脱出と最後の会話
二人が三人のもとに着くと、三人の背後で開いた転送陣がパチパチと音を立てながら少しずつ塞がっているのが見えた。レンフィーはそれを見た途端杖を振って修復を止めると、杖から魔力を放出してそれを維持する。
「随分久しぶりに結界を壊したもんじゃから時間制限あったのをすっかり失念しておったわ!お主らこれを使え!持っておればここに戻ることはないはずじゃ!」
「恩にきります。」
クロードとウィルに何かを投げ渡し、それを見ると扉で使ったコインの真新しい物であった。クロードはそれを握ると、レンフィーにお礼を言い三人のもとに駆け寄る。
「クロード様!一体何をなさっていたのですか!?待っている間に変な音が聞こえて皆不安になったんですよ!?」
「申し訳ない!さっきの話が本当かどうか確かめてたんだ。それよりもう時間だ、離れないように全員手をつなぐよ!」
「は、はい!」「お、おう!」
全員が手を握るのをレンフィーが確認すると、魔力の放出を止めて杖を地面に叩く。すると四人は吸い込まれていき姿が消えてすぐに結界が閉じた。行く末を見届けたレンフィーは空間から椅子を取り出し、ため息をつきながら座る。
(ふう疲れたわ…こうして人と話すのは数百年ぶりだったの。けど、まさかエルフ以外の者がここに来れるとは思わんかったわ…)
眠気で重い瞼を閉じ、久しぶりの夢を見る。それは共に魔王と戦ったルークとの最後の会話だった。
「お前が不老不死になったと最初聞いた時は平和になったせいで頭がおかしくなったんかと思ったよw」
「見た通り胸を貫かれて生きてるエルフがどこにおるアホ!妾も望んでこうなったのではないぞ!それとルーク笑いすぎじゃ!」
「悪い悪いw驚きより笑いが勝ったよwまさか親友を助ける為に万能薬を作ってる最中に魔族に襲われて相討ちになった時に薬ごと貫かれてこうなったとはねw」
笑いが止まらないルークに胸に剣を突き刺した状態で話すレンフィーは怒りをぶつけるがそれでも止まらないでいた。少しして笑いが止まると神妙な顔でルークが話し始める。
「ふう…さっきは笑いすぎた。レンフィー、もう会えないんだろ?」
いつの間にか剣を抜いたレンフィーは深刻な顔で話しだす。
「そうじゃ。妾はこのあと禁忌を犯したとして同胞達から無限牢獄に封印される。もう会えなくなる前にお主に会いたかった。」
「…それは残念だ。実際違うけど世界を救った英雄と二度と会えなくなるとはね。…そうだ!ならレンフィー、これを預かってくれないか?」
そう言うとルークは胸元から懐中時計を取り出し、レンフィーに渡す。
「これは何じゃ?」
「魔道具:「過去を巡る時計」。昔遺跡探索した時に見つけたものだよ。ある条件を満たせば使えるようになるけどその条件は分からなかった…僕の直感だけど、また君の元に僕と同じ魔法が使える人が来るかもしれない。もし未来でその人に出会ったら渡してほしい。」
「…お主の直感は当たりやすいからの。いつになるか分からんがその時が来たら渡してやろう。その時までこれを保存しとかないとの。」
懐中時計を受け取るとそれを杖で叩き、光の粒となって消えていった。それを見たルークが感心する。
「やっぱエルフって凄いな!時空間魔法においては右に出る種族はいないよ!」
「エルフにとっては基礎の基礎じゃ!茶化すのならもうよい!最後の別れと思って話しておるのに白けたわ。」
「ごめんって。」
ルークはレンフィーの機嫌を直すとレンフィーの手を引いて丘の上に駆け上り頂上で腰掛ける。
「お主このあとどうするんじゃ?平和になった今やることないじゃろ?」
「僕は行く先々の集落を巡りながら冒険することにしたよ。あの状況じゃ無かったら探検して世界の謎を解き明かしていこうと思ってたから再興ついでに本格的に冒険するつもりだ。その為にギルドなるものも創ったから何とかなるだろ」
「昔から爪が甘いからのお主は。破滅だけはしないでおくれ。」
「安心しろ、破滅したりしないさ。僕の未来はそうなるって分かってるから。」
そう笑い飛ばすルークの顔を思い浮かべ、レンフィーは夢見こごちに笑みを浮かべる。
(随分懐かしい記憶だったの…無意識にあやつと同じ魔法を使えたクロードって子に重ねてたかも知れんの。)
懐かしい記憶と共にレンフィーは深い眠りについた。




