第44話〜リノリウム〜
タケノコガールとリノリウムの床を歩いていた。
彼は、一体どこに向かっているのだろう? その疑問が浮かんだ瞬間、タケノコガールはくるりとこちらに振り向いた。
その顔には、満面の笑みが咲いていた。
そして彼は、こう言った。
―――あなたも一緒に来る?僕は思わずうなずいてしまった。すると、僕とタケノコガールの姿は煙のように消え失せていた。
それから、どうなったのかはよく覚えていない。ただ一つ言えることは、僕と彼は二人で、この暗い世界をさまよっていたということだ。
いつの間にか僕は一人になっていた。
彼はどこに行ってしまったのだろうか。そう思いながら歩いていると、目の前に何かが落ちていることに気づいた。
それは、一冊の古びたノートだった。
拾い上げて表紙を見てみると、そこにはこんなことが書かれていた。
〈これはおらの日記だにゃ〉 僕はこのノートに、自分のことを書こうと思った。
何から書いていこうか……そうだ、まずは自分の名前を書くことにしよう。
――僕の名前は、サイバー高校生という。
僕はゆっくりと鉛筆を走らせる。
〈タケノコガール〉 書き終えて、少し不安になった。もしこれがデスノートだったら。そんなことを考えてしまうのだ。でも、もう後戻りはできない。僕は続きを書き始めた。
〈僕は今、一人でこの場所にいる。ここはどこか分からないけど、とにかく暗くて寒い場所なんだ〉 そこで僕は手を止めて考えた。果たしてこの文章でいいのだろうか。本当に読んでもらえるのだろうか。だけど、書くしかない。僕はまたペンを動かした。
〈ここには誰もいないし何もない。音さえも聞こえなくて、まるで世界が終わったみたいだ。だから、僕はここに日記を書いていくことにするよ。僕の物語を〉 そこまで書いた時、突然視界が開けた。
そこは、今まで通ってきた道とは雰囲気の異なる通路だった。壁や天井の色が明るくなっている。それだけではない。通路の奥の方からは微かに光が差し込んでいるようだった。
僕は光に向かって歩き出した。一歩進むごとに足音が反響する。僕は無心になって歩いた。やがて通路を抜けて、明るい空間に出た。眩しさに目がくらむ。それでも目を細めて前を見ると、そこに広がっていたのは広大な草原だった。風が吹くたびに草花が揺れて波打つ。
そしてその向こう側には、大きな建物が建っていた。遠くから見ただけではそれが何なのか分からなかったけれど、近づいてよく見るとすぐに分かった。それは病院だった。真っ白な外壁をした、とても綺麗な建物だ。
僕は吸い寄せられるようにして建物の中に入った。受付を通り過ぎ、エレベーターに乗って三階まで上がる。
廊下に出ると、すぐ先に一人の女の子がいた。彼女は窓の外を見つめていた。その姿を見た途端、心臓が大きく跳ね上がった。彼女の髪の色は、鮮やかなピンク色をしていたからだ。
僕は彼女に話しかけようとした。しかし、できなかった。彼女があまりにも美しかったから。
ピンク髪の少女は、まるで絵画の中から抜け出して来たかのように美しかった。そのせいで、僕はつい見惚れてしまっていたのだ。
その時、ふいに少女がこちらを振り向いた。僕は慌てて視線を外す。すると、彼女はくすっと笑った。そしてこちらへ歩いて来たかと思うと、そっと耳元に口を寄せてきた。
甘い香りが鼻腔をつく。頭がぼうっとしてきて、うまく思考することができない。
彼女はささやくような声で言った。
「ざーこ」
その後気がついた時にはベッドの上に寝かされていた。
しかも拘束されて。
部屋全体を見渡すと至る所に拷問器具。
一体サイバー高校生は無事なのか…
拾ったノートはデスノートだったのか…
タケノコガールはどこにいったのか…
「ざーこ」




