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放課後の職員寮。
「へぇ…。で、助けるって言っちゃったわけか、お前は」
職員寮の音楽室で、祐樹さんに相談してみた。
相談といってもどうしようもないことなんだけどね。
「………まぁ」
少しかっこつけてしまったかなぁと思う部分もあるから、微妙な返事になる。
それを見越したのか、祐樹さんは面白そうに目を細めた。
「助けるってお前、どうやって助けるんだ?」
「どうやってでしょうねぇ…」
窓から空を見上げる。あぁ…空は青くて平和だなぁ…。
「…決まってないんだな?」
「…………………はい」
だって泣かれちゃったんだもん! 泣いてる人に対して「ごめん、私無理」とか言えないじゃん!
っていうのは、言い訳になる。
私が自分の意思で決めたことなんだから。
「…祐樹さん」
だいたい答えはわかってるけど、一応聞いてみる。
「<言霊>でどうにかできないですかねぇ」
祐樹さんの答えは、ものすごく短い言葉だった。
「無理」
それでいて、予想通りの答えだった。
呆れたように祐樹さんが口を開く。
「お前なぁ…<言霊>だって万能じゃねぇんだぞ? あの人を助ける〜なんて願っただけで助けられるわけじゃねぇの」
やっぱりダメか、とうつむく私に、祐樹さんは真面目な顔で言った。
「<言霊>は、あくまでも願いを叶える助けでしかない。少しだけ『運命の道』を願いが叶うようにずらすだけだ。いくら喋ったことが現実になるといっても、限りがあるんだよ」
…難しい話だ。
わかりやすく説明してくれたんだと思うけど、やっぱり難しい。
「えっと…じゃぁ、琴音さんが足をくじいたのは?」
「それは、いじめる側として本気じゃなかったんだろ。琴音の『運命の道』をツキがずらしたことで、くじいたんじゃねぇの?」
なるほど。<言霊>の能力を使われる側の気持ちも関係しているというわけか。
「…なんか、<言霊>ってめんどくさい能力ですね…」
本気でそう思った。
最初知ったときは「便利…だけど、ある意味不便?」なんて、簡単に考えてた気がするけど。結構難しい話で、ものすごくめんどくさかった。
そういう私の本心を聞いて、祐樹さんがふっと笑った。
「確かにな。だから分けるんじゃねぇの?」
…疑問系で返されても困る。
まぁ、相談といった相談ができずに、私は翌日を迎えた。
* * * * * * * * * *
「あ、おはよう皐月さん」
学校に行くと、今までのことが何もなかったかのように知らないクラスメイトから挨拶された。
あっちも私のことを知らないからか、それともいじめということがあるからか、ぎこちない笑み。
挨拶してくれた人には悪いけど、驚きすぎてすぐに返すことができなかった。
「……………どういうこと?」
教室も、静まりかえったわけでなく。
私に気がついた人達は普通に挨拶していく。
夢でも見ているのかと思った。
「皐月さん!」
琴音さんが駆け寄ってくるまでは。
「…えーっと、琴音さん。これはどういうことかな?」
一応笑顔を浮かべてみたものの、さっき挨拶してくれた人のようにぎこちなくなっていただろう。
予想していたのか琴音さんはその笑顔にツッコミもせず、私を廊下に連れ出した。
「ちょっと、来て」
「…え…」
まだ学校来たばっかりなのに。
半ば引きずられるような感じで、廊下に出される。
まだ春だから、少し肌寒いかな…。そんなのんきなことを考えつつ。
「…ね、皐月さん」
周りに人がいないことを確認して、琴音さんがそっと話し始めた。
すごく重要で、聞かれたくない話なんだろう。
「香が、どこにもいないの…!」
目の前には琴音さんの悲痛な顔がある。
私は間抜けな声を漏らした。
「…は?」
予想外の展開。




