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月陽なり
「どうして……」
震える声が聞こえた。
美しい顔に雫が垂れる。
泣いていた。あの、夜桜が。強くて、カッコイイ。
優しくていつも笑顔の私の夜桜が。
「あれ?」
遅れて気が付く夜桜の涙の自覚。
人の感情が揺れる。波のようではなくて、ゆっくりと育つ筈の植物が一気に花咲くように、突然。
人が泣く時、それは悲しい時で。
私は悲しませた。世界で唯一の、世界で私を見つけてくれた唯一の人を。心を許せた人は増えたけど、好きだと思える人も増えたけど、愛してると思えるのはただ1人で、この人で、私はその役割を無理やり変えようとしている。
けれど、私なりの覚悟でもある。
一時の幸せなんかじゃなくって、一生の幸せを掴むために。
間違ってるかもしれないし、最適じゃないかもしれない。
目をつぶって手探りで何も見えない中で、探している答えをつかもうとしてるんだ。
思わぬ物で怪我をするかもしれない。
正に今、怪我をさせている。心に。
けれど……。
「夜桜……」
涙を流す夜桜にその決意も覚悟も投げ捨てて、今すぐ謝って抱き締めて無かったことにしてしまいたくなる。




