第47話〜農家〜
そこを通り抜けると、いつのまにか農家の屋根の上に突っ立っていた。
「@ア!?ドコダヨコココ!!オォン!」
いつまでも広がっていく牧草地に視界を遮るものは一切ない。
いや、ある。気が狂いそうになるほど続いてゆく青い空の下、複数の牛が草を食み、寝転び、自由を謳歌している。
「うまそうなニクダ!!オオhオオオオ殺しテエ!!」
すぐさま屋根から飛び降り、舌なめずりしながら駆け寄る。捌いた肉の瑞々しさを脳裏に浮かべると鳥肌がたつ。しかし、それらに近づいていくにつれ、食欲の代わりに違和感だけが募っていった。そもそも牛は茶色だったり黒だったりするわけではなく、全て緑色一色に染まっていた。その肌からは全く生気が感じられない。さらに近づいていくと目に映っていたのはもはや牛ではなく、ローポリの3Dモデルのようなものだった。
「食エネッジャネエェカ!!!ドウスンdヨ!oi!、!」
前脚が片方無かったり、関節がとんでもない方向に曲がっているもの、他にも寝転んでいるものもいたが、実際は足をピンと伸ばしたままひっくり返って
「ワー」(どの牛も周期的にそう鳴く)
と鳴くだけだ。
さて食えないものはしょうがない、農家まで引き返そう、そう思い直し後ろを振り返るとすぐそこにあったはずの農家が胡麻ほどの大きさになっていた。小さくなったのではない、距離がいつのまにか離れていたのだ。
「ヴーゥッフ!、走ルシカネエ!、」
がむしゃらに走り出すが、なかなか距離は縮まりそうもない。さらに言えば牛の数が走り出してから急激に増えて進路を邪魔してくるかのように感じる。ただひたすらひたすら走るが農家の大きさは戻らない。走っていた体はぎゅうぎゅうと押しつぶされ走ることはままならないので、牛の波をかき分けるようにして進んでいく。さあ、農家の前までようやく辿り着きそうだ、これほどの労力をかけてここまできたのだ。中に入ったら茶の一杯ぐらい飲みたいものだ。最後の牛を蹴り飛ばしながらドアノブに手をかける。
「アア、やっと終わった。」
そこを通り抜けると、いつのまにか農家の屋根の上に突っ立っていた。
ヴーゥッフ




