41.皆の実力
それから暫く他愛もない雑談をしていると、講堂の扉が軋みながら開き、誰かが入ってきた。
「遅れました~」
「な、ナンシー!?」
「おぉ、エルディか。この場から消え失せな」
「それは俺の台詞だね」
二人の間で激しく火花が散る。
どうしてここにナンシーさんが……って、ナンシーさんはこの学園の先生だからか。
当たり前のことなのに疑問に思っちゃった。
「あの……これはどういう状況なのか、説明していただいてもよろしいでしょうか……?」
綺麗に整えられた銀髪を靡かせながら、サクラさんは謙虚に小さく挙手する。
「……わたしはこのクラスの副担任。だけど遅刻して今来たの」
悪びれる様子もなく、ナンシーさんは欠伸をする。
「だからか……担任でもなんでもない教師が俺らの引率を任されていたのは」
白のメッシュが入った群青色の髪をかきあげたイズリーさんは、漸く府に落ちたと言った様子でそう言葉にする。
私、緊張でほぼ意識が無かったから気付いてなかったけど、そんな状況だったんだ。
それは不思議に思うよね。
私もしっかりしてたらイズリーさんと同じ反応になってただろうな~。
「担任のロズ · アーウェンは1ヶ月前に騎士団と共に龍に挑んでボロ負け。そして、今は治療中だから、わたしが代わりをしろと。だけど残念。わたしも眠くて無理でした~」
「教師ってそんな感じで大丈夫なんですね……」
鞄から本を取り出して読み始めたナンシーさんに対して、眼鏡を掛けた茶髪のマイロンさんが、皆の気持ちを代弁してくれる。
エルディさんの昔話から、少しだらしない人だとは分かっていたけど、まさかいつもこうなの?
……私はそうは思えないけど。
なんだか、眠くて機嫌が悪いように見えるんだよね?
ほら、ナンシーさんってエルディさんのことが嫌いって訳でも無さそうなのに、消え失せろとか言ってたし。
遅刻するくらいまで寝てもまだ眠そうって、何か事情があるんじゃないかな……?
「そうそう。アンタ達にアレを伝えないといけないわね」
『思い出した』と、ナンシーさんは本を閉じて、鞄に戻す。
「アレとは……一体?」
アレク様は顎に手を当て、机の上に足を組んで座るナンシーさんに疑問をぶつける。
「明日、アンタ達16人でトーナメント戦を行うわ。だから準備をしときなさい。聞いてないとか言われたら面倒だから」
「あ、明日ですか……!?少し早すぎないですか?」
「いや、そうでもないかも知れないぞ。入学早々トーナメント戦。全員の現状の実力を知れるいい機会。名案だな」
ふんわりとした薄い桃色の髪を持つシルビアさんが、ナンシーさんに疑問を呈すると、真っ黒な髪で黒光りする髪を耳に掛けながら、キルリスさんがナンシーさんの肩を持つ。
シルビアさんの言う通り、授業の説明やら色んな工程をすっぽかして早すぎるとは思ったけど、キルリスさんの考えも一理ある。
入学時の実力を知れるのも、他の皆の実力を知るのには、うってつけかもしれない。
アレク様の太刀筋は剣術試験の時に拝見したけれど、他の皆の戦い方を見てみたい。
魔法か剣術、どちらがメインなのか。
なんの適性があって、どんなスキルをどう使って……
ここにいるのは全員エリート。
興味が湧かない訳がない。
それは皆も同じのようで……
「ま、オレが勝つのは決まってるけどな」
「いや、ボクが勝つから」
「みんな、どんな戦い方をするんだろうね……」
各々、隠しきれない戦意を露にしていた。
本文の下にある☆☆☆☆☆を、★★★★★にポチっとして頂ければありがたいです!




