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「…私がいじめようと思った理由…?」

「そう」

「なんでそんなこと話さなきゃいけないの?」

「…なんでって…知りたいから」

叫んで泣き出した琴音さんを何とかなだめ、もう一度聞き出そうと試みる。

でも琴音さんは、なかなか話そうとしてくれなかった。

「知りたいからって、当たり前すぎるじゃない。ちゃんとした理由を教えてよ」

「ちゃんとした理由〜? なにそれ。食えるの?」

「ふざけないで! …別に、いじめなくなったらいいんでしょ? いじめられたくないから、なんでいじめたのか聞き出して自分のダメだと思うことを改善しようっていうんでしょ?」

…正しいし、よくある理由ではあるけど、大違い。

それに、何か話が急にずれたような気がする。

この人と一緒にいられる香さんを少しだけ尊敬した。

「………あの、樋山先生」

私は、ちゃんとした理由を話すために一応先生に許可を取ろうと思った。

例の<言霊>云々の話。

琴音さんはその行動をどう取ったのか、早口でまくしたてた。

「なによ、話す人を変えて樋山先生に私を説得させようっていうやり口? 優等生ねーまったく。そういうところが香は気に入らなかったんだと思うわ。」

優等生ねぇ…どうやらこの人も私の性格を誤解しているようだ。別に気にしないけど。

それに、さっきから琴音さんの予想は外れまくっている。

だって、香さんに嫌われたからって何か起こる訳じゃないし……あれ?

今、琴音さんすごく重要なこと言った気がする…。

「こここ琴音さん! 今、なんて言った? もう一回言って!」

「へっ!? な、何よ怒ったの? 堪忍袋が小さ」

「いいから早く! ちなみに怒ってないし! てか言わない方が怒るし!」

私の剣幕に押されたのか、琴音さんがおそるおそる口を開く。

「ゆ、優等生ねーまったく」

琴音さんはさっきのセリフを録音されたテープみたいに口に出す。

違う! それの次なんだけどっ!

「それはそれで腹が立つけどそれじゃない! もうちょっと先!」

「堪忍袋が小さい…?」

「先に行きすぎ! あぁーもう、だから、香さんがどうって言ってたじゃん!」

思い出すようにぎゅっと眉を寄せていた琴音さんは、ややあってはっとしたように目を見開いた。

「そういうところが香は気に入らなかったんだと思う?」

「そう、それ!」

わかった喜びに、思わず琴音さんの手を取る。

琴音さんが驚いて手を引こうとしたけれど、振り回していた私は離れないように握っっていたから、手を引くことはできなかった。

「…で? それがどうしたというの?」

「香さんが気に入らなかったって言ったってことは、香さんが琴音さんにそう言ったんでしょ?」

「ど、どういうこと?」

「つまり、いじめようって言ったのは琴音さんじゃなくて香さん…違う?」

私を見た香さんが、琴音さんに気に入らないと言い、いじめようと提案した…私はそう考えた。

琴音さんが信じられないといった瞳で私を見る。

そして自己嫌悪するように琴音さんはうなだれた。

「……そうよ。いじめようって言ったのは香。私じゃないわ」

次に琴音さんが顔を上げたとき、琴音さんの顔は何か不思議なことがあるかのようにゆがんでいた。

おそるおそるといった感じで口を開く。

「でも、おかしいの」

「…おかしい? なにが?」

「香は、いじめようなんて言う人じゃなかったわ。嫌いな人がいたときは、基本的になにも話さないだけで…いじめみたいに、クラスの人全員にも無視させるなんてことなかったもの」

琴音さんの瞳から、また涙があふれ出した。

ただ話を聞いていた私は、その涙の理由がわからないでただ慌てた。

急に泣かれても困る。

琴音さんはそんな私を無視して続けた。

「私だって…最初は乗り気じゃなかったわ。でも香は『いじめよう。あいつはいじめられなきゃいけないんだ』って、変なこと言い出して…」

それはさすがに腹が立つ。

何さ? いじめられなきゃいけないって何? いじめられなきゃいけない人なんているわけないのに。

「私は、やめさせないとって思ったのに…なんか、やる気が出ちゃって」

「…ちょっと」

「わかってるわよ。やる気が出るなんてあり得ないわ。人でなしだわ。………ごめんなさい皐月さん。あんなにやっておいて、こういうこと言うのも何だけど…」

琴音さんが涙を制服の袖でぬぐって私を見る。

彼女の瞳は強い意志でみなぎっていた。

「…お願い、皐月さん。香は、あなたにしか助けられない気がするの。香は助けを求めてるの。だから、皐月さん…香を、助けてあげて…!」

友人を思う、強い気持ち。

私は、それを自分のことをいじめた人だからといって関係ないと言えるほど馬鹿じゃなかった。

琴音さんは、思ったよりもいい人だった。

それなら、香さんだって悪い人な訳がないじゃんか。

いい人の友人が、悪い人なんてあり得ないじゃんか。

それに琴音さんと香さんが<言霊>に関係してるっていうんだったら、もっと関係あるじゃんか。

「………わかった。助けるよ」


そうして、私のいろいろと大変な日々が始まった。




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