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厄災の黒領主 〜追い出され貴族は辺境の地で領主になる〜  作者: 三ケ猫のしっぽ
シーズン1 『厄災の晩餐会編』・『厄災の旅路編』
13/71

13. 覚悟


  日が殆ど沈み込みーー僅かに目視できる程度の視界の中敵の三人組がジリジリと迫ってくるーー。


  (おそらく二人は大した事は無いーー、丸腰の奴はたぶん戦闘タイプじゃ無いんだろうーー。だから、気にしなくていい……。チンピラの方……名前なんて言ってたっけーー?めんどくさいからチンでいいや。チンはサーベル・ソードを持っているけど……そんなに強そうな構え方には見えない。敵の油断してるうちに、《未来眼》で先読みして二人片付けようーー)


  それでももしーーこちらに何らかの力があると見抜かれた場合は、敵も本気で襲いかかってくるだろう。

  《未来眼》の事は出来るだけ悟られたくは無いーー。

  となると、自然に二人が夜目が効かずに油断した……って戦法にしたいのだがーーなかなかうまくは決まらないだろうな〜。


  (戦うは嫌だけど……仕方ない。やらなきゃやられるーーそれだけだ!!)


  シユウはゆっくりと……後方へと後退する。この地形は崖と崖の間に橋がかかっているため、時間がくれば完全に退路を失うーーが、そもそもその前に敵の手に捕まるだろうーー。


  「へっーー、威勢の良い目をしたと思ったが所詮はガキか!一瞬で切り殺してやらぁーー!!」


  チン(仮)が、シユウのはらわた目掛けてサーベル・ソードを振り翳そうとするーーが、しかしーー


  「う、うわあああ〜あ〜あ〜」


  シユウはわざと転び、すんでの所で剣戟を回避する。さらにーー


  「とっ、とっーーうわあ!」


  ドテッーーと転んだチンは、同じく尻もちをついたシユウの目の前に跪く形となる。

  

  但しーー、一つ大きな違いがそこにはあったーー。


  あえて転んだかーー誘導されて転ばされたかの差であるーー。


  「あの小僧…………今ーー」


  訝しげに、シユウを睨む頭ーージェノ。


  (よしっーー狙い通りだーー!!今ここでこいつの背中を突き刺せば残るは二人!!)


  「ちょっーー、待っーー!!」


  ナイフを握りしめ、トドメを刺すーー!しかし、シユウにも一つ誤算があったーー。


  「っーー!!……あれ、手が、震えて……、動けないーー」


  人を殺す。それはシユウが子どもだからではない……。

  人間ならそれが普通なのだーー。どれだけ目の前に助かる道があろうと、それを選び取る勇気を持つかはまた別の話であるーー。


  (あの小僧ーーせっかくのチャンスでおじけづいたかーー。ちったぁ()()()()()()()()ガキだと思ったがーー所詮はボンボン。ぬるま湯に浸かってた奴に何かできるはずもねぇーー。だが……それよりもーー)


  間一髪ーー間に合ったチン(仮)は一目散に、ジェノの元へと後退した。


  「チッーーすまねぇ頭っ!……日が沈んでて油断しちまったーー」


  しかしーー、


  スパァンッーー!!


  「なっーー!!」


  シユウは何が起こったのかーー、理解できないという顔で目の前の光景を見ていた。


  ぶしゅっーー、とチン(仮)ーーもといバルの背中を一刀両断するジェノ。


  「か…………頭……?なんーーで……」


  バルはその場にドサッ、と倒れ伏す。


  「バルゥゥゥゥゥッ!!ーー何やってんだお頭?」


  呆気ないほど一瞬で、その命を刈り取られた同僚を介抱するデカロ。


  「…………戦場で油断し、敵に背後を許すような無様を晒す部下は俺にはいらねぇーーオメェも嫌なら下がって縮こまってやがれ…………」


  蛇の人睨みで完全に萎縮したデカロは、おずおずとシユウと対極の方へと後退りする。


  (……殺、したーー!!……あいつーー仲間なのにーー何で殺したんだ?……意味がわからないーー何を考えているんだあいつはーー)


  目の前の光景に理解が追いつかない。不遇な扱いだったとはいえ、先刻まで貴族として生きてきたシユウには今見ている現実はあまりにも世界が違い過ぎる……。


  しかし、それでも現実という刃は容赦なくシユウに向かう。


  「テメェーー何か隠してやがるな?……バカな部下供は騙せても、オレの目は誤魔化せねぇぞーー」


  明らかに先程とは違う気迫で押し迫るジェノ。一方のシユウは、完全に呼吸を乱していた。


  (一瞬でバレたーー!!……さっきの一瞬、斬りかかってきたあいつをかわす為にギリギリまで待ってから避けた事ーー、こんな視界の悪い中なのに、あいつはそれでも見抜いたんだーー!!たったそれだけで…………たったそれだけで、何かしらの意図がある動きだって察知したんだーー!!これが……今まで何十人と殺してきた奴の力ーー。……これが、生きてきた経験……戦闘経験の差なんだ……。)


  絶望的な状況だろうーー。逃げ出したいだろうーー。泣き出したいだろうーー。


  それでもシユウは諦めなかったーー。


  (いやーー、それでもまだ負けが決まった訳じゃないーー。奴はまだオレに未来が見える事には気づいていないはずだーー!!それがバレない限り、僅かだけど勝機は残っている!!)


  シユウは再びナイフを握りしめ、呼吸(いき)を整えるーー。


  「ふぅーっ!ふぅーっ!ふぅーっ!ふぅーっ!ーー」


  (ここは屋敷じゃ無いーー騎士団の巡回も無いような辺境の地だ!!……助けは来ないーーオレがやるしか無い!!やらなければやられるだけだっ!!)


  ゴクリッーーと息を呑む。一手間違えば即アウト。負ければあの世行きの殺し合いなのだ……。


  それを自覚したシユウの目にはーー迷いは無かった……。


  「ほうーー先程の狼狽ようとは打って変わったーー良い目だ……。こういう仕事をしているとたまにこんな事があるから面白いーー!死を覚悟して〝本気の目〟となった者は実に()()()()があるからなぁ……!!」


  シユウはぐっと歯を食いしばる。子どもの力じゃ一瞬の隙を突いたところで、致命傷にはならないからだーー。

  決定打となりうる一撃を喰らわせるためにーーシユウは集中する。


  (さぁ……来いっーー!!ジェノ…………今度はお前がーーここで殺される番だっーー!!)


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