16. 神様降臨
ーーカルメイア家屋敷ーー
「一体!どういう!事なんだ!!」
「落ち着いてくださいませ、お坊ちゃま!!」
パリィンーーと、花瓶の割れた音がする。
キースは先程から怒りの矛先が見当たらず、あたり構わず物を壊し回っているようだーー。
「なんで!元・A級の冒険者を雇ったにも関わらずあのガキを殺せないんだ!?……僕の顔に泥を塗った……僕をコケにしたあいつをーー何故首を取ってこない!?《ランスロット家》の領主からは〝協力はできない〟を条件に、抹殺する許可は得ているのだぞ!?……なのに何故ーー」
あまりの怒り狂いように当家の者達も参っていた。
キースは外聞こそいいものの、実情は先のアメリアとの口論から察せる程に人格者と呼べるものでは無いーー。
「僕があの〝厄災者〟を……ただ家名を剥奪されて家を追い出されただけで許すと思っているのか!?あのガキを…………シユウを…………ぶち殺してやらないと僕の気が収まらないぞっ!!」
もはやどう収集したものかとーー手をあぐねているキースの執事は、取り敢えず事の顛末だけを話す事とした。
「実は……どうやら物見の報告によればジェノ殿はシユウ殿に打ち取られたようですーー」
「……………………はっ?」
ポカンーーと鳩が豆鉄砲を食らったかのように……キースは口を開ける。
「…………何を言ってるんだ?ジェノは元・A級の冒険者ーーしかも腕利きの盗賊だぞっ!?それを何がどう転んだらあんなチビにやられるんだよっ!?ああっ!?」
「……し、しかしーーそれが事実なのだそうです。差し違えるようにジェノ殿とシユウ殿が共に撃ち倒れたとーー」
「じゃあ万が一の為にジェノへ握らせた増援部隊はどうしたんだよっ!?確か精鋭の殺し屋を十人くらい寄越したハズだろうっーー!?それが何でーー」
執事は額に手を当てて何をどう伝えれば良いかと悩む。
「それがーー実はもう一人〝協力者〟のような者がいたようでしたーー」
「協力者ーーだと?」
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???「おやおや……よく寝ているよ」
意識が混濁した中ーー、甲高い声に耳を苛まれる。
???「どうやら実戦経験は初めてみたいだったねーーこんなに小さいのによく倒せたものだよ〜」
うとうと、としていた意識が徐々に……現実に引き戻される。
???「もしも〜し、もしもし……?聞こえる〜?」
やがてじっくりと、はっきりと、目の前の現実に直視する。
???「やあや〜あ。おはよう〜。とは言っても……もう日暮れだけれどね。……そんなに血を流したまま寝ちゃったら死んじゃうよーー?」
一人の少年……いや、具体的には〝少年らしき男〟というべきか?ーーが、シユウの目の前で顔を覗き込む。
元結で結んだ、ポニーテールのような髪型をした真っ赤な赤い髪。狐のお面を被り、和装装束をしたその青年は下駄を履いている。
全く以って見慣れないその姿にーーシユウは絶句した。
「…………君は、誰なの?」
聞かれて待ってましたと言わんばかりに耳をぴんと立てる。
「ボクかい……?ボクは〝キツネガミ〟。神様だよぉ〜」
えっへん、と偉そうにポーズを取る少年。にわかには信じられないという顔でシユウは反応する。
…………………………………………。
目の前にいるキツネガミという男はーーよくわからないがとても変わっている。
ふわふわ、と浮いているし見た目も変だし……何かーー変だ。
(神さまなんて本当にいるのかーー?というか……これは何だ……?)
キツネガミのすぐ近くに妙な石板のようなものがぷかぷかと浮いている。
そこには《キツネガミ・レベル968・〝破壊と消滅の神〟・他測定不能とだけ書かれていたーー。》
(いや破壊と消滅の神って怖っ!!)
心の中で叫ぶが、色々気になりすぎてて情報処理が追いつかない……。
「……あのさぁ、一つ聞いてもいい?この石板みたいなの、いつも持ち歩いてるのーー?」
そう問いかけると、キツネガミはあどけない表情で答える。……いや、仮面付けているからあどけないかは知らんが。
「石板……?ああ、〝ステータスシールド〟の事ね〜。…………へぇ〜、君にもやっぱり見えているんだ……。へぇ〜」
何やら一人で納得して教えてくれないらしい…………腹が立つ。
一発殴りかかってやろうかーー?そんな邪な考えがよぎったその時だーー。
「どうやら、〝招かれざる〟お客様が来たみたいだね〜」
キツネガミそう言った通り、周囲には十人前後の暴漢らしき男達が足音も無く近づいていた。
(しまったーー!!油断した!!……まさかこんなに近づいていたなんてーー)
ジェノとの戦いで疲弊し切った今ーー戦っても勝機は薄いーー。
しかし……そんな俺の予想は見事に裏切られる形となったーー。
「……ねぇねぇ、君たち?今ボク達大事な話をしてるから帰ってくれないかな〜?今だったら見逃してあげるからさ♪」
肩をすくめてそう言い放つキツネガミ。しかし、男達は皆鼻で笑うだけだったーー。
「逃げる?ハハハハハッ!見逃すのはこっちのほうだろうが!!……目撃者も全員殺せって言われてる……こいつも殺せ〜!!」
そう言った男の合図で、四方八方から男達が切り掛かってくるーー。
さっきのジェノと比べれば大した者達では無いがーーそれでも、勝てない。
そうーー思っていた。
「ハァ…………これだから人間は。……馬鹿だし暑苦しいしめんどくさいし、もういいやーー。バイバイ〜」
パチンッーーと、キツネガミが指を鳴らした途端ーー男達の姿が消える。
「なっーー!?」
まるで煙のように姿形を失った男達の後にはーー静寂だけが残るのだったーー。
「ありえない…………一体、どうやってーー」
キツネガミは自慢気に答える。
「言ったでしょ?……ボクは神様だよぉ〜?だから、あいつら全員消す事くらい簡単だよ〜!…………この世から跡形も無く消すくらい……ねーー」
「っ!!」
まるで子供のように、そう言ったキツネガミ。
まさか、この時の出会いがオレの運命を大きく変えるとは、この時ーー思ってもみなかったーー。
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