05. 邂逅1
外に出たクロノとプルシュスカ。
久々の外の空気を満喫するプルシュスカだったがーークロノは何やら妙な胸騒ぎを覚えていたーー。
空がーー異様に暗い。
「ねぇねぇ、ご主人様ご主人様っ!久々のおそらですっ!!綺麗〜!!」
「はいはいっ、君は元気がいいな!」
昔からーー天気の悪い日は〝厄災〟の前触れと聞く。
そんなものは迷信ーーと切り捨てたいが、自身が〝厄災〟であるクロノにとっては笑いない冗談であったーー。
「行こうーー。プルシュスカーー」
「んっ?うんっ!」
首輪も手枷も足枷も無いーー。
プルシュスカは久々の日の下で大手を振って歩く事ができる。
たとえそれが曇り空であってもそれが嬉しいのか、ぎゅっとクロノの手を掴んで離さないプルシュスカだったーー。
しばらくーー街中を歩く。
先刻この住民達の精魂逞しい事を褒め称えていたクロノだったがーーその住民達は皆家の中へと戻ったのかーー辺りはもぬけの殻だったーー。
元々の住人の少なさが、少々寂しさを際立たせるーー。
「ずいぶんとまぁーー暗くなったもんだな。」
「ご主人様ーー?どうかしたの?」
服の裾をぎゅっと掴んで、不安を露わにするプルシュスカ。
それを見かねて小さくため息をついたクロノは、プルシュスカの頭に手を置きーー
「……何でも無いよ。行こうーー?」
再びプルシュスカの手を握って歩き出す。
「うんっ!」
……………………。
「っーー!!これはーー」
屋敷にて、主人の帰りを心待ちにしながら料理を作る従者が一人。
しかしーー外の様子を見て、その表情を青ざめさせていくーー。
「これはーーまずい事になりましたね!!」
急いで迎えの馬車に乗り、広場へと向かう。
「たあっ!!」
御者台に乗るや否や広場へと大急ぎで向かうアーモンド。
(嫌な予感が致します。……どうか無事でいてください、お坊ちゃまーー)
吹き荒れる風の中、大急ぎで向かう。
しかしーー
「なっーー!!なんて事を…………」
街へとつながる唯一の道が、土砂崩れによって塞がれていた。
「これでは進めないーー急いで何とかしませんと!!」
(坊ちゃまがーー坊ちゃまが風邪を引いてしまう!!)
そこでしばらく……足止めを食らうアーモンドであったーー。
……………………。
しばらくして、アーモンドと約束している広場へと辿り着く。
辺りは風が吹き荒れており、いつもはまぁまぁ活気のある場所にも関わらず、今日は異様なほど人気が無かったーー。
「なんて言うか……。不気味だなーー」
「ご主人様、どうしたの?」
約束の場所にアーモンドの姿は無いーー。
普段なら何時間早く着こうが、何時間遅くに着こうが待っているあの従者が来ないなどあり得ない事だったーー。
「とりあえず、ここで待っておこうーー。そうすれば必ずーー」
ドクンッーー!!
クロノの中で何かがーー猛烈な忌避感を露わにする。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァッーー!!」
動悸が激しくなり、辺りの視界が歪む。
背筋が凍りつきそうな程の恐怖、死を直感する程の恐怖、ぬぐい難い圧倒的なーー暴力的な力による恐怖。
ドクンッーー!
ドクンッーー!!
ドクンッーー!!!
「どうかしたの、ご主人様?しっかりしてーー」
プルシュスカの声が……遠く感じる。
何が起きているのかはわからないーーわからないが、一つだけ確かな事がある。
(ここからーー逃げないと!!)
バッーー、と急いでプルシュスカの手を掴んで走り出す。
「走ってっ!!」
なるべく遠くへ、なるべく安全な所へ、なるべく早く、なるべく〝奴〟に見つからない場所へ!!
急場凌ぎでしか無いが、広場がギリギリ見渡せる物陰にプルシュスカと並んで座り込むクロノ。
「ハァッーー!ハァッーー!ハァッーー」
狼狽したクロノの姿に、不安な面持ちのプルシュスカ。
「ご、ご主人様ーー大丈夫?」
「ああ……………………プルシュスカ、申し訳ないけどーー少し静かにしていてくれ。いいね……?」
クロノの汗だくの表情を前に、必死で頷くプルシュスカ。
しかし……そんな二人に明確な〝危機感〟が露わになる。
クロノは〝厄災〟としての同調ーーのようなものだろうか?プルシュスカは獣の危機察知本能のようなものだったーー。
「ご、ご主人様っーー何……これ、怖いよーー」
「あーーああ。大丈夫だ。ゆっくり、静かに、深呼吸をしてーー」
プルシュスカの背をさすって、なだめながらクロノ自身も心を落ち着かせる。
恐らく姿を見せたであろう〝それ〟を、怖いもの見たさかクロノの危機感ゆえの行動かはわからないが、ギリギリこちらの居場所を悟られない範囲で覗き見る。
「っーー!!なん、だーーあれ?」
広場の中央をーーゆっくりと謎の〝巨人〟が浮遊している。
高さはおよそ十メートル。赤いフードを被っており、その中身はよく見えない。見た目は魔導士そのものだ。
クロノは瞬時に悟ったーー。
あれがーー〝本物の厄災〟なのだーーと。
恐怖で今にも心臓を吐き出してしまいそうになる。
「ハァッーーハァッーー何だ……あの化け物!!」
口元に手を当てて、必死に気配を押し殺す。
今出てししまえば確実に殺されるーーそれだけは、本能が訴えかけてくる。
(でも……今がチャンスだーー!奴の事がわかれば何か対策がーー)
クロノがスキルチェックを発動しようとしてーーフードの男の顔を覗き見ようとするーーが、しかしーー
「っーー!!」
それは警告か洗礼かーーままならぬ恐怖感がクロノを襲う。
〝奴の中身を覗くなーー死ぬぞ〟ーーと。
それからは、ただひたすらに二人ともこの厄災の時間が過ぎる事を祈るばかりであったーー。
クロノは初めて、現実を思い知ったーー。
何故ーー自分が蔑まれ、罵倒されるのか?
何故ーー〝厄災の子〟と呼ばれる存在が、あんなにも忌避されているのかーーと。
何故ーー人は皆、厄災に対して恨み、憎しむ反面ーー恐れ慄き抵抗しないのかーーと。
これがーー〝厄災〟だ。
まるで目の前を大地震や台風が歩いているような恐怖。
誰も抗うことの出来ない絶対的で、圧倒的で、無慈悲なまでの暴力が、我が物顔で歩いているのだーー。
クロノはーーいかに自分が無力かを悟らされたーー。
《未来眼》、《天啓眼》、《隠密》などさまざまな力を持っている事でーー無意識に自惚れていた。
自分がーー少しは強い存在になったのではないかとーー。
それでも違ったーー。恵まれていただけなのだ。
今まで、出会う相手に恵まれていたーー。
キツネガミだってそうだーー。あれだけの盗賊の群れを指弾き一つで消し飛ばす正真正銘の〝怪物〟だーー。
本来、まともにやり合えばクロノなど一秒も持たないだろうーー。
自分一人だけなら、《隠密》で気配を隠せばやり過ごす事ができるーー。
そうーー、一人だけならーー。
「ご主人様っーー怖いよぉ…………」
耳を折り曲げて、ぎゅっと縮こまるプルシュスカの姿を見て、クロノはハッと冷静さを取り戻す。
(そうだーー俺には特殊効果の《反逆の意思》があるから、まだギリギリ普通の精神状態でいられるーーでも、プルシュスカはーー)
ブルブルと震え、今にも泣き出しそうなのを必死で堪えるプルシュスカの様子を見て、クロノは悟ったーー。
少し前の自分なら、今のプルシュスカと同じように怯えて泣きじゃくっていただろうーーと。
深く深呼吸を一つして、クロノは冷静さを完全に取り戻す。
(そうだーー戦う必要は無い……。このまま静かに過ぎていけば大丈夫だーー)
プルシュスカの頭を抱き寄せて、ゆっくりと撫で下ろす。
「大丈夫ーー大丈夫だから、落ち着いてーー」
ポロ、ポロ、と溢れ出る涙がーープルシュスカがどれだけ近くにいる厄災に対して恐れているかを表していた。
(頼むーー早く過ぎ去ってくれっーー!!)
ゆっくり、ゆっくりとーーその厄災は広場を巡回する。
背中越しでもわかる圧倒的な威圧感。
それを前に冷静さを保てているのは、それだけクロノの持つ《反逆の意思》が優秀かの現れでもあったーー。
一体どれくらいの時間が経っただろうかーー。
やがてふいっーーと、さっきまでの恐怖が嘘だったように〝厄災〟の気配が消え去る。
「っーー!!帰ったーーのか?」
立ち上がって背後を確認するクロノ。
そこには誰もおらず、さっきまでの恐怖感も嘘みたいに消え去っていたーー。
同時に、辺り一面真っ暗闇に覆っていた曇り空からーー夕焼けの光が漏れ出す。
拍子抜けする程急に訪れた開放感に、クロノもペタリーーとその場に座り込んだ。
初めて遭遇した化け物。
初めて遭遇した圧倒的な暴力。
初めて遭遇したーー厄災の恐怖。
「はぁ〜…………」
クロノは今一度、自身の認識を改めると共に、拾い上げた命のありがたさを噛み締めてほっと胸を撫で下ろすのだったーー。
……………………。
途中ーー土砂崩れの情報を聞き、迂回して屋敷へと歩いて戻るクロノとプルシュスカ。
どうやら先の事を引きずっているのか、耳を伏せっている様子のプルシュスカだったーー。
「……申し訳ありません、ご主人様ーー従者は私なのに……怯えて動けませんでしたーー」
反省の意を示しながら、俯いて歩く。
「いいってーーあんなの、怖く無い方が無理な話だよ…………あんな〝化け物〟ーー」
クロノも、自分自身の未熟さに憂うばかりであったーー。
弱いのは嫌だーー強くなりたい。
そう願う程に、あの〝厄災〟との邂逅は衝撃的なものだったのだ。
今はーー天気はそんなに悪く無い。
「それでも……ご主人様はすごいです。あんなのを前にしても、わたしを守ってくださいましたーー。ずっと冷静に、声をかけ続けてくださいました。……まるで、一人じゃ無いよーー。って、言ってくださっているみたいで、とても嬉しかったです!」
背後に映る夕焼けと重なって、プルシュスカの笑顔がより一層際立つ。
その姿に、クロノはちょっとだけドキリとした。
「…………。さぁ、帰ろう。〝俺たちの屋敷〟にーー」
「っーー!はいっ、ご主人様っ!!」
照れ隠すように、早歩きになるクロノ。
その背を同じ歩幅で、プルシュスカも追いかけていったーー。
……………………。
コンッコンッーー
屋敷のドアを軽くノックする。
「おーい、帰ったぞ〜。アーモンド〜?」
その音を聞き、どこからともなく執事が姿を現す。
「おおおおおっ!ご主人様〜!!無事で何よりです!!」
いきなり出てくるなり涙ぐみながら肩をガシリッと掴むアーモンド。
ちょっとだけ、ホントはそんなに歳逝って無いんじゃ無いかとくだらない疑問がクロノの頭をよぎる。
「広場にもおらず、屋敷にもなかなか戻られないので土砂崩れに巻き込まれたのではと心配しておりましたーー!!本当にーー本当にわたくしはーー!!うわああああああ!!」
「えっーー?ええ〜、そんな泣く〜?」
初めて見る、号泣する執事の姿を前にして、若干引き気味のクロノ。
(……確かによく見ると、ヘルメット被ってシャベル持ってるな……。)
「土砂崩れしてて通れないって聞いたからさーーそれでアーモンドなかなか来ないと思ったから……別のルートで歩いて来たんだよーー。遅くなって心配かけてごめん……」
「良いのです…………。お坊ちゃまが無事ならーーそれで良いのです…………ん?そちらの方はーー?」
無事な姿のクロノを見て安堵したのか、落ち着きを取り戻すアーモンド。その視線は、クロノと一緒にやってきた亜人族の少女へと向かったーー。
「あ〜、とーーその〜……なんて言うか…………今日から一緒に住む事になったプルシュスカだ。同じ従者なんだから、仲良くしてやってくれーー」
「そ、そのーープルシュスカです!よろしくお願いします!!」
クロノが初めて連れてきた従者を、感慨深い面持ちで眺めるアーモンド。
「なるほど…………〝架け橋〟とは良い名前ですな……。亜人族ーーですか?」
「ああ、まあな……ってアーモンド……お前、亜人語話せるのか?」
亜人語で〝架け橋〟という意味のプルシュスカ。それを瞬時に理解できるのは、相当話せるという事だろう。
「ええ……ミーリア様から、亜人語は喋る機会も多く、習得するのに良い言葉の一つだと勉強の機会を頂きましたーー。クロノ様こそ、一体どこで亜人語をーー?」
ギクリッーーと、硬直する。
「ま……まぁ〜、勉強の合間に……かな?」
「そうですか!知識欲豊富なのは肝心ですな!!」
(さすがはお坊ちゃまーー。まるで、若かりし頃のミーリア様そっくりですな〜)
(そう言えば俺……なんで亜人語話せるんだっけ……?あとで自分自身のステータス見とこーー)
どこか品定めするようなアーモンドの視線に、キョトンとするプルシュスカ。
「フォッフォッ、歓迎致しましょうプルシュスカ様。ーーいえ、同じ従者ならば呼び捨てるのが礼儀と言うものですな。まぁそれはおいおいとして……どうぞこちらへーー」
「お、お邪魔しますーー」
おずおず、とした態度でクロノにしがみついたままのプルシュスカ。
「どっちかって言うと、ただいまじゃ無いか?」
「あっーー!!」
クロノの言葉に、ハッと息を呑む。
帰る場所。それは、プルシュスカにとってはなおさら、特別なものだったーー。
「えっとーー、それじゃあーーただいまっ!!」
ようやく、本当の意味で新しい一歩を踏み出したプルシュスカ。
「……ああっ、おかえり!ーー」
その笑顔を見るだけで、一時ではあるが……先程の恐怖を忘れられるクロノだったーー。
……………………。
「…………金貨ーー五十枚ですと?」
ガクリッーーと崩れ落ちるアーモンドの姿に、背筋が冷たくなるクロノ。
「あ、あれ〜、…………やっぱ、マズい感じ?」
コクリっーー、と静かに頷くアーモンド。
金貨五十枚。一生遊んで暮らせる額面の急な出費は、この屋敷では手痛いものだったーー。
「父君の手切金の金貨二百枚は、この領地を統治するための手前金として使ってしましました。……問題は残りの母君の遺産の方でしてーー」
どこか言いづらそうに、アーモンドは口篭る。
「ーー?母様の遺産がどうかしたのか?」
「…………それが、クロノ様に支払う分配金だけが何故か不当に少なくされていたのです」
「っーー!!……それってつまり……出し渋ったって事か?」
その情報が確かなら、領地の管理に大きな支障が出る。
「…………ええ、恐らく本来であれば父君の遺産もわざわざ統治する為に使わずとも良い金だったのでは無いか……と。今更ではあるのですがーー事前に見抜く事叶わず申し訳ありませんーー」
「…………そっか」
(しかしどうする……もしプルシュスカの薬代が払えなかったら……その時はーー)
「…………なぁ、一つ聞いていいか?」
神妙な面持ちで、クロノが尋ねる。
「ーーん?何でございますか?」
「不当に少なくされてたって、言ってたけど……具体的にはいくらくらいなんだ?」
クロノの問いに、一つため息を挟んで答える。
「…………金貨五十枚にございます」
「…………そっかーー。つまり、〝全財産〟かーー」
「……おっしゃる通りです。エレミア様のご尽力がなければ、その五十枚もどうなっていた事かーー」
「……なら、姉様に感謝だなーー」
(本当にあの人は、いつも際どいタイミングで助け舟を出してくれる。屋敷を追い出される時も、姉様の尽力がなかったら……今頃どうなっていた事かーー。)
チラッ、とプルシュスカの方へと流し見る。
気を遣わせないようにと、当のプルシュスカは少し離れた所で薬を飲んでいたーー。
「うっ…………うげぇ〜……」
薬を嫌な顔で少しずつ飲んでいるプルシュスカを尻目に、クロノは伏し目がちにーー
「確かに、今更考えてみればとても高額だったね…………ごめん、軽率な判断をしてーー」
深々と、頭を下げるクロノ。
しかし、それをアーモンドは笑って受け流した。
「フォッフォッ、ミーリア様の遺産をクロノ様が使われたーー。それだけの事ですよ。」
「でもそれじゃあお前の給料がーー」
手を差し出して、クロノの発言を静止する。
「わたしはですね……嬉しいのですよクロノ様。あなた様はこれだけ幼いのにとても聡明でいらっしゃる。そんな我が子同然の尊いあなたが日に日に成長するのが本当に楽しみでしてね……。たとえ無賃金であっても、それをあなたの成長を間近で見られる恩恵の対価だと言われればこのアーモンドーー何の苦労もございませんよーー」
その言葉に、クロノは唖然とする。
(それにね……クロノ様。わたしはとても嬉しいのですよ。あなたは何も間違った事はされていないーー。悲劇の運命を辿るはずだった奴隷の少女に手を差し伸べるーー。それをこの国の貴族のどれだけが行えるか……まるで昔のミーリア様を見ているような気分になりますーー)
自身もかつては拾われた身である故に、アーモンド自身プルシュスカに思う所があった。
「…………わかった。それじゃあお前の給料はツケておくから、ちゃんと計算しておいてくれ!」
「フォッフォッ!……それでは、出世払いと言う事で老人の楽しみの一つとしておきましょうーー」
顎髭を撫でながら、満足そうに微笑むアーモンド。
「それでは、夕食の準備をしておきますゆえーープルシュスカと一緒に風呂に入ってお体を綺麗にしてくださいませーー」
「ああ、わかったーー。…………ってーーはああああああっ?」
聞き間違いかと言うように、仰天顔で目を開けるシユウ。
「プルシュスカはずっと檻の中で暮らしていたのでしょうーー。クロノ様がお風呂の入り方をご指導してあげてくださいませーー」
「そうは言っても……お前なぁ…………」
「プルシュスカ、クロノ様と一緒にお風呂へ行って……汚れを落としてきなさいーー」
今日の分の薬を飲み終えたのか、嫌な顔でしかめっ面をしていたプルシュスカ。
アーモンドの発言を聞いて、コロっとその表情が変わる。
「えっ?……えええええっ!!?えっと……その……あの…………わーー、わかり、ましたーー」
ほっぺを真っ赤にして恥ずかしがるプルシュスカ。
「…………おいーープルシュスカ思いっきり嫌がってるぞ?」
ジト目で睨みつけるシユウに、アーモンドは髭を整える。
「フォッフォッ!それはどうですかなーー?」
もじもじしながら、ぎゅっとクロノの裾を掴むプルシュスカ。
「わっ…………わたしは大丈夫ーーだから。それじゃあご主人様…………その……一緒にお風呂行きましょ?」
上目遣いで瞳をうるうるさせながら願い出るプルシュスカに、これどうしたものかと悩みこむシユウ。
確かに……五年も奴隷商を転々としていたなら、まともに風呂の入り方なんて知らないだろうアーモンドの発言にも無理はなかったーー。
「はぁ……わかったよーー」
観念したようについて行くクロノに、どこか嬉しそう表情で答えるプルシュスカ。
全てアーモンドの手のひらで転がされているような気分のクロノは、あまりいい気持ちとは言えなかったーー。
「はぁ…………ほんとっーー〝災厄〟だぁ…………」
その日の晩はいわゆる〝洗いっこ〟をしたーー。




