エピソード15』


2月2日12時15分頃 『エピソード16』


2月2日18時15分頃 『エピソード17』


(通信状況等によっては30分〜1時間程遅れる場合があります。ご了承くださいませ)



大変ご不便をおかけしますが、よろしくお願い致します。


『ハァッーーハァッーー』


『ご主人様ーー怖いよぉ……』


(頼むーー早く通り過ぎ去ってくれーー)


『ハァッーーハァッーー』


(怖い……嫌だ……死にたく無いーー!!)


『ハァッ……ハァッ……ハァッ……ハァーー』


「ハァッーー!!」


目がーー覚める。気づけば全身汗をかいており、ぐったりと気だるさを感じていた。


「ご主人様ーー大丈夫?」


見れば今日もまたーー、プルシュスカがベッドの中に潜り込んでいた。


「ああ……大丈夫だーー」


プルシュスカのもふもふとした耳元を撫でて、癒されると同時に落ち着く。


「悪い夢ーーか。あんなの、いつ以来だろうなーー」


厄災と出会ってから早二ヶ月ーーあの時の恐怖を一度たりとも忘れた事は無い……。


克服するのはーー当分先になりそうだ。


コンコンコンッーーと、ドアがノックされる。


「おはようございます!クロノさん…………また潜り込んでいたのですか?プルシュスカさんーー」


ジト目でプルシュスカをつまみ出すシェリカ。


シェリカが来てから毎日朝の同じ時間帯に起こしに来てくれるのが週間になっていたーー。


「おはようシェリカ……。今日も特に変わりは無いかーー?」


クロノの問いかけに、笑顔で答えるシェリカ。


「はいっ!今月の上半期分の納税も一通り終わりましたよーー。領民のみなさんも前より収入が多くなったみたいで喜んでいましたーー」


シェリカの《鑑定スキル》を用いた領地の発展は順調で、《エンドラ領》は加速度的に活気を得ていた。


特にーー《エンドラ領》の稼ぎ頭は今のところ天然の水らしい。


なんでも……最近《インクリア王国》内では、汚水された水が多く王都でも純度の高い綺麗な天然水が不足しているのだとか……。


《エンドラ領》は辺境に位置するという事もあって、近くには活火山が多い為ーー必然的に天然水がよく取れるという訳だーー。


それを《エンドラ領》では、キラークロコダイルを討伐した事もあり、治水工事が順調で進んでいる事もあって出荷する天然水が金に代わっていくというのだがーー。


それを最速で情報を得て、治水工事を優先する事で利益に繋げたシェリカの功績は計り知れないだろうーー。


……………………。


「ハァッーーハァッーーハァッーー!!」


「よし!休憩だーー」


エドワードの訓練も一ヶ月。なかなかどうしてーー慣れれば素振りも楽なものだと感じるこの頃である。


最初の頃は血豆だらけだったがーー、今では手つきも変わって結構剣がしっくりくると感じる。


「どうしたーー浮かない顔だな?」


草原にぺたりと大の字で風を感じるクロノの顔を、覗き込むエドワード。


クロノは今ーー夢の事を思い出していたーー。


「…………先生は、〝厄災〟と会った事はありますか?」


クロノの問いかけに、エドワードは笑って答える。


「今目の前にいるけどなーー」


「…………茶化さないでくださいーー」


クロノは深呼吸をしてーー、素直に告白する。


「俺ーー、先生と会う少し前に……厄災に会ったんですよーー」


「っーー!!…………そうかーー」


茶化すように笑っていたエドワードの表情から、笑みが消える。


「俺ーー自分がどういう存在なのか……今少しピンと来てなかったんです。……その時までは。あれがーーあんなに恐ろしいものがこの世に存在していたなんて……初めての経験でしたーー」


あの時の厄災ーー隠れてやり過ごすクロノの判断は間違い無く正しかった……。


それが現に、クロノとプルシュスカを生かしているわけなのだからーー。


しかしーー、それが他の厄災でも同様に通じるとは限らない……。


「全身を赤いローブで包んでいて、顔は見えませんでしたーー。巨人族ーーなのかな?大きさは十メートルくらいあって、中に浮いていましたーー。街の広場に突然現れたんですーー」


クロノは当時の覚えている限りの情報をエドワードに話すーーが、しかしーー


「…………悪いな、俺はそこまで厄災に詳しく無い。そんな厄災聞いた事も無いなーー」


「…………そうですか」


未だに消えないあの時の恐怖を、今一度脳裏に浮かばせるクロノ。


それを見たエドワードは、頭をポリポリと掻きながらーー


「俺が知ってる〝厄災序列〟は三人だなーー」


「厄災……序列。ですかーー?」


厄災序列。上位十名の危険視されている厄災を呼ぶ総称である。


がーー、同時にこれは現在大陸内で確認されている〝全ての厄災〟という意味でもあるーークロノや一般的に危険視されていないものを除いてーーだが。


「ああ、厄災序列は時代やその危険度に応じて順序が変わる事もあるがーーこの数百年はほとんど変わらないらしいーー」


「数百年ーーそんな昔から生きている厄災もいるんですねーー」


そんなものがあの時ーークロノの目の前に現れたように出現するのであればたまったものでは無いだろうーー。


「先生が知っているのは誰なんですかーー?」


エドワードは苦い顔をしながら、ため息をついて答える。


「…………俺が知っているのは〝厄災の龍〟と〝厄災の魔女〟ーーそれから、〝厄災の魔人〟だなーー。」


「っーー!!詳しく聞かせてくださいーー」


エドワードは記憶を辿るように、語り出すーー。


「…………厄災序列第二位ーー〝厄災の龍〟。こいつは二千年以上も前から存在すると言われている太古の化け物だ。皮膚は圧倒的な硬さを誇り、魔法も耐性がついていてほとんど通用しないーーおまけに常に炎を纏っているから近接しづらい厄介な奴ときたーー。数十年から数百年に一度目を覚ますがーー奴の歩いた跡は何も残らず灰と化すらしいーー。」


「…………そんなのーー、一体どうやったら?」


エドワードは両手を上げてお手上げのポーズを取る。


「さぁなーーどうしようもねぇから今まで二千年も討伐されずに生きてるんだろうーーまさに、〝生きる災害〟だーー」


その言い伝えが本当なら、〝厄災の龍〟は正真正銘の化け物だ。


「まぁ全ての能力が把握されてる訳じゃねぇからこんなの……奴にとってはほんの一部だろうがなーー」


「ほんとに……化け物ですね。他の二人はーー?」


「厄災序列〝第三位〟ーー〝厄災の魔女〟。こいつはお前も聞いた事があるだろうーー?」


「っーー!!〝厄災の魔女〟…………」


アメリアの師匠を殺した魔女。そしてーー、俺の《未来眼》や《天啓眼》と同じ眼を持っている魔女。


「こいつに関しては正直ーー〝化け物〟としか言いようがねぇなーー。」


「……というと?」


エドワードは、明後日の方向を向きながら、眉を顰めて語り出すーー。


「…………俺も、こいつとは一度会った事がある。」


「っーー!!それで……どうだったんですか?」


厄災の魔女と出会った生き証人。これはクロノもーー気になるところだろう……。


「当時俺はーー被害に遭った街の住人の避難誘導をしてたから実際に戦ったわけじゃねぇーーが、遠目に見てもわかる化け物っぷりだったよーー。奴は、四大属性である炎、水、風、土に加えて、数百万人に一人しか持たないとされる《雷因子》を持ってやがるのかーー雷属性の魔法まで使いやがった……。しかも、魔大陸に住む〝法魔族〟しか使えない《法魔因子》ーーすなわち《氷魔法》まで操っててなーー。おまけにどうやって引っ張り出したのかーー現代では再現不可能の〝古代魔法〟の礎ーー《光魔法》と《闇魔法》まで使いやがるーー。それだけじゃねぇ……奴はさらには《六重詠唱》に《無詠唱》スキルまで持ってやがるから指弾き一つで魔法の大嵐だーー。そんで持って、極め付けはお得意の《未来眼》で全ての動きを先読みされるから、ありとあらゆる攻撃が事前に封殺されやがる。急に街の上空に現れて全て焼け野原に変えて行ったんだが……奴を地上に引き摺り下ろす事すらできなかったみたいだーー。……言ってて何だがーー正直言って、今俺がやり合っても勝てる気がしねぇなーー」


「そんなーーそこまでだなんて……」


(しかも、もし俺の持っている情報と照らし合わせるなら厄災の魔女は《天啓眼》で事前に想定外のケースすら先読みできる上、《魔女の権能》でノーリスクノーリターン。魔力の消費すら大幅に軽減されるーー)


こんな化け物ーー敵うはずが無いーー。


クロノは、今更ながら思い知るーー。


〝厄災の魔女〟がいかにーー伝説とされる化け物かをーー。


「…………あとは、厄災序列〝第九位〟ーー〝厄災の魔人〟だ。」


「それは、一体どんな能力をーー?」


「奴は腕が四本。顔が三つに心臓が七つある怪物だ。奴は〝邪眼〟を持つ厄介な奴でなーー。皮膚は青く、白い刺青のようなものが体のあちこちにあるのが特徴の厄災だーー。今は魔大陸の方面で存在が確認されているらしいなーー他二人と比べれば劣るように感じるが、それでも数百年生き続ける化け物だーー」


「厄災……本当に恐ろしいんですねーー。ところで、〝邪眼〟って?」


「魔法の効力を乗せて発動する……〝魔眼〟と似て非なる存在ーーかな?そいつの目を見るだけで気絶させられたり、石にされるらしいーー」


「厄災……厄災序列。他にも、こんな能力を持った化け物達がーー?」


ああーーと答えたエドワードは、話疲れたように足を組み直した。


「少なくとも、厄災序列ってのは上位に行けばいくほど底が知れねぇーーさっき言った〝厄災の魔女〟もおそらくーーそれで全力じゃねぇだろうからなーー」


「…………。」


(それじゃあーーあの時感じた死の恐怖もきっとーーやつの能力に関係するものだったのかなーー)


クロノは改めて思い知る。


厄災が如何なる存在なのかをーー。


(今の俺じゃあ厄災どころか魔物にだって危ういーー。せめて、あの時の黒い大蛇くらいは一人で倒せる強さが無いとーー!!)


……………………。


数日後ーー。


コンコンコンッーー。


「入ってーー」


「失礼します……」


食卓の間に、皆を集めたクロノ。


今日は自己紹介したい人がいて朝から皆に集まってもらったーー。


「紹介する。この人は今日からこの屋敷でメイドとして働いてもらう〝エリス〟だーー」


銀髪で腰まですらっと伸びた髪が特徴的なーーとても物腰柔らかい少女。肌は雪のように白く透き通っており、水色の瞳はとても透き通っていてーー見ているだけで引き込まれそうになる。


スタイルが良い事もあり、メイド服がよく似合うーー。


「初めましてーー本日よりこの屋敷で働かせていただく〝エリしゅ〟……っ!!」


(噛んだ……)


(噛んだな……)


(噛みましたね……)


(噛んだ……)


(エリしゅちゃん……)


コホンッーーと咳払いをして改めて言い直す。


「…………エリスです。よろしくお願いしますーー」


皆から、拍手が上がる。


「ここ最近ずっと屋敷の事はアーモンドに任せっぱなしだったからなーーシェリカのおかげもあって利益は出てるから、せめて一人くらいはアーモンドの負担を軽減してくれる従者を雇わないとなって思ってーー」


クロノの言葉に、ブワッーーと涙を流すアーモンド。


「おおおお坊ちゃまーーまさかわたくしめの事をそこまで考えてくださっていたとはーーありがとうございます!」


皆ーー半笑いでアーモンドを見つめる。


「よしっ!じゃあーー早速だけどエリス……みんなの朝食を作ってくれないか?」


「……かしこまりましたーー〝領主様〟ーー」


エリスはそう言うや否や、手際良く全員の朝食をパパッと完成させる。


「どうぞーーお召し上がりくださいーー」


テーブルにリザーブされる色鮮やかな料理の数々に、おお〜!と一同驚嘆の声をあげる。


いただきま〜す!と皆一様に喜んで食べる。


「うん!美味しい〜!!」


「それは……よかったですーー」


プルシュスカの言葉に、粛々と笑みをこぼすエリス。


「それにしても……よくこんな良さそうな人が見つかりましたねーー」


「ああ、ちょうど屋敷の使用人の募集をかけてたからさ。いい人が来てくれて本当によかったよーー」


クロノとシェリカは、エリスの方を見て小さく息を漏らす。


「これからよろしくな、エリスーー」


「はい。こちらこそ不肖者ですが……よろしくお願いしますーー」


屋敷に、新しい仲間が加わったーー。

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