未知の魔法と
(仮に十七年前に死んでいたとなればあの時街を去ったルインソさんは別の誰かとなるのが一番考えられるけれど、その死体がギルドカードに刻まれる記録と一致する以上本人と間違えようがないってことになるんだが……あ〜くっそ情報が足りない!)
現状今ある情報をどれだけ当てはめようとしてもピースが全く噛み合わず少し混乱するクロードは、ユーリが見ている資料に目をつけると指示を出す。
「ユーリ、死体が発見された状況はそこに載っているかい?」
「えーとちょっと待ってください。あ、ありました!記録によると現場近くの街に拠点を作っていた二人組の冒険者がギルドの依頼をこなしていた所、寄りかかるようにもつれかけている白骨死体があるのを偶然発見したそうです。」
ページを捲ると現場にある死体が白骨死体と書いているが…
「白骨死体か…多分だけどその後の処理をしたんだろう?」
「先生の言うその後とは何なのかは分かりませんが、とりあえず二人は剣で骨に傷をつけた後に教会に渡してギルドに報告したそうです。」
「骨は風化していたか?」
「いえ、骨は傷一つも無く一部肉が綺麗な状態で残っていたとの記載がありますので風化する程の時間は経っていないかと。」
(骨の傷無しか…一部とはいえ肉が残っていたとなると例外無しにすぐにでも魔物化するはずだが…)
死体は適切な処置を施さなければどの生物も穢れを取り込み一週間程で不死になる。しかし、骨を傷を付けるだけで穢れを取り込めなくなり、簡単に無力化出来る。それを知っているクロードは不可解な現象に首を傾げるが、リーンがある物を持ってきたことによりクロードの中でピースが少しずつ揃っていった。
「クロード様、これを…」
「これは…検死体調査書か、どれどれ?」
検死調査した結果が細々と書かれており、時間をかけて調査したことが伺える。綺麗に仕舞われた資料を見ていくとあるものがクロードの目に止まった。
(ん?未知の魔法の正体と効果?なんだこれ?)
羊皮紙一枚に未知の魔法に関する情報がびっしりと書かれていて、読み解くと死の穢れを祓う魔法と記載がある。現存する魔法は光魔法だけであり、穢れそのものである不死でしか効かない。しかし、この魔法は対象に付与することで周囲の穢れを広範囲に浄化することにより魔物化防ぐとともに亡者を寄せ付けなくするという絶大な効果を発揮することができる。扱えるものがおらず遺跡に文字でしか残されていない失われた秘術とされていたが、その証拠に骨の至る所に魔力で模様を刻み込んだ痕が残っていたと書かれている。
(なるほどね…流石は失われた秘術なだけはある。それならこの不可解な事象に説明がつく。となるとこの日誌の後から発見されるまでの空白期間に何が起こったのか…何故十七年前の死体と三、四年前に失踪した人が同一人物だったかなんだけども…やっぱり洞窟の奥深くに答えがある気がする。)
ある程度中でピースがはまり洞窟に繋がりがあると当たりをつけたクロードに、一緒に見ていたリーンがハッとした顔で問いかける。
「クロード様、もしかしたらですがエルフ族が関係しているのではないでしょうか?」
「可能性としてはあるが一般的に絶滅した種族だからどうだろう?今ここにある術式は今はもう文献にしか残っていない魔法「遺失した秘術」の一つで、こういった類は発動方法が不明な上取得難易度が魔法史史上最高難易度を誇るから扱えるのは歴史を見ても数人しかいないんだよ。だから人族の手による犯行の可能性は低い。まあ、エルフは例外だけどね。さて、資料は全部目を通したから返して準備しようか。」
「分かりました!」「かしこまりました。」
手に持っていた見聞書を机の上に置くとクロードは二人にそう言い、資料を纏めて執務室に向かうとギルト長がもっさりとした顔で出迎え、資料を渡すと眉をひそめてクロードを見る。
「もういいのか?まだ二時間しか経っていないぞ?」
「必要となる情報は集まりましたので返却します。ありがとうございます。」
「ならいいが…また何かあったら来るといい。」
「心遣い感謝します。」
三人は執務室を離れ、ギルトの外に出る。日もすっかり昇りギルト前の通りは朝来た時と比べ人通りが多く、活発になっている。
「先生、取り敢えず一通りの準備をしてきます。」
「そうだね、もう数日で時間になるから出来るだけ多くの準備をしようか。取り敢えずロープと杭は多分必要になるから買ってきて。」
「はい!それじゃあリーンさん一緒に行きましょう!」
「かしこまりました。クロード様、行ってきます。」
「気をつけてな!」
(さてと、こっちも必要なものを揃えないとな。先ずは道具屋から行くか。)
それぞれ必要となりそうな物をリストにして買いに向かった後、三人は村に向かう馬車に乗り街を去った。




