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15 鑑定聖女

お知らせ:シーズン2『エピソード14』『エピソード15』『エピソード16』で投稿順序に間違いがありました。ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。再投稿につきましては、以下の時間帯を予定しております。


2月2日8時15分頃 『エピソード15』


2月2日12時15分頃 『エピソード16』


2月2日18時15分頃 『エピソード17』


(通信状況等によっては30分〜1時間程遅れる場合があります。ご了承くださいませ)



大変ご不便をおかけしますが、よろしくお願い致します。


「パートナーってーーこう言う意味だったんですね…………はぁーー」


「んーー?どうしたんだ、シェリカーー」


クロノの問いかけに、首を振るシェリカ。


「…………何でも無いですーー」


そっぽを向いてちょっと拗ねてる様子のシェリカ。


三時間前ーー。


「シェリカ……俺のパートナーになってくれ!!」


「……………………へ?ーーえええええええ!!」


クロノの真っ直ぐな視線に、顔を赤らめるシェリカ。


(つ、ついに……ついにクロノさんから告白!?……パ、パートナーだなんてそんな……からかってーーいやいや!でも……この真剣な表情……嘘、じゃ無いんですよねーークロノさん……)


上目遣いでクロノの顔を見上げるシェリカ。


皆それを見守っていたーー。


「な……なんと、お坊ちゃまーー」


「〝領主〟っーーお前……男をみせたな!」


ほろり、と涙を溢すアーモンドと、ガッツポーズで満面の笑顔のエドワード。


そして…………顔を赤面させて、おずおずとクロノの手を取るシェリカ。


「えっと……あの、はい。そのーー私でよければ……お願い……します」


「よしっ!じゃあ決まりだな!!シェリカ!……お前の《鑑定スキル》頼りにしてるぜ!!」


「はいっ、お任せくださーー《鑑定スキル》?」


目を点にして、思考が一瞬固まるシェリカ。


「ああ!シェリカ……お前すごいぞーー《鑑定スキル》を持ってるなんてな!」


「……………………」


「……いや〜、俺の力じゃ()()()あんまり人の長所とかがわからなくてさ〜」


「……………………」


「……滞在してる間だけでも、シェリカが《鑑定スキル》を使って領民のみんなの能力を引き伸ばしてくれると助かーーって、おい!?シェリカ!?」


ひゅ〜、すとん!と、倒れ込むシェリカを大急ぎで介抱するちょっとした事件が勃発し、朝から大騒ぎのクロノ達だったーー。


……………………。


〝スキル〟は、自身で自覚して初めてその真価を発揮するというーー。


その言葉通り、《鑑定スキル》を自覚したシェリカの伸び具合は絶好調で、先程広場で〝無料鑑定所〟なるものを開いた途端ーー、領民の大行列ができていたーー。


「……あなたはとても騎士としての素質が高いですーー将来は、自警団になるか……王都に行って兵団に所属するといいでしょうーー」


「よっしゃ!……俺、いつかこの領地でみんなを守る隊長になりたかったんだ!!」


「ふふっ!とても地元愛のある良い夢だと思いますーーぜひ、頑張ってくださいーー」


ありがとうございます!と走り去って大声で喜ぶ少年の姿がーー。


「おおっーー!さすが〝鑑定聖女〟様ーー!」


「〝鑑定聖女〟様ーー万歳!!」


シェリカが来てたった二日でーー俺の人気を軽く越える評判だったーー。


(…………てか、〝鑑定聖女〟って何ーー?)


確かに、《鑑定スキル》を持っている人に依頼をすると高くつくとは言うけれど……シェリカの場合まだ六歳なのにもう〝聖女〟呼ばわりかーー。


「しかしあれよね〜……」


「ああ、新しい領主さんは子供でなんて言うか不安だったがーー領主さんが来てから良い事ばかりだーー」


「ウォーウルフの群れもジャイアントスネークも……昨日なんてずっと悩みの種だったキラークロコダイルもなんとかしちゃったしーー」


「ちっちゃいけれど……とっても将来が有望な二人よね〜、プルシュスカちゃんも最初は亜人だと思って怖かったけど……最近はちょっとずつ私たちの言葉で挨拶するようになってて可愛いしーー」


領民のみんなが、俺たちを褒めてくれている。その様子が、ちょっぴりむずがゆい。


…………どうやら、俺の領主としての評判も悪く無いらしいーー。


(なんて言うか……面識の無い人に褒められたのって、初めてな気がするなーー)


元の屋敷じゃ、いつも〝痣持ち〟だとか〝厄災〟って呼ばれ続けてたからーー


でも……それ故に、申し訳なく感じるーー。


ずっと自分が〝厄災の子〟だって、隠しながら領主をしている事にーー。


「ふぅ〜、やっと終わりですね〜」


一仕事終えて、満面の笑みを浮かべるシェリカ。


「クロノさんが喜んでくれたみたいで、鑑定しがいがありました!」


「途中から〝鑑定聖女〟なんて呼ばれてたなーー」


二人してクスクスと笑い合う。


「それじゃあ、帰ろうかーー」


「はいっ!クロノ様ーー」


クロノの背中を見て、シェリカがボソリと呟く。


「…………それにしても、やっぱりクロノ様は格別ですね♪《領主適正》S+《騎士適正》 S《歩兵適正》S《弓兵適正》S《剣士適正》SS《魔法適正》SS……物騒ですけど、戦闘系の適正はもれなく全部S以上ーー剣士と魔法に至ってはSSだなんて……他の方々は良くて一つSかAがあったくらいなのに…………たぶん、今の私じゃあ正確な能力値の判断はできませんね……」


それにーーと呟いて、シェリカがニンマリとする。


「所有スキルが《隠密》、《言語翻訳》、《ポイズン》、《睨み付け》ーー《未来眼》に《天啓眼》……まさか〝厄災の魔女〟と同じ未来を見通す目を持っているなんて…………お姉ちゃんにはなかなか言えそうにありませんねーー」


アメリアに言えばおそらくーーまた騒ぎ出してぎゃいぎゃいと質問攻めをくらうだろう事を、シェリカは瞬時に察知した。


(それに……確か〝スキルブック〟には『生まれた時に決まるジョブスキルは違う系統の入手ができない〟ーーとありましたが、《隠密》は暗殺系ーー《言語翻訳》は諜報系ーーつまり、矛盾している。でも何故でしょう、《鑑定》スキルは持ってませんねーー?)


その高い頭脳力で、《鑑定スキル》で得た情報を元にクロノの能力を整理していくシェリカ。


「ふふっーーこれは……帰ったら色々と聞きたい事がたくさんありますねーー」


それでも何故かーー《盗賊の申し子》については失念をしていたーー。


……………………。


《ランスロット家》屋敷ーー。


コンコンッーー


大きな扉をノックする音がーー静かに響き渡る。


「入れーー」


???「失礼しますーー」


《ランスロット家》の当主ーーアルメテウス・ランスロットの前に現れたーー謎の女性が一人跪く。


「いいか……何としてもあの〝痣持ち〟を殺せーー。十二爵家の我が家からあんな〝厄災〟が生まれただけでも恥なのにーー他の厄災同様に世界を揺るがす脅威になったとすれば《ランスロット家》は立場を失うーー」


アルメテウスはーークロノをまだ暗殺するつもりでいた。


「了解しましたーー。成功すれば……本当に?」


「ああ……一生遊んで暮らせるだけの金はやるーーくれぐれも()()()()()だと言うことはバレるなよーー?」


「わかりましたーー報酬さえもらえればーーそれで。……失礼しますーー」


静かに退出する女性ーーその姿を侮蔑の視線で吐き捨てた。


「フンッーー()()()()()〝エルフ〟風情がーー」


……………………。


エルロード屋敷ーー。


食事を終えて、ひと息つくクロノ。プルシュスカとシェリカがお風呂へと向かっていったーー。


「なんだい?ずいぶんと嬉しそうな顔をしてるなーー」


コーヒーを片手に対面席で座るエドワードを前に、クロノが呟く。


「いや……なんていうか、あの二人を見てるとまるでーー《ランスロット家》で過ごしてた時の事を思い出してなーー」


アメリアとシェリカーーその様子が今の二人の笑顔と重なる。


「フッーーただの懐古だよ」


「おめぇ……何歳だよ?」


エドワードも笑いながら、コーヒーをグビッと飲み込む。


「なぁ先生……ずっと聞きたかった事があるんだけどーー」


「…………何だ?」


クロノは眉を顰めて、ずっと疑問に思っていた事をエドワードに問いかける。


「先生ーーいつも持っている大剣一度も使った事無いですよね……ジャイアントスネークの変異種を倒した時も、大剣だけ俺の前にぶっ刺して使わなかったしーーずっと腰に携えている紺色の剣で戦ってるし……あの大剣何の為に持ってるんですか?」


この数日、エドワードが魔物を倒す時はいつも決まって紺色の剣を使い……大剣は一度も使った事は無い。


「これはまぁ……筋トレ用だな」


「…………はぁ?」


筋トレーー約30キロはあるんじゃ無いかと思うほどの大きな剣を筋トレ代わりってーー変わっているにも程がある。


「あの剣で素振りしたり、背中に付けてるだけで盾代わりにもなるし……まぁ、色々と便利だからよ」


「はぁ〜……呆れたーー」


もっと違うものがあったのでは無いかーーそう思いながら、クロノは紅茶に口をつける。


「おめぇの短剣こそありゃ何だ……?結構な業物だろあれ?」


問いかけるエドワードの前に、ちょうど近くに置いていた短剣を持ってくる。


「ああーーこれですか、これは前にシェリカが護身用でくれたものですーー。まさか希少な〝アースメタル〟を使ってるなんて、最近まで俺も知りませんでしたよーー」


「あ……アースメタルって!?それ俺のこの紺剣と一緒の素材じゃねぇかーーこのくらいの業物だと金貨10枚はするんじゃねぇかーー?」


「…………えっ?ええええええええ!!」


噂には聞いてたけど……そんなに高いのか?アースメタルってーー!


「はぁ〜……あの嬢ちゃんとんでもねぇなーーありゃ女房にするとおっかねぇタイプだから……気をつけろよーー〝領主〟ーー」


とーー、二人して苦笑いしていたそこにーー。


「誰がおっかない女房なのですか?」


ふとーー、すぐ近くにに俺たちの会話をいつから聞いていたのか……シェリカがそこに立っていた。


「じ、嬢ちゃん!?あっーー俺はそろそろ自主練の時間だわ!じゃあな、〝領主〟!!」


「あっーーちょ、先生!?」


走り去ってどこかへ行ってしまったエドワード。


その様子を、唖然とした表情でクロノは見つめていた。


「…………それで、何の話をされていたんですか?」


ぐいっ、とジト目で覗き込むシェリカ。


これは堪えるものがあるーー。


「え〜っと……そのーー」


しどろもどろして答えに渋るクロノに、ハァ、とため息をついてシェリカが折れる。


「…………まぁいいですよ。〝男の雑談〟って事で聞かなかった事にしておきますーー」


いつになく折れるのが早いシェリカを前に、不可思議ながらも安堵するクロノ。


「その代わり、一個だけ聞いてもいいですか?」


「えっーー?うん……何かなーー?」


シェリカは情報を整理する。


整理した結果ーーやはり、クロノの事で一番疑問に思っている事を尋ねる事にしたーー。


「クロノさんのスキルーー拝見させて頂きました。無許可で見てしまって申し訳ありません……。ただ、どうしても気になったので……一つだけ答えてください。クロノさんーー何で私が《鑑定スキル》を持っている事がわかったのですか?」


ギクリッーーと、クロノの中で歪な機械音が鳴る。


これはどのスキルよりももっと聞かれたくない情報ーー〝神気〟に対しての問いかけに近しい。


(あれ、でもだったら何で《鑑定スキル》には俺の神気に関しての事が書かれていなかったんだ?)


神気の事は書かれていないのかーー、あるいはシェリカが知っていてあえて情報を伏せているのかーー、後者だったら何故そんな事を聞くのかーー。


色々考えたが、クロノは結局ーー


「…………ごめん、こればっかりは答えられないーー」


無回答ーー。穏便に済ませる為に、何も答えなかった。


「…………そう、ですかーー嘘をつかないでくれてありがとうございますーー」


ほんの少し寂しそうだが、それでも正直に答えたクロノの真剣な表情に、シェリカは納得する。


「私にクロノさんの全てを知る権利はありませんしーー、クロノさんにとってはわたしはただの居候かもしれませんーー」


伏し目がちにしょんぼりとするシェリカ。


それを見てクロノはしどろもどろする。


「っ!そんな事ーー少なくとも今日シェリカは、間違いなく領主補佐として……いや、それ以上の事をやってのけたよーー。……あとは彼ら次第だけど、きっとこの領地はこれからもっといい方向へ向かって行くハズだからさーー」


クロノの言葉に、シェリカは胸に手を当ててニコリと笑う。


「…………はいーーありがとうございます」


そう言ったシェリカの嘘偽り無い本心に、クロノは一つ提案をした。


「…………なぁ、もしシェリカが嫌じゃなかったらだけど……もう少しだけ、領主補佐をしてくれないかーー?」


「っーー!……クロノさん…………」


クロノからの事実上の勧誘に、シェリカは笑って手を取る。


「……はい、こちらこそよろしくお願いしますーー〝領主様〟ーー」


シェリカの言葉に、ドキリッーーとするクロノ。その柔らかい笑顔に、再び赤面する。


「そ、それじゃあ俺はそろそろお風呂に行ってこようかな!?今晩はきっと寒くなると思うしーー」


「はい♪いってらっしゃいーークロノさん」


慌てて浴場へと駆け込むクロノの背中を笑って見送るシェリカ。


その後ーーひっそりと独りで笑みを浮かべていたーー。


(作戦成功ーーですね。何か言いづらそうな事があるのは、朝の食卓での反応を見ればわかりますし、聞ければ御の字。聞かなくてもきっと、クロノさんならもうしばらくの滞在を提案するか、私が提示したら許可を出してくれたと思いますしーーこんな卑怯なマネをしてしまって……本当にごめんなさいクロノさんーー)


それは心ながらの涙なのかーーほろり、と一雫の涙がシェリカの頬を伝う。


「それでも、貴方の為に一生懸命頑張りますからーー見ていてください!!」


誰もいなくなった食卓で、一人ガッツポーズを決めるシェリカであったーー。


……………………。


カポーンッーー。


「シェリカには悪い事したかな〜……明日は改めて、歓迎パーティーでもしようーー」


反省しながら、湯船に顔をうずめるクロノだったーー。

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