22.イケメンスマイル
流石にあの火の粉は弱い方だったらしく、的は壊せないとのの、他の人はそれの一回り程見た目も威力も大きい魔法を放っていった。
「はい、次最後~」
とうとう私の番がやってきた。
筆記試験の穴を埋めれるだけの結果を残さなければいけない。
だから、出し惜しみせずに全力を出さないと……!
私は手のひらに小さな炎を出す。
「はぁ!?詠唱放棄、だと!?」
周りの声なんか気にするな。今は集中。
その炎を渦巻く風に乗せる。
私流、炎竜巻!
的に手を向け、炎を勢いよく的へ……!
──消えた。私の炎で的が燃えて消えた。
そこに残っているのは先端が黒く炭化している枝だけだ。
出来ることはした。
二つの属性を同時に使ったし、的も壊した──と言うか、消えた。
周りに人がいたからスキルでより火力を上げる、なんてことは出来なかったけど、それ以外では本気を出したつもり。
ど、どうかな……?
「おい、セシル · ニーハバード」
殺気を感じるような声で試験官に名前を呼ばれる。
冷や汗をかきながら試験官の方へ顔を向けると、蛇よりも鋭い目付きで睨まれ、私の身体は完全に固まる。
「お前は何者だ」
魔法も使ってないのに周りの空気がズンと重くなる。
怖過ぎるって、子供だったら泣いてるよ……
当たり前だけど、私は試験官の問いに答えられない。
……声が出ても答えられる自信も無いけど。
「ナンシー、その質問は後で俺が答える」
後ろからキリッとした男声が降りかかる。
エルディさん……!
エルディさんは私を一瞥し、優しく微笑む。
これが、イケメンスマイルか……
「わたしはこのチビに聞いてんだ。あんたには聞いてない」
チビって、酷い……
「そもそも伝えてるはずだろ、セシルさんの事情を」
「聞いてないね、あんたの勘違いじゃない?」
「どうせサボって召集に来なかったんだろ……!……はぁ、埒が明かない。とにかく、セシルさんのことは後で俺が説明するから」
「だからわたしはこのチビに──」
「いい加減にしろ」
先程とはまた違う空気が場を支配する。
いつも温厚なエルディさんだけど、試験官──ナンシーさんには当たりが強いなぁ。
まるでフェンリルとメラさんのやり取りを見てるみたい。
「…………分かったよ。んじゃ、試験終了。さっさと帰れ。クソエルフとセシル · ニーハバードはここに残れ」
私も残らなきゃいけないのかぁ。
分かってたけど、この死んだ空気に取り残されるのは辛過ぎるかも……
私達を横目に他の人達は、この場から逃げるようにしてそそくさと去っていく。
それに乗じて他二人の試験官も背中を丸めて去っていく。
逃げたな。
「ほら、説明。さっさとしろよ、わたしも忙しいんだよ」
「分かってる。実は、かくかくしかじかで──」
エルディさんは何故かフェンリルのことを伏せながら、私のことを説明した。
声が出せないことや、魔物に育てられたこと等を。
そして意外にも、ナンシーさんは大人しくエルディさんの説明を最後まで聞いていた。
仲は良くなさそうだけど、お互い信頼はしてるように見える。
この二人は一体どんな関係なんだろう?
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