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兵の風と鐘の音にさらわれた少年  作者: 炭酸水
第一部 兵の風の中で
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第64話 援軍と挟撃

投稿しながら作品を読んでいたんですが……

女性が主人公のお母さんと一回だけのどっかのおばさんとおばあさんしかでていない……

ダリルのスリングが石を放つ音と、廃村の奥から上がる怒号が混ざり合っていた。

俺は深く息を吸い、弓を引き絞ったまま視界を細める。


(……七人目)


矢羽をかすめる風の音とともに、矢は盗賊の首元に吸い込まれるように突き刺さった。

廃村までは距離がある。だが問題はない。

今の奴らにこちらを警戒する余裕はない。


廃村の中――

エドリック、レナード、トマ、オズワルの四人が入り乱れ、その勢いに盗賊たちは完全に翻弄されていた。


普段なら物陰に逃げ込まれ、狙いはぶれる。

いま四人が暴れて注意を奪っているからこそ、俺の矢は外れようがなかった。


(八人目)


四人の背後に回り込もうとしていた盗賊を見つけ、そのまま射抜く。

矢が刺さる瞬間まで、俺の射撃速度は一度も乱れなかった。


横ではダリルの石弾が二人まとめて倒している。

だが――距離が遠いのか、いくつかの石が外れて地面に落ちるのが見えた。


(……限界距離、か。だが十分だ)


迷う暇などない。


(九人目)


矢が放たれ、盗賊の胸に突き刺さる。

倒れ込む姿を確認するころには、つぎの標的を視界へ収めている。


だが、そこで気づいた。


(…………動きが変わった。こちらに集まってきている)


廃村の連合側の入り口――

さっきまで盗賊が群がっていた場所は、今はほとんど影がない。

ほぼ全員が、こちら側――高台へ向かって移動し始めている。


(レナードの読み……当たっているな)


背後に味方の別動隊がいる可能性。

味方が敵の背後を取れるように囮としての役目。

それを確信させるように、盗賊たちの流れがこちらへ押し寄せる。


(十人目――)


続けて矢を放とうとした、その時だった。

背後――拠点の方向から、微かな足音と気配。


(……敵か!?なぜ後ろから――)


咄嗟に息を呑む。俺は矢をつがえたまま、荒く声を投げた。


「ダリル!!」


その瞬間、ダリルはスリングを捨て、剣を抜いて拠点側へ向き直った。

俺も援護に向かおうかと身体を動かしかける。


だが――視界の端で、トマの背後に回り込もうとする影が見えた。


(……トマが危ない!)


矢を放つ。十一人目。

盗賊は胸を押さえたまま倒れ込み、トマが後退して態勢を整えるのを確認する。


その直後だった。

拠点側の茂みを割って、誰かが現れた。


(――!)


弓を向けかけた俺の目に、見慣れた影が飛び込む。


ミロだった。


しかも――後ろには十人ぐらいの兵が続いていた。


(来てくれたか……!)


胸の奥に熱がこみ上げるが、すぐに意識を戦場へ戻す。

援軍だと分かれば後ろは大丈夫――もう躊躇う必要はない。


俺は再び、廃村へ弓を向けた。


盗賊が二人、レナードの後ろへ回り込もうとしている。

矢をつがえ、呼吸を整え、ほんのわずかに弦を引き絞る。


(十二人目)


矢は吸い込まれるように飛び、盗賊のこめかみに突き刺さった。


風の音、戦いの叫び、仲間の声――

すべてが混ざる中でも、俺の視界は一度も濁らない。


(……外すわけにはいかない)


仕留め続けろ。仲間を守り続けろ。

それが、俺――ロランの役目だ。


***


ダリルはすぐに走り、駆け寄ってきた小柄な影に声を上げた。


「ミロ!来てくれたか!」


「ダリル!この状況はどうなってるんだ!?」


ダリルは短く、だが必要な部分だけを簡潔に説明する。

ミロだけでなく、後ろに続く援軍の兵士も黙って耳を傾けていた。


説明が終わるより早く――

援軍の一人が静かに前へと進み出た。低く落ち着いた声が、場の空気を引き締める。


「……なるほど。お前たちの隊の隊長は優秀だな」


ダリルは眉を上げた。

「あ、あんたは……?」


「失礼」

男は軽く頷き、名乗った。


「第三斥候部隊隊長カイだ」


思わずダリルは敬礼しかける。だがカイは手を軽く上げて制した。


「この場で敬礼はいらない。動きが止まる」


言うと、すぐ後ろに控える兵士に短く声をかける。


「――おい」

呼ばれた兵士は即座に反応し、弓を引き絞って空へ向ける。

次の瞬間――


ヒュオォォン――!


甲高い矢音が戦場の空気を裂き、空高く吸い込まれていく。

明らかに何かの合図だった。


「……これまで盗賊を追い詰めていたのは俺たちの部隊だ」


その言葉に、ダリルの胸が一気に熱を帯びる。

(――レナードの予想は当たってた!マジかよ、あいつすげぇ!)


カイは周囲を一瞥し、廃村の方角を鋭い目で見据えた。

「そちらの隊長の読みどおりだ。ここで挟撃の形になる!」


短く息を吐き――

一声。


「行くぞ!!」


援軍の兵士が弾かれたように駆けだした。

その動きは速く、無駄がなく、まさに敵を狩るための部隊だった。


「ミロ!」

カイは走りながら鋭く叫んだ。

「お前はそっちの部隊に合流しろ!」


「了解!!」

ミロもすぐに動き出し、ダリルと共にロランの元に向かう。


援軍が廃村へ突入する気配が、空気そのものを震わせていた。


***


援軍が廃村へ突入していく直後、ミロとダリルはすぐにロランの位置へ駆け寄った。


「ロラン!エドたちは!?」

ミロの声は焦りでわずかに震えていた。


ロランは弓を構えたまま、視線を一瞬だけ横に向けた。


「……大丈夫だ。ここから見える範囲じゃ、誰も死ぬような負傷はしていない」


その言葉にミロは胸をなでおろすが、ロランはすぐに視線を戻し、短くつぶやいた。


「……十七人目」


ミロとダリルは思わず息を呑む。

この距離から十七人――ロランの腕前がどれほど異常か、二人は改めて理解した。


ロランは次の矢をつがえながら言った。


「ここから援護を続ける……だが、矢がもう尽きる」


ミロはロランの矢筒を覗き込む。

残りは――わずか四本。


「……さすがに心細いね」

ミロは躊躇なく自分の矢筒を外し、ロランへ差し出した。

「じゃあ僕の矢を使って。まだ足りるはずだよ」


「助かる」

ロランは受け取りながら、すぐに次の標的へ照準を合わせる。


ミロはダリルへ振り返った。

「僕たちは廃村へ行こう!カイ隊長たちが来てくれたとはいえ……まだ多勢に無勢だ!」


「わかった!」

ダリルは剣を抜きながら頷く。

「スリングも射程から外れてきてる。ここからはレナードたちと合流する!」


短い判断とともに二人は廃村へ向かう体勢を整えた。

ミロは一瞬視線を前へ向け――エドリックたち四人の動きを確認する。


(……すごい)


四人の動きは完全に噛み合っていた。

レナードが前線で切り結び、死角をオズワルが補い、トマは間合いを読みつつ槍を繰り出し、エドリックは投擲と槍で隙を作って敵を倒す。


攻撃すれば誰かが守り、誰かが次を断つ――

流れるような連携が、盗賊たちを確実に追い詰めていく。


さらにその背後へ、カイ率いる斥候部隊が加勢したことで、廃村の内部は加速度的に劣勢へ傾いていた。


その時だった。ロランがわずかに弦を引き絞ったまま、低くつぶやいた。


「……そろそろだな」


「え?」

ミロが振り返る。


「レナードの作戦が完了する」

ロランの視線の先――ここから反対側、連合側の入り口。


その瞬間、ミロとダリルも気づいた。


連合側の入口から――複数の影が一斉に走り込み、背後から盗賊たちへ襲いかかっていた。

怒号、悲鳴、武器のぶつかり合う音が立て続けに響き始める。


盗賊たちは完全に混乱していた。

背後を別動隊に、正面をレナードたちと合流したカイの部隊に突かれる形で、隊列は完全に崩壊する。廃村の中で見事な挟撃が完成した。


「行こう、ダリル!!」

ミロが叫ぶ。


「ああ!!」


ミロは短弓を、ダリルは剣を握りしめ、

二人は激戦の渦巻く廃村へ――全力で駆け出した。


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