腕がしなる少女 後編(3)
クロード達が見つめていた駅方面から少し離れた空き家の中に蠢く影がある。髪の毛はボサボサで目の焦点が合っていない。さっきまでケリーに憑依していたドレッゼである。
「ッ!!痛たたた何とか戻ってこれたねぇ〜…この禁忌魔法便利なんだけどあの二人にはバレたみたいだし次はどうやって拉致ろうかなぁ〜…」
この世界では工学技術が発展し初めているがそれより昔は魔法技術が爆発的に発展した時期があった。現在使われている魔法は、始まりの魔法とされる古代の原初魔法を起源とし、新たな発見や発明などにより多岐にわたる魔法が生み出され、衰退を繰り返して現在の形になった。しかそしのその過程で危険な魔法までも生み出してしまうこともあった。その危険な魔法を分類したのが禁忌魔法である。
「そういえばまだ試してなかったやつがあったなぁ〜。それを使えば面白くなりそうだねぇ〜。」
クロード達の復讐を企てるドレッゼに異変が現れた。黒い炎がドレッゼの身体を貫いたからだ。
「熱っつ!!この黒い炎、探偵が使っていたや…痛い〜〜!!は、早く火を消さないと…」
咄嗟に水魔法で炎を消そうとするが消える気配はなくさらに燃え広がった。
「くっっっそーーーーーーーーーーーーーーーーー!!がぁ!!」
黒い炎が全身を覆い、雄叫びを上げながら倒れ込む。その身を燃え尽くすかのように燃え上がる炎は暫くして消えた。そこにあるのは無傷で倒れ込むドレッゼの姿であった。
数時間後、外は朝を迎え人通りが段々と混んできた頃クロードとユーリを始めリーンベル、マシュー、アーネット、ユリアにケリーがやってきた。
「犯人が潜伏しているのはここのようですね…ユーリ行くよ!!」
「はい。いち、に、さん!!」
「どうだユーリ、不振な点はないか?」
「こっちは無いみたいです。」
「分かった。」
クロードとユーリが先に入り、辺りを警戒する。ドレッゼが泡を吹いて倒れている以外変わった点はなくすぐに警戒を解き外にいる皆に伝える。
「この辺り特に不振な点はありませんので入っても大丈夫です。」
部屋に入るなりケリーが愚痴をこぼす。
「なんで俺が操られなきゃいけなかったんだよ!!ユリアの見舞いに行ってる最中に急に視界が真っ暗になって気がついたらリーンに袋叩きにされるし、アーネットさんに侮蔑な目を向けられたし最悪だ!!」
クロードに言われた通りに自然に話すケリーだがクロード自身ここまで上手とは思ってもいなかった。けれどここまで自然体でいられるのだから驚いた。
「あの時反射的に殴ったのは謝ります、すみませんでした。」
「ケリー君ごめんね。」
「リーン、奥様、泡を吹いているこの方をどうにかしないといけないのではないでしょうか?ユリアお嬢様を襲おうとした犯人を騎士団に突き出さないといけませんよ?」
(そろそろいいかな…っとまだみたいだな…)
タイミングを見計らい様子を見ているとユリアが疑問点を突いてきた。
「マシューちょっと待って!何故クロードさんが私達を連れてくるのかしら?だって騎士団に突き出すのならわざわざ全員集める必要は無いじゃないの?」
「お嬢様の言う通りですね…おじい様や私ならともかく奥様やお嬢様、ケリー様も連れてくる意図が掴めないのですが…クロード様、理由を教えてくれませんか?」
リーンベル、ユリアの指摘にクロードは泡を吹くドレッゼに構わずこれまで集めた情報から結果を話す。
「確かに皆さんが言う通り一連の事件の実行犯はここで泡を吹いている呪術師ですが他に真犯人がいる事が分かったので真の解決とは言えません。何故ならそれぞれの事件を計画した犯人はこの中にいます!!」
「「「「え……」」」」
クロードの一言で場の空気が凍りついた。




