39.ちょっとズレてる
「はい!質問!セシルさんは魔法が使えないのですか!」
ルオンさんは純粋な淡水色の瞳で、私の瞳を真っ直ぐに捉える。
眩し過ぎる人だなぁ……
百聞は一見に如かず。
ルオンさんの質問に答える為、私は実際に魔法を使う。
手のひらに小さな炎を出す。
すると、全員『あり得ない』といった様子で、私の顔と手のひらの炎を交互に見つめる。
「詠唱破棄!?え、それってスキルじゃないんだよね?」
栗色の髪をハーフアップに纏めたサイリルさんは、好奇と困惑が混じった眼差しで、私に問い掛ける。
それに対して私はこくんと頷く。
「凄いね~、ボクでも詠唱破棄は出来ないもん。尊敬しちゃうな」
白髪で癖毛の華奢なライヴさんは、無邪気な笑顔を私に見せる。
尊敬しちゃうって、嬉しいんだけど、絶対思ってないよね。
「詠唱せずに魔法を使うとか、魔物みてぇだな」
灰色の髪をツーブロックにしている、大きな身体で威圧感のあるグレイさんは、吐き捨てるようにそう言う。
その言葉に私は少し怒りを覚える。
魔物みたいだ、ってそんなの、魔物を侮辱するような言い方だ。
メラさんに赤ずきんさんにそれに、フェンリル。
魔物にも優しい人は沢山いるのに……!
「おい、グレイ」
凛とした声が、この講堂を支配する。
アレク様の声だ。
「あ、アレク様」
その声に威圧されたのか、グレイさんは背筋をピンと伸ばし、緊張した面持ちでアレク様へ真正面に身体を向ける。
「様はいらないよ。アレクでいい。せめて“さん”だ」
「は、アレクさん」
「今の発言、セシルを侮辱することになるのでは?」
「そ、それは……」
怖いんだけど……
っていうか、私を侮辱する?
どうしてそうなるの?
「……申し訳ございません」
グレイさんは声を絞り出し、頭を下げてアレク様……アレクさんに謝罪する。
「謝るんなら、俺に謝るんじゃなくて、セシルに謝るべきだ」
え?だからなんで私に謝るの?
魔物に対しての侮辱なのに。
グレイさんは私に身体を向き直し、頭を下げる。
「すまなかった」
だからなんで?
……取り敢えず私も頭下げるか。
「……悪いな。こんな嫌な雰囲気にさせたくは無かったんだけどな」
アレクさんは首に手をやり、苦笑いする。
優しい人、なんだよね?
いまだにアレクさんが怒った理由があんまりわからないんだけど。
「そうだ。次は俺からセシルに質問をしていいか?」
あ、アレクさんの質問ならなんでも答えますよ!
私はこくこくと、何度も頭を縦に振る。
「セシルはどうして声を出せないんだ?」
アレクさんがその言葉を発したと同時に、講堂は静寂に包まれる。
そのことにアレクさんは気付かない。
だけど、他の皆はわかる。
『そこ触れるかぁ……』みたいな空気感。
いや、別に私は触れられても良いんだけど、他の人が『あ……』みたいな感じになってるんだよね。
王族って世間知らずって言うけど、本当なのかも。
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