救助と矛盾
(これならもう大丈夫そうだ。)
男はゆっくりと起き上がるとはっきりとした声で泣きながらクロードの手を握り、お礼を言った。
「ありがとう…ありがとう…もうダメかと思った…」
「元気になって良かった。」
「もう大丈夫ですよ!」
暫くして男は落ち着くと、クロードに問いかける。
「さっきはありがとな。悪いけど出口に案内してくれないか?」
「?。私達も出口を探しているところだけど?」
「え?」
四人の間に一瞬沈黙が生まれ、それぞれが困惑した顔になる。
「瓶詰め見つけて助けに来たんじゃないのか?」
「確かに依頼で瓶の話がありましたが…」
「やっぱりそうじゃん。ここの出口から来たんじゃないの?」
「いや、私達も出口を探していると言いましたよね?まずその前にその瓶詰めの話が全然掴めないんだけども…」
「すぐそこにある磯浜に瓶が転がってたから、持ってた紙で助けの文書いて海に流したんだけどな。」
会話が全く噛み合わないでいると、男のある言葉がクロードの脳裏をよぎる。
(そういえば依頼者も海で瓶を拾ったと言っていたな…けど、どう考えても紙の劣化具合からして失踪した日と合わないが念の為聞いてみるか。)
ロットがクロードに話した内容と一致する部分がありもしやと推測したが、それは無いと願いつつ男に問いかける。
「今から三つ質問します。できれば拒否しないで答えていただきたい。」
「おういいよ、何だ?」
「まず一つ目、もしかしてギルドに出しても問題ないように書いたのではありませんか?」
「これです。」
ユーリが腰に付けた鞄からロットから渡された手紙を取り出し、広げて見せる。男は顔に手を当てうーんと唸ると手紙をじっくりと見ながら答える。
「そうだよ。見たとこ随分古い紙だけど何度か依頼書書いたことがあったから、確かそんな感じで書いた気はするけどよ。」
「では次二つ目、ここに来た理由は何ですか?」
「ここは普段大渦で入れない海域なんだけども、いつの間にか凪になってて入れるようになってたから。興味本位で洞窟入ったらさっきの状態になった。」
(興味本位でここまで行動に起こす人がいるのか…これどこかで聞いた気が…)
クロードは喉元で何かが引っかかるような違和感を感じるが、考えているうちにある疑問が生まれた。
(てか待てよ?まず第一この十重二十重ある罠をどうやってくぐり抜けて来た?回復薬で治癒したとはいえさっき見た時には傷なんて無くてただ衰弱してただけだった。ここまで来るのに傷のひとつも付いていないのはおかしい…)
傷だらけになりながらも回復しながら進んできた三人とは違い、衰弱していたとはいえ救助時に傷一つも無かった男にその疑問を問いかける。
「私達もここに来るまで罠があちこちにあって一苦労しましたが、貴方は一つでも踏んだりとかはしませんでした?」
「いや、罠が動く仕掛けが全部見えてたからそんまま避けて来ただけだけど?」
(いや、普通見えるものなのか?)
男の回答に呆れながらも最後の質問を投げかける。
「最後に三つ目、貴方の名前を伺っても?(予想が外れていればいいが…)」
「そういやまだ名乗ってなかったな。俺の名はウィルだ、よろしく!」
「「え?」」(やっぱりそうだと思った…)
その男、もといウィルが名乗るとクロードは困った顔を浮かべ、ユーリとリーンが目を点にして固まってしまった。




