36.天使に絆される
遅くてすみません!
「──い、──ルさ─?聞──て─?」
……う、ん?
「セシルさん!」
な、なに!?
私ははたと我に帰る。
肩を揺さぶるエルディさん。
黒字のマントに緑色の刺繍が施されている、魔剣術学園の制服を着た私。
私と同じ制服を着た15人の学生。
私が今いるのは、講堂?
「漸く戻ってきた……」
そうだ、私、魔剣術学園の入学式を終えて、講堂にやって来たんだった。
「セシルさん、学園に来た時から緊張し過ぎてほぼ意識が無かっただろ?俺が支えてたから倒れなかったけど、しっかりしろよ。俺が付き添うのは今日だけだからな」
今日のこと、なんとなくのことは覚えてるけど、全てはっきりとは覚えてない。
いつもなら『もっとしっかりしなきゃ』って思うけど、少し言い訳させて欲しい。
1.落ちると思っていた学園に受かる。しかもSクラス。
2.人混みと四方八方から威圧感。何でこんなチビがって言う視線。
3.Sランクほぼ貴族。平民は私ともう一人だけ。
4.不敬を働いてしまったアレキサンダー様が私に笑顔で手を振る。
誰だって意識が飛ぶくらい緊張するに決まってるでしょ!?
あぁ、思い出してきたらまた意識が……
「しっかりしろって言ったばかりだろ!?」
エルディさんの一喝で私は現実に引き戻される。
助けてくだしゃい……
「ねぇ、大丈夫?」
な、なに!?
突然私に話し掛けてくる貴族が約一名。
急に話し掛けられて私は飛び上がってしまう。
「猫ちゃんみたいだね」
そんな私の様子を見て、パールホワイトで外ハネショートヘアーのタレ目の彼女は微笑む。
なんでだろう。この人といると、少し落ち着いてきた。
これが、天使の微笑み……?
「驚かせちゃってごめんね?わたしはマリア · ルーネット。よろしく~」
そう言いマリアさんは私に手を差し出す。
その手を私はそっと握る。
すると、マリアさんは優しく握り返してくれる。
天使……!
「えっと、後でSクラスのみんなで自己紹介しようって話になってるから、キミも自己紹介に参加して欲しいな~って」
私はそこ言葉に勢い良く、あまつさえ素早く頭を縦に振る。
誘ってくれなかったら私、絶対に孤立してた。
ありがとうございます……!
心の底から感謝します……!
「まだ一人だけ先生に説教されてるから、その人が来るまで少し時間があるんだ」
「わたしとお喋りしない?」
入学早々、説教されてる理由も気になるけど、一旦それは置いといて私はマリアさんとお喋りしよう。
まぁ、喋れないんだけど、そこはエルディさんフィルターを通してお喋りしよう。
私はこくんと頷く。
それを見て、マリアさんは『よかった』と、胸を撫で下ろす。
「それじゃあ、キミの名前は?」
マリアさんは興味津々と言った様子で、私に尋ねる。
まるで仔犬みたい。
マイペースで、あどけない人なのかな?
私は答えられないので、困り顔でエルディさんを一瞥する。
すると、要望通り、助け船を出してくれる。
「セシルさんは声が出せないんだ。だから、気になることは俺が答えるよ」
「あぁ、それで冒険者ギルドの副ギルマスさんがここにいたんだ」
「じゃあ、セシルちゃんのフルネームは?」
え?もうちゃん呼び?
嬉しいけど、すっごく嬉しいんだけど、早過ぎない?
「セシル · ニーハバード」
「可愛い名前だね」
マリアさんは私にそう言い微笑む。
セシルって、あの最低な父親がつけた名前だからあんまり好きじゃなかったけど、そう言われると嬉しい。
私はいつの間にか笑顔を浮かべていた。
「セシルさんってチョロいんだな」
エルディさんは私を見てちょっぴり嫌な笑顔を見せる。
え?
私ってチョロいのかな?
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