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腕がしなる少女 後編(2)

クロードが深呼吸すると周りから炎が吹き出してきた。そして右目が黒い炎に覆われる。クロードは杖に仕込んでいた剣を抜き、黒い炎を(まと)わせる。剣を振るうとそばにいた魔物たちが勢いよく燃えだし次々と周りの魔物たちに燃え広がった。魔物の断末魔(だんまつま)が長く響き渡るがその時間が短く感じてしまうほどに二人は昂っていた。クロードが炎を消すと周りには焼け焦げた魔物の死骸が積み重なっていた。けれど屋敷自体には燃えてはいなかった。それを見たドレッゼはある二つ名を頭をよぎった。

「へぇー驚いた…まさかここで本物に会えるとはねぇ〜。煉獄の魔導師さんよ!!」

「私はただの探偵です。知っているのは嬉しいですが過去のことはあまり話してほしくはありませんね…」

「え?え?は?」

二人の会話についていけないユーリはただ首をかしげるしかなかった。

「しかし私としてもこれ以上罪を重ねないで欲しいのですがね。出来ないのであれば止めるしかありませんので。」

「止められるもんなら止めてみなー!下手に動けばこいつがとうなるか知らないよぅ〜!!ヒヒッ!!」

ケリーの身体を器用に動かし、隠していたナイフを首元に当てるドレッゼ。クロードは舌打ちしながらもどう対処するか思考をめぐらせる。

「あんたをどんな実験に使おうかなぁ〜?ヒヒッ!!想像するだけでも興奮するなぁ〜!!アヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」

クロードはドレッゼが気味の悪い高笑いしている間に攻撃を仕掛けようとしたが、違和感を感じ身体を見ると指先から黒い煙が吹き出していた。

(そろそろ時間切れか…早く決着をつけないとまずい… )

時間だけが過ぎていく。何も仕掛けてこないクロードに痺れを切らしたドレッゼが動きだす。

「来ないんならこっちからいくよぅ〜!行け、傀儡師(マリオネット)眷属(けんぞく)達よ!」

「グッ……」

新たに生み出された魔物に囲まれたクロード、再び剣を振るうと魔力が少し回復したドレッゼが水系統初等魔法「アイスボール」を発現し投げてきた。クロードは難なく避けるが全身に激しい痛みが走り、倒れそうになるがこらえた。

「そろそろ決着をつけるよ〜!!これで終わりだ!!ッ何!!」

「私を見つけられなかったのがあなたの敗因ですよドレッゼ。リーンベルさんやってください!!」

「お嬢様の仇!!ハァー!!」

「グハァ…」

いつの間にかリーンベルを呼び、背後にまわったユーリがケリーの体を押え付ける。その隙にリーンベルが誰が見ても見事な連続正拳突きを背中の急所ギリギリの所に当てた。ユーリはすんでのところで手を離し自由となったケリーの身体は窓を突き破りそのまま中庭に落下した。

「クッソもうこの身体は持たないみたいだねぇ…もうおいとましますか!じゃあ…」

ケリーの精神を切り離して逃げようとしたがそれは叶わなかった。ドレッゼの言葉が終わる前にクロードとユーリ2階から飛び降り、勝負を仕掛けたからだ。

「逃がしはしない…これ以上被害者を増やさない為にも!!ハァァァァ!!「漆黒の剣技 (いち)(わざ):ナーチャル・ベイン」」

「あなたの凶行を止めてみせます!!秘技「リモートカウ」」

クロードは炎の力を剣に集中させ、黒く変色させた。その剣にユーリが手をのせてオリジナル魔法を発動すると幾何学模様が現れ、何かを狙うような形に魔法が展開した。剣がケリーに吸い込まれるかのように突き進んでいく。しかしドレッゼの気配は無くなった。

「逃げられたか…」

「先生!!」

ユーリは親指を立ててあることを知らせた。それを見たクロードは少し笑みをこぼす。

「ふっ、どうやら勝負ありのようだね。」

その言葉にリーンベルが突っかかる。

「逃げられたのに何でそんなに余裕なんですか!!どこに勝負かついたのですか!!クロードさん追う手段はあるはずですよ!!」

「いや、潜伏場所は既に特定しましたしドレッゼは今頃気絶していますよ」

「え…」

そう言うとクロードは纏っている黒い炎を霧散させ、駅方面を眺めた。ユーリも同じ方向を眺め、困惑するリーンベルであった。




「いっつ…あれ?なんでユリアの家にいるん…」

「まだ居ましたかこっの人でなし!!」

「ぎゃああああああああ!!」

「なんの悲鳴だ?って何をやっているんだリーンベルさん!!」

「犯人はもうここにはいませんからケリーさんを殴らないで下さい!!」

朝になりケリーが目覚め起き上がろうとした時にリーンベルがケリーを袋叩きにした。ケリーの悲鳴が聞こえて振り返ったクロード達が止めるまで殴り続けて止めた時には顔をパンパンに腫らしてかろうじて原型を留めていた。

「先程から言ってますがケリーさんに憑依した犯人は気絶していますし目の前にいるのはケリーさん本人ですよ。」

「にわかに信じられないのですが…憑依なんて聞いたことありませんよ?」

クロードが説明しても納得出来る訳もなく突っかかる。

「それは後ほど説明します。アーネットさんとマシューさん、それとユリアさんも呼んでくれませんか?犯人の場所がわかったので私と一緒についてきて欲しいと」

「…はぁ、どうなっても知りませんよ?」

呆れ顔で呼びに行くリーンベル、端から見ていたケリーが愚痴をこぼす。

「元冒険者なら止めるだけじゃなくて応急手当もしてくれないかな…何気に放置されるし説明もないしどうなってんだよ…」

「まあ先生は応急手当はできませんしできたとしても生きていれば面倒くさがってやりませんから。」

「誰君!!」

いつの間にか隣にいるユーリに驚くケリー。まだケリーに名乗っていなかったので自己紹介をする。

「そういえばまだ名乗っていませんでしたね。私は目の前にいる探偵クロードの助手をやってるユーリです。」

「僕はケリー、ケリー・クラウンだよ。っでどうしてこうなったが説明してくれるかい?」

ユーリは今まであったことを話した。時折ケリーは神妙(しんみょう)な顔をしたがあるところであわて始める。

「……それで私は先生に頼まれましてリーンベルさんにこれが何かと聞いてきたのですがさっぱり分からないみたいでして。」

「その花と紙と石…ちょっと見せてもらうよ!!」

紙に描かれていた絵を見たケリーはユーリから奪いそれをまじまじと見る。

「やっぱりこれ……でも……うーん…」

「あの…どうかしましたか?」

「あ、これなんだけど僕の記憶が正しければおまじないで使われる材料だよ。」

その言葉が聞こえたクロードはケリーの肩を(つか)む。いきなり掴まれたケリーはクロードにおされて冷や汗を流す。

「何のおまじないか分かりますか?」

「えーと何だっけ?思い出した!!効果を変化するやつだよ!それに副効果として精神不安定な状態になる呪いもあるよ!」

それを聞いたクロードは体に衝撃が走ったかのような感覚を覚えた。

(そうか、そういう事だったか…これで全てのピースは揃った。犯人はあの人…いや、二人いた!そのうち1人は呼んだ人の中にいる)

笑みを浮かべたクロードに引きつった顔をするケリー。ユーリはクロード様子を察知して体勢を整える。

「ユーリ!!地元の騎士団治安所に行ってカリンとヴァレンに連絡をとってくれ!!後()()を借りてくるのと向こうの騎士団員何人かある場所で待ってくれるように言ってくれ!!」

「分かりました先生!!急いできます。」

ユーリを見送るクロードにケリーが声をかける。

「あれってなんですか?」

「それは秘密です。ケリーさん、あなたにも少し手伝ってもらいたいことがありますので協力してくれませんか?真犯人を炙り出すのに人手がいりますので」

「……ええ、やりますよ。ユリアを酷い目にあわせたやつを許さない……」

ケリーの覚悟を聞いたクロードはケリーに自然な感じでいるようにと言った。タイミングよくリーンベルが皆を連れてきた。

「クロードさん言われた通りに連れてきましたよ。」

「リーンから聞いたけどこれから私を襲おうとした犯人の所に行くのよね……行っても平気なの?」

心配するユリアにマシューが突っかかる。

「クロード様、奥様とお嬢様に何かありましたら許しませんよ!」

「マシュー心配しなくてもいいのよ!彼何か策があるみたいだし任せましょう。」

「…分かりました奥様。」

クロードのそばにいたケリーがユリアに駆け寄る。

「ユリア!!」

「ケリー君!!」

「その腕…君のお母さんから聞いたけど本当だったんだね…」

「ごめんね言えなくて…え?」

涙を流すユリアをケリーは抱きしめた。怒りでマシューが飛び出そうとしてアーネットとリーンベルに制止られた。

「君の腕が元に戻らなくても僕が何とかしてみせる!!だからいつものように明るい君でいてくれないか?」

「ケリー君ごめんね…ごめんね…」

頃合を見てクロードはその場にいる全員に声をかける。

「さて、そろそろ行きますか、そこでこれまでの流れと真相を話します。」

クロードのあとをユリア達はついて行く。誰もいなくなった時、一つの人影が現れた。

「ふぅーん…コートと帽子を被っているのがクロードか…ひとまず依頼主に報告しなければ」

そしてその人影は周りの景色に溶け込むように姿を消した。

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