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43.常識人は存在しない

Wi-Fiのルーターがやられて茫然としてました。

泣いた。

 シャカさんに連れられ、私達は五階にやって来る。

 五階はSクラスとAクラスの居住エリアらしい。

 Sランクは廊下を進んだ突き当たりの二部屋。

 つまり、一部屋二人ということ。

 それを意識しだすとかなり緊張してくる。

 相手に迷惑かけるかもしれない。上手く関係を築けないかもしれない。


「ねぇ、セシルちゃん」

 へ!?

 私は肩を叩かれる。

 マリアさん?

 前を歩いていたマリアさんが、いつの間にか私の位置まで下がってきていた。

「手を出して」

 優しい声色でマリアさんは手のひらを見せる。

 ここに手を置くってこと?

 

 私は言われるがまま、マリアさんの手のひらに手を乗せる。

 柔らかくて、暖かい……

「────、───────、───」

 これは……魔法?

 マリアさんが詠唱を終えると、私は心身共に軽くなり元気になる。

「セシルちゃん、顔色が悪かったから軽めの治癒魔法を使ってみたけど、どう?」

 私は『良くなった』と分かるように、頭を縦に振る。

 

 今のが治癒魔法……

 軽めのって言っていたけど、肉体的疲労だけじゃなくて精神的疲労も回復したんだけど。

 適性が高いのかな?

 それに、治癒魔法は光属性が無いと使えない。

 特殊属性である光属性と闇属性はかなりレア。

 私も光属性の適性はあるけど、確実に私より適性が高い。

 特殊属性の適性を持っているだけで重宝されるから、あまつさえ高い適性を持っているマリアさんは、天才の中の天才に入るだろう。

 これが、Sクラスの実力。

 こんなふわふわとしたマリアさんでも、今みたいに凄い力を持っているんだ。

 

「マリアにセシル。大丈夫か?」

 部屋の前まで来たら、シャカさんが私達に声を掛けてくる。

 二人でこそこそ話していたから、何か問題があったのか心配してるみたい。

「大丈夫でーす」

 マリアさんは手をひらひらと振って返事する。

 私は返事の代わりに頷く。


「そうか。なら、部屋割りはこっちで勝手に決めてるから。向かって左側にルオンとシルビア。廊下を挟んで右側にセシルとマリア。ほら、これ鍵。中に荷物あるから、二時間後の夕食までに荷解きしな」

 シャカさんは『無くしたら罰金な』と言って、私達に鍵を投げて渡す。

 同室相手はマリアさんかぁ……!

 この中なら一番仲の良い人だから、これは嬉しい。

 ルオンさんとシルビアさんだったら嫌って訳じゃないんだけど、どういう人かまだあんまり分かってなかったから、少し安心。


「じゃあ、部屋に入ろっか。ルオンちゃんとシルビアちゃんはまた後でね」

「うん!バイバイ!」

「はい、また夕食時に」

 私は二人と別れ、マリアさんと部屋に入る。


「うわぁ……」

 マリアさんと私は部屋に入って直立不動になる。

 凄く広くて白っぽい豪華な部屋。

 寝室だけじゃなくて、扉の奥にある洗面所も含めたら冒険者ギルドの自室(物置)の10倍くらいはありそう。

 ……でも、当然か。

 だって、貴族も住むんだもんね。

 物置みたいな所に住ませる訳にはいかないよね。


「わたしの実家の部屋よりも少し狭い代わりに豪華かも」

 え、これでも狭いの?

 マリアさんって思っていたよりもお嬢様?

「わたしの故郷は無駄に広いからね」

 私の疑問に気付いたのか、マリアさんがそう話す。

 ん~、私の常識がマリアさんの常識なのかが分からないから、何とも言えないなぁ。

 11年間野生児生活をしていた人の常識も、遠い国の貴族の常識。

 常識を分かち合える時が来るのだろうか。


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