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42.入寮

 窓の外はもう暗い。

 そんな中、この広くて白っぽい豪華な部屋では、妙な光景が繰り広げられている。

「奇跡ってあるんだね~」

 私の頭上でそう呟くマリアさんは、私の頭を撫で回す。

 マリアさんの膝にちょこんと座る私に羞恥心が襲ってくるが、それは直ぐに幸福で覆われる。

 

 ……これってどういう状況だっけ?






 ナンシーさんから連絡を受けた私達は、明日のトーナメント戦に備えるため、早めに帰ることになった。

 私はいつも通り冒険者ギルド……には行かなかった。

 

 私、それにSクラスの他数人がやって来たのは、学園の敷地内にある、校舎から少し離れた場所にある、白っぽく綺麗で、巨大な建物だった。

 私達はその建物の前に立ち止まる。


「す、凄いですね……平民の自分じゃ想像することしか出来ない建造物ですよ」

「わたしの故郷はこういう建物なかったから新鮮だな~」

「白いな……俺には似合わない」

「全体的に黒っぽいイズリー君には合わないかもしれないけど、僕はこういう綺麗な所で嬉しいな」

「マイロンさんの言う通りです。清潔そうでよかったですね」

「確かに!薄汚い所だと気が滅入っちゃうもんね~!」


 上からテルマーさん、マリアさん、イズリーさん、マイロンさん、シルビアさん、ルオンさんが、思い思いの感想を口にする。

 私もこの迫力と場違いさに少し圧倒されてはいるけど、こんな所に住めるのは嬉しいかも。

 そう、住めるの。こんな凄い所に。


 ここにいる7人は、この凄く寮に入寮する面々。

 寮に入ること自体は無償らしく、家が遠い人や、より良い環境に身を置きたい人がここに来る。

 この寮は一学年で一つあるらしく、後二、三年生の寮がこの敷地内の何処かにあるらしい。

 軽く見渡しても他の寮が何処にあるかは分からない。

 それくらい学園の敷地は広いってことなんだろう。


「それでは早速、中に入ってみましょう」

 シルビアさんのその一言で、私達は寮の中に入っていく。

 入るだけなのに緊張してきた。

 一体どんな所なんだろう。


「おぉ……」

 これは凄い。

 マイロンさんが詠嘆するのも分かるよ。

 まず、とにかく広い。

 Sクラス以外の人もいるとは言え、それでも持て余すくらいの広さはある。

 第二に清潔感。

 適度な生活感はあるものの、埃が全く見当たらない。

 冒険者ギルドの自室とは大違い。


「キミ達、Sクラスの人?」

「あ、はい!」

 突然話し掛けられたテルマーさんは、裏声になりながらそう答える。

 私はテルマーさんに話し掛けた人を視認する。

 30歳くらいの、エプロンを着けている焦げ茶色の大きな三つ編みをした女性。

 一体この人は……


「アタシはカシア · サンバード。この寮の寮母だよ。よく生徒からはシャカさんって呼ばれてるから、そう呼んで」

 この寮の寮母……

 だからエプロンを着けてるのかな?

 

「部屋に案内するよ。ついてきな」

 私達はシャカさんの背中を追う。

 共有スペースや食堂、ランドリー等の奥まで行き、階段の前でシャカさんは立ち止まる。


「二階からは居住スペースだな。男子は二、三階。女子は四、五階。Sクラスのキミ達は各々三階と五階の筈だよ。はい、じゃあ男子はこの子についてって」

 そう言うと、カシアさんの背中から何かが現れる。

「ま、魔物!?」

 そう、現れたのは尾が二股に分かれた猫型の魔物。

 だけど、悪意のようなものは感じない。


「この子はシェルブ。アタシのペット。知性はかなり高いから、この子に案内して貰う」

「にゃ」

 シャカさんの言葉を理解しているのか、シェルブは階段に足を掛け、男子三人を見つめている。

 あまりに突然のことで、三人は少し混乱しているようだ。

「ほら、行った行った!」

「そ、そう押すでない……!」

 シャカさんは三人の背中を押して、無理矢理階段を登らせた。

 結構豪快な人なんだなぁ、シャカさんって。


「はい、じゃあ女子はアタシについてきな」

「はーい」

 マリアさんは何事もなかったかのように、階段を登っていくシャカさんの後ろをついていく。

「……ルオン達も行こっか!」

「……そうですね」

 私達は微妙な顔をしながらも、シャカさんについていった。


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