腕がしなる少女 推理編(1)
「なんのご冗談を。護るべき奥様をどうして私ごときが狙わないとけないのですか?狙う動機もありませんし何のメリットもありませんよ?」
「クロード様、いくら何でもお爺様を犯人にするのはやめてください!!」
擁護するリーンベルにクロードは問いかける。
「まぁ、擁護する気持ちは分かりますが実際はそうなんですから。」
「証拠はあるんでしょうね!!さすがの私でも信じられませんよ!そうよねユリア?」
ユリアは俯き小さな声で話す。
「おばあちゃん、話を聞こう…」
そう言うと戸惑いを隠せないアーネットはただ口を噤むだけであった。
周りが静かになった所でクロードは話し始める。
「さて、再三説明していますがご存知の通りユリアさんを襲ったのはそこで伸びている人です。けれどもおかしいんですよ…一部伏せさせていただきますがユリアさんを襲った日、計画を実行した後ユリアさんの部屋にまだ居た犯人が誰かと話していたんです。それが貴方なんですよ」
「ハッハッハ、この私が犯罪者とどんな話をしたというのでしょうか?聞かせてくれますかな?」
笑いながらクロードを見つめるマシューは何か異質な気配を放っていた。クロードは警戒しながらも話を続ける。
「「今回の目的は達成された。また次も依頼するからそれまで隠れて待っててくれ」と彼女から聞きました。この言葉が気になり、色々と調べさせてもらいましたよ?そうしたらあなたの部屋にこんなものが。」
クロードは内ポケットから紙を取り出しアーネットに渡す。それを見たアーネットは驚きケリーを呼びその紙を見せる。ケリーも同様に驚きを隠せない様子だ。
「こ、これ…父さんとユリアのお父さんが共同計画を立てた資料みたいじゃないか!!ユリアが襲われたあと父さん様子がおかしかったけどこういう事だったのか…」
「息子がある鍵が無いと開かないようにしてあるって言っていたけど、それを知っているのは息子だけよ?あの子が秘密を漏らすとは思わないし…?」
「それはマシューさんの右目を見ていただければ答えは出ますよ。」
そう言うと全員でマシューの右目を見る。一見何も無いように見えるが良く見るとうっすらと瞳孔の形が三角と丸が重なったような形になっていた。クロードとユリア以外は驚きを通り越して固まってしまった。
「まぁ本来の計画では鍵を奪ってからユリアさんを殺害し、二大商会を破綻させ、混乱した市場を独占するつもりみたいでしたがドレッゼの過去の暴走を聞いて計画を変えたみたいですがね。」
ここまで言うとマシューは笑いだし、今までとは違う目を向けてくる。
「アハハ、恐れ入ったよ!少ない情報でここにたどり着くなんてね…」
「お爺様なんてことを…気でも狂いましたか!!」
口元を抑え涙を浮かべて近づくリーンベルにマシューは突き放す。よろけるリーンベルをユーリが支える。
「リーン、私は狂ってはおらんよ。クロード様、どうやって私に行き着いたか教えてくれませんか?冥土の土産に持ってまいりますので。」
首元に巻かれたリボンを解き、隠された魔法式が首を囲むように展開される。クロードはそれが自爆魔法だとすぐにわかったがマシューの意図を察し、どうするかと思考をめぐらせる。一つ思い浮かんだが危険を伴うので話しながらタイミングを見計らう。
「まぁ最初は情報が少なすぎて分かりませんでしたがある事でマシューさんが繋がっていることを突き止められたのですよ。」
それは時を遡ることクロードがユリアが虚ろから戻ってきた時、ユリアは涙を浮かべた。
「嘘でしょ…まさか!いや、そんな訳ないよ。マシューが関わっていたなんて…」
「辛いでしょうがこれが真実です。しかし腑に落ちないことがありますね…」
「一体何ですか?」
人差し指を挙げて話し始める。
「確実に言えることはマシューさんが襲った犯人に依頼をしたことですね。それは調べれば誰がやったのかは分かりますが、その後に言った言葉ですよ。」
ユリアは思い出しながら話し出すように呟いた。
「えっと、今回の目的は達成された。また次も…」
「そう、それですよ!また次もが引っかかる。これはまだ計画が終わっていない口ぶりですね。私の予想ですがあと数日したらまた誰が襲われてしまう可能性があります。無論私達も含まれますが」
「クロードさん…話の途中までは分かるけど狙われる対象広くないですか?対処するとしても人手が足りませんよ?」
ユリアの指摘はもっともだ。対象人数が多く護衛をつけるとしてもかなりの人数がいる。その点は…
「私とユーリを除くと三人に絞られますので問題ありません。まぁ他に情報が集まればさらに絞れますが現段階では情報が少なすぎる。」
丁度のタイミングてユーリが戻ってきた。
「ユーリ!!結果はどうだ?」
「先生、リーンベルさんとアーネットさんに聞いたらあることが分かりました。黄緑色の石の欠片と深緑の紙は増幅石とマベル用紙(記録用紙)では無いかとのことでした。あと一つに関しては分からないとの事です。」
それを聞くとクロードはある事を思いつく。
「ありがとう、間髪入れずに悪いがマシューさんが怪しい行動をとるかもしれないから見てくれないか?私はその間にやる事があるから行ってくる。」
「え?あ、はい。」
ユーリは嫌な顔をしながらもクロードのお願いを聞いた。後でユーリにご馳走を振る舞おうと誓ったクロードであった。
「さて、向こうがどう動くか楽しみですね…」
不気味なほど満面の笑みを浮かべ、考え始めるクロードを見てユリアは一途の不安が頭をよぎった。




