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27.溢れ出す負の感情

 三体のフェンリルを描き終わったけれど、まだ時間がかなり余っていたから、追加で描き足すことにした。


 困り顔のフェンリルの所には、赤ずきんさんを描こう。

 フェンリルは赤ずきんさんといる時は、いつもこの顔か怒ってる顔だからね。  

 それに寝てるフェンリルの所には、鳥の姿のメラさんを描こう。


 人の姿の方が見慣れてるけど、いつかは忘れたけど、確かメラさんは『人間としての居場所がある』って言ってた筈だから、念のため鳥の姿にしておく。


 走ってるフェンリルにも、って思ったけど、そこも描いちゃったら微妙な所で時間が無くなりそうだったから、それはやめといた。

 その代わり、風景を頑張って描いた。

 木々を上手く躱して走るフェンリル、カッコいい。


 そして、試験は終わる。

 私は椅子に座ったまま、試験の振り返る。


 私は出来ることをした。頑張った。だけど……

 急に寒気がして、思考が嫌な方向に飛躍していく。

 もしあの絵が芸術点とかじゃなくて、落書きだと言うことになって余計に減点、とかになったらどうしよう。

 全部『1』の所を塗り潰したのもふざけてると思われて、これまた減点になったらどうしよう。

 

 私の心が不安で塗り潰されていく。

 出来ることはしたんだから、落ち着こう。

 ここで、不安になっても、もう後戻り出来ないんだから。

 だから、落ち着いてよ、私。

 

 そんな私の心の声を無視して、呼吸が荒くなり、目頭が熱くなる。

 あぁ、まずい、落ち着けない。

 何で、こんな冷静でいられないの?

 何で身体が言うことを聞かないの?

 自己嫌悪で更に状態は悪化する。

 そう分かってるのに、思考が止まらない。


 ……ここにいちゃ駄目だ。早く、冒険者ギルドに帰ろう。

 私は何とか顔を上げる。

 すると、隣に座っていた金髪碧眼の男の人に声を掛けられる。

「大丈夫、ですか?ほら、ハンカチで涙拭いて……」

 そんな優しい声掛けを、私は蔑ろにしてしまう。

 冷静ではなかった私はハンカチを渡そうとするその手を払い、この場から逃げ出すように走り去る。

 何でこんなことしてるんだろう、私。

 可笑しいよ、こんなの私じゃない。

 嫌だ、嫌だ。

 もう試験とか関係無しに、私は負の感情に蝕まれていく。

 

 無我夢中で走った私はあっという間に冒険者ギルドに戻ってきて、貸してくれている空き部屋に飛び込む。

 そして、その場で座り込む。

 すると、すっと冷静になった。

 

 何だったんだろう、今の。

 ここに戻ってきたら、急に落ち着けて、身体がちゃんと言うことを聞くようになった。

 訳が、分かんない。

 

 ……もういいや。今日は直ぐ寝よう。

 嫌なことは忘れるに限るから。


 

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