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呪われ少年魔法師、呪いを解除して無双する〜パーティを追放されたら、貴族の令嬢や王女と仲良くなりました〜  作者: シャイ
第三章

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第五十話 真っ直ぐな眼差し

「お忙しいところにお邪魔してしまってすみません、玲良(れいら)様」


 玲良たちが応接室に入ると、空也(くうや)が立ち上がって礼をした。


「いえ。大丈夫ですよ」


 空也に座るように促し、玲良もその前に腰を下ろす。真司(しんじ)(りん)もそれぞれ空いているところに腰掛けた。

 護衛である杏奈(あんな)は、いつでも動けるように立ったままだ。


「久しぶりですね、空也君」

「数日ぶりね」

「お久しぶりです、狭間(はざま)さん、速水(はやみ)さん」


 真司と凛が軽く手を上げ、空也が会釈をする。

 ついで、空也と杏奈が目礼を交わした。


 全員の挨拶が済んだところで、玲良は切り出した。


「それで空也さん。私にご用件がおありだとか」

「一つ、気になることがありまして」

「気になること?」

「はい。最近は精神干渉魔法絡みの出来事が多いので、色々考えてみたのですが……異界の一件の直前、茂とほのかは精神干渉を受けていたんですよね?」

「ええ、真司が見つけました」


 玲良が視線を向ければ、真司は黙って頷いた。


「茂に関しては異界の雰囲気でわかりましたが、ほのかは会話までしていたのに、彼女が精神干渉魔法をかけられていることに僕は気づけませんでした」


 【解析(かいせき)】すらしていないのに、茂にかけられた精神干渉魔法に気づけるほうがおかしいんです——、


 玲良は心の中で、悔しそうな表情を浮かべる空也にツッコんだ。


 しかし、そんな心の余裕は、空也の次の言葉で消え去った。


「そうなると、一つの可能性が出てくるんです。誰も気づいていなかっただけで、茂とほのかは、もしくは【流星(メテオロ)】というパーティ全体が、以前から精神干渉魔法を受けていた、という可能性です」

「っ——!」


 玲良だけでなく、その場にいる全員が息を呑んだ。空也の推察は、それだけ衝撃的なものだった。


 一番早く立ち直ったのは真司だった。


「そ、それはさすがに考えすぎではないですか?」

「かもしれません。ですが、思い返してみれば、特に茂とほのかは出会ったころからだいぶ性格が変わっているんです」


 性格が変わっただけでは根拠としては弱いんじゃないか、と玲良は感じたが、それは空也もわかっていたようだ。


「ただ、時は人を変えますから、性格が変わったくらいでは弱い」

「何か、決定的なものがあるということですか?」

「はい」


 空也は自信ありげに頷いた。


「ほのかに関しては、記憶の操作が行われている可能性が高いんです」

「と、いうと?」

「彼女は、僕を追放するほど恨んだ理由を、ひどいフラれ方をしたせいだと言っていたんですよね? 何でも、僕に馬鹿にされたんだとか」

「ええ……まさかっ」


 玲良はすぐに一つの可能性に思い至った。元々、ほのかのその供述には違和感があったのだ。


「そうです」


 空也は頷いた。


「僕は絶対に彼女が言うような断り方はしていません。受け取り方は人それぞれですが、少なくとも馬鹿にしているとほのかが感じるようなことは、僕は絶対に口にしていない」


 断言する空也の眼差(まなざ)しは、(まつりごと)に関わる中では絶対に見かけることのない、強くて真っ直ぐなものだった。


 ——格好良いな。


 ただ漠然(ばくぜん)と、玲良はそう思った。


「だから玲良様。ほのかとの面会、僕も同席させてくださいませんか?」


 そんな眼差しでの空也の頼み事を断るという選択肢は、玲良の中には存在しなかった。


「わかりました」

「玲良様っ?」


 驚愕の入り混じった声を上げたのは凛だ。


「お言葉ですが、それは少々危険なのでは? 今はただでさえ侑斗(ゆうと)の一件で緊張感が増していますし……双方にとってリスキーです」

「わかっています。しかし、今は少しでも情報が欲しい。それに、空也さんの推察が正しいなら、今後の対応も大きく異なってくる。今ここでリスクを犯す価値はあります」

「なるほど……出過ぎたことを申しました」

「良いのですよ」


 玲良は口元を緩めた。


「忠告をくれる臣下がいるというのは、とても心強いですから」

「……はい」


 玲良の言葉は決して慰めではなく、本心だった。

 それが伝わったのか、凛も口元を緩めて頷いた。


「さて」


 玲良は立ち上がった。


「行きましょうか」




◇ ◇ ◇




(えっ、どういう状況? 何っ、このメンバー……)


 ほのかの脳内は疑問符が飛び交っていた。

 何度か取り調べを受けた狭間真司や、そこに同席することもあった速水凛はわかる。


 だが、なぜ王女である夜桜(よざくら)玲良(れいら)とその護衛である夕闇(ゆうやみ)杏奈(あんな)、そして()がいるのか——。


「空也……」

「ほのか。久しぶり」

「……うん」


 自身の正面に座る空也の顔を、ほのかは見ることができなかった。


「ほのか? 大丈夫?」


 空也の声には心配の色が混じっている。

 その態度は、【流星】にいたころと何も変わっていない。


「空也はさ……」

「ん?」

「空也はさ、どうして私に普通に接してくれるの? 私は……私は空也を追い出して、さらには異界にまで巻き込んだんだよ?」


 ほのかはなぜ空也が罵倒(ばとう)してこないのか、疑問でならなかった。


 ほのかは空也をパーティから追放した。追放する際にはとても汚い、自分でも信じられないような言葉を浴びせた。

 そして挙げ句の果てには、茂とともに、空也や愛理(あいり)を異界へと連れ込んだのだ。


 ほのかを(ののし)る権利を、空也は十分に持っているはずだ。


 思い返せば、異界の一件で顔を合わせたときも、少し冷たいくらいで、何も恨み節は浴びせてこなかった。

 それが、ほのかには苦しかった。


 しかし、罪悪感に(さいな)まれているほのかとは対照的に、空也の返事は軽いものだった。


「それは今後返してくれれば良いよ」

「っ……!」


 ほのかは目を見開いた。

 空也の言葉は優しく、それでいてとても残酷なものだった。


「でも、私が空也にできることなんて……何もないよ」


 そのほのかの言葉は謙遜ではなかった。

 空也は頭は元々良いし、今では魔法の技能も完全にほのかより上だ。


 自分が彼に何かできるとしたら、それはもう夜の相手くらいかもしれない——。


 ほのかは、これまでの自分の高志(たかし)との高頻度のセックスを(かえり)みて、自虐の笑みを浮かべた。


 しかし、空也はまたしても何気ない調子で言った。


「ほのかにはできて僕にはできないことなんて、世の中にはたくさんあるよ。例えば、部屋の片付けとか」

「……えっ?」


 ほのかは一瞬、自分の耳を疑った。


「実は僕、片付けめっちゃ苦手でさ。前に誰かの家に集まろうってなったとき、拒否したでしょ? あれ、部屋散らかってたからなんだ」

「ああ……」


 そういえばそんなこともあった。

 どうやら「部屋の片付け」というのは聞き間違いではなかったらしい。


「でも、そんなこと、私が空也にしたことに比べたら軽すぎるよ……」

「そんなことないよ。たった二週間ほど滞在しただけの部屋を、三人で丸一日片付けなきゃいけないくらい散らかしたんだから」

「空也さん、それは決して自慢ではありませんよ」


 まるで武勇伝かのように自分の片付けのできなさを語る空也に、玲良がツッコむ。


「あれっ」

「あれっ、じゃありません」


 気さくに話す空也と玲良に、ほのかは驚愕(きょうがく)の念を抱いた。主に王女とここまで親しくなれる空也に対して、だ。

 こんな人に私ができることなんで……、


「ほのかさん」

「……えっ?」


(今の声、王女?)


 自己嫌悪に陥っていたほのかは、王女が自分の名前を呼んでいるという事実を認識できなかった。


「ほのかさん?」

「えっ? あっ、は、はいっ!」


 もう一度名前を呼ばれ、それが現実であることを認識したほのかは、慌てて姿勢を正した。


「どんな事情があったとしても、確かにほのかさんは空也さんに酷い仕打ちをしました」

「はい……わかっています」

「でも、それはあくまで過去の話です」


 俯きかけていたほのかは、勢いよく顔を上げた。

 玲良の顔には優しげな笑みが浮かんでいた。


「今ほのかさんがすべきなのは、後悔して立ち止まることでも自分を卑下することでもなく、自分のしてしまったことに対する(つぐな)いなのではないですか?」

「っ——!」


 その玲良の言葉は、ほのかの心の琴線(きんせん)に触れた。

 そして同時に理解する。自分はただ逃げていただけなのだ、と。


「別に部屋の片付けだって立派な償いの一つになり得ますしね」

「……はい。あの、ありがとうございます」


 お茶目な表情を浮かべる玲良に対して、ほのかは深く頭を下げた。


「それじゃあ、僕の部屋の片付けの目処(めど)も立ったところで」


 空也がそう切り出すと、部屋の空気が変わった。

 ここからが本題だ、というのはほのかにも理解できた。


 しかし、次に空也がしてきた質問は、ほのかの予想のはるか斜め上をいくものだった。


「ほのか」

「な、何?」

「僕に告白してくれたときのこと、覚えてる?」

「……えっ?」


 揶揄(からか)っているのか、とほのかは思った。

 しかし、空也の目を見れば、彼が真剣であることはすぐにわかった。


 その眼差しは、とても真っ直ぐなものだった。


(こんな目をした空也、以前にも……いっ⁉︎」


 記憶を辿ろうとして、ほのかは頭痛に襲われた。


「ほのか? 大丈夫?」

「……うん。大丈夫」


 記憶の検索をやめると、頭痛はすぐに治った。


「ごめん。デリカシーのない質問だっていうのはわかっているけど、必要なことなんだ」

「わかってる。空也は無意味にこんな質問しないから」


 ほのかは深呼吸をした。


「お話しします。あの日のことを」

 最後まで読んでいただきありがとうございます!


「面白いな!」

「続きが気になるな!」


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― 新着の感想 ―
[一言] ほのかがまともすぎるので、違和感が。 (操られ込みで)高志の性奴隷的で、都合のいい女としか思って無かったので別人かと。できることは夜の相手くらいだとか、罪悪感を持ったり、冷静に自分を客観視出…
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