第4話
外は寒い上に、かなり荒れていた。多くの村人はすでに逃げる用意をして、いつでも村を出ていけるようにしている。ジャッキーのおかみさんは、勇敢にも夫ともに巨大トカゲを睨みつけ、木の棒(驚くほど太い)を振り回している。
アデルは、巨大トカゲを間近で見て呆然とした。宿の窓越しに見るより巨大で、前長二十メートルはあるだろうと思えた。トカゲはおかしな奇声を発して村人を威嚇しながら、店の食べ物を貪っている。
その毒々しい、モスグリーンの皮膚は、ぶかぶかのトレーナーのように垂れ下がり、動くたびブルブルと気持ち悪く揺れる。口は驚くほど裂けていて、その避けた口から、血のように赤い二股の舌が、行ったりきたりしている。
アデルは、この大変なときによくも僕は眠っていられたな、と呑気な自分に驚いた。
一方ディスパーは、生き生きとした表情で巨大トカゲを見つめ、沼のようにどんよりと曇った焦点の合わない視線を自分にむけようと必死に追い回している。アデルはしばらく、ディスパーと巨大トカゲの滑稽な様子をぼんやりと眺めていたが、不意に人の気配を感じ、初めてダンが隣に来ていたことに気づいた。ダンはアデルが自分に気づいたと分かると、腰をかがめて囁くように話し始めた。
「あのトカゲみたいなぎょろ目の怪物、何だか分かるか? 俺は多分・・・・・いや――有り得ないな・・・あいつが此処に、くるわけがない・・・・――まあとにかく、夜中にいきなり現れて、商店街の食いもんを荒らし始めたんだ。食いもんを全部食われちまったら、俺らの生活もできないし、ノーザンビレッジの評判も落ちちまう。・・・・・あのコソ泥ネコに加えて、厄介なやつが来たもんだ。見ろよ、あの無敵といわれたジャッキーさんまで苦戦してやがる。・・・・・・これ以上酷くなるんなら、俺はこの村を出て行くつもりだ。いくら最高に良い所でも、こんな恐ろしい怪物やコソ泥ネコがいたんじゃぁたまったもんじゃない。頭がいかれちまうよ」
どうやらダンは、愚痴をいいに来たらしい。アデルは適当に相づちをうち、巨大トカゲと村人の戦いを眺め始めた。不思議なことに、自分への危機感は、全く感じなかった。しばらくすると、ダンは愚痴を他の人にも言いに行こうと、アデルの傍から離れ、同じように荷物を背負ったおじさんのところへ行った。
ダンが行ってしまうと、ふと、アデルの頭のなかに「魔法」という二文字が浮かんだ。
そうだ。僕は魔術師なんだ。まだ、たった一度もちゃんとした魔術も使えないまま、無理矢理この旅に出された。
・・・・僕はいったい、どんな魔法が使えるんだろう。僕の力で、ここに居る怪物を倒せるんだろうか。この人達を、この村を救えるんだろうか。
アデルは急に、今ここで魔法を使って、巨大トカゲを倒してみたくなった。
心臓がドクドクと脈打ち、鼓動が早くなっていくのが分かる。自分の研ぎ澄まされた五感が更に鋭くなる。辺りの様子が、手に取るようにわかった。トカゲの振り回す尻尾が、空を切る音、村人たちの叫び声や、呻き声、建物の崩れる音――全てがアデルのためにあるかのように、あらゆる音、感触が身体の全ての部分から、沁みこんでくるようだ。
力が、湧き上がる――今なら、魔法が使える!――確信だった。
ダメだ・・・・・こんなところで魔法を使ったら、すぐに魔術師だということがばれてしまう。
ほんの少し残っていた、自分の中の冷静な部分が、警告信号を発している。
・・・・この旅は極秘だと、国王に言われたじゃないか・・・・・こらえろ。
そう思った途端、先までの興奮が、嘘のように消えていく。
「危ない!」
突然アデルの背後から、悲鳴に似た叫び声が聞こえた。ハッとして我に返り目の前を見ると、トカゲの巨大な尻尾が、アデルめがけて勢いよく飛んでくるところだった。まさに絶対絶命。
この状態では、思いきり宙を舞って大怪我をするだろう。いや、怪我ではすまないかもしれない。アデルは、トカゲの巨大な尻尾が飛んでくるのを、切羽詰った状況にも関わらず、スローモーションのようにゆっくりと見ていた。そう、さっき確信したときと同じ感覚―――反射的にアデルはしゃがみこみ、思わず両手で頭をかばう姿勢をとった。
もうダメだ!
「バーン!」
耳元で、鼓膜が破れるほどの爆音がし、アデルは一瞬、意識がとんだ。――しかしすぐに意識をを取りもどし、慌てて次の爆音に備えようと耳に指を突っ込んだ。目はギュッと瞑っていて真っ暗なはずなのに、目の前がチカチカする。頭が痛い。ものすごい風も吹いて、何かとても重いものが、はじけ飛ぶ感じがした。
僕は飛ばされたんだろうか――いや違った。アデルはしっかりと土を踏みしめて、さっきと同じ姿勢のままだ。耳が元のように聞こえていることに、しばらく気づかなかった。辺りは、信じられないくらいシーンとしている。
ゆっくりと、立ち上がる。すこしよろけたが、大丈夫、怪我はしていないようだ。辺りを慎重に見回してみて、不意に気づいた。
辺りがぼやけて見える。
アデルは、自分の周りに薄ピンク色の、丸い膜が張っているのに気づいた。その膜が揺れて、周りがぼやけてみえたのだ。村人は皆アデルに注目していた。前を見ると、信じられないことにさっきまで暴れまわっていた怪物が、かなり遠くの道まで飛ばされて、ぐったりとしている。
いったい何があったんだ・・・・? トカゲは、僕がやったのか・・・・・?
アデルは不意に、自分がとても恐ろしいことをしたような、言いようのない不安を覚えた。頭はパニック状態で、何があったのか、まるでわからない。アデルは胸を押さえ、Tシャツをギュッと握った。落ち着け、アデル。まずはディスパーを探して、何があったか、聞かなくちゃ。
気がつくと、あのぼやけた薄ピンク色の膜は消えていた。
「何なんだ、今のは・・・・」
村人の一人が呟いた。
静まり返った商店街では、その呟きがやけに響く。次第にある集団にざわめきがおき、次々と広がってあっという間に人々は騒ぎ始めた。
「今の見たか? あの怪物が一瞬で飛ばされちまった。・・・まるで・・・魔法だ」「でも怪物は死んだみたいだから、良かったわ・・・・・あの子何者かしら」「あーあ。俺の店がめちゃくちゃだ」「まさか、魔法なわけないだろう」「・・・・隣村のイーストで、魔法使いの子が出たって言う話も前にあったじゃないか・・・・」「早くしろ! 魔術師だ!」「王宮に連絡をとれ! 今すぐ追っ払ってもらわなきゃ――おい押すなよ」
アデルはそんな話を耳で受け流し、ぼんやりと肩を落として佇んでいた。身体に力が入らない、自分の手足が、他人のもののように感じる。重い・・・・・・・・・・
何度か、足を踏まれたり耳もとで何か怒鳴られた気がしたが、アデルに直接触れる人は一人もいなかった。ジャッキーやダンが、混乱の色を燈した目でアデルを見ながら、何も言わず通り過ぎて言った気もした。そのまま人混みに流されて、アデルはいつのまにか、巨大トカゲの前まで来ていた。
「よう! アデル、すっげぇなお前」
アデルは、真下からの拍子抜けた声に、飛び上がって尻もちをついた。
「――! ディ、ディスパー。君、無事だったの? そうだ――さっきのは一体何? 僕がやったこと?」
アデルは急いで立ち上がりながら、近くに人がいないのを確かめて、小声で言った。
「ふうむ・・・・・あれは多分、バリアだな。うん」
ディスパーは突然考え込みながら言った。
「――バ、バリア?」
聞きなれない言葉に、思わず聞き返す。
「なんだお前、バリアも知らないのか? ホントになんにもしらねぇんだな、お前・・・・・」
ディスパーは面倒くさそうに言う。アデルはむっとしたがそこは押さえ、ディスパーに早く説明するよう急かした。
「バリアはな、魔術師になった奴が、必ずもらえる能力だ。―もちろん異界の悪魔様からな―自分が危険にさらされたときにだけ作動して、ほとんど全てといっていい攻撃から守ってくれる。――まぁ簡単に言っちまえば、自分の身を守ってくれる不思議な膜ってとこだな。どうだ、分かったか?」
アデルはいまいちよく解らなかったが、先のことを聞きたかったので曖昧に頷いた。
「それで・・・トカゲはそのバリアのせいで飛ばされたの?」
「そうだな・・・あいつはきっと、お前のバリアで飛ばされたんだ。―――俺様が思うに、お前は多分風使いだ」
ディスパーはそこで一旦言葉を切り、さっぱり解らないという様子のアデルを見て、慌てて付け足した。
「―――聞かれる前に言っとくが、魔術師の中にも分類があって、それぞれ得意とする分野があるんだ。一般的には、この五つがある〈火、陽、水、風、光〉。そして特別なものとして〈闇の力〉と〈その他の能力〉。〈その他の能力〉は、一般的な五つ以外の、珍しい力を持つ魔術師だ。こいつは滅多にいない。〈その他の能力〉を持っているやつは、将来、三大魔法使いになったり、あるいは、闇の魔術に目覚めて悪魔になっちまったり―まあ闇の世界にとっちゃ偉大なことらしいが―とにかく歴史に残るような、偉大なことをすると言われている。しかしこの力は、遺伝とかの類は一切関係なくあるものだから、どんな魔術師でも可能性は十分にあるわけだ。もちろん、お前にも。――〈闇の力〉は、その名の通り、生まれながらにして闇の魔術、たとえば―死の魔法だったり、苦痛の呪文も―まあ魔法界では一般に使ってはいけないことになってる呪文の、殆どだ―を身につけているものだ。だがこっちは、その力を持っている代わりに他の魔法が使えない場合が多いんだ―〈その他の能力〉のある奴は、その能力以外にも一般的な五つの力を分類で強く持っていたり――これは本当にごく稀なことだが、全ての魔術に渡ってものすごく優れていて、間違いなく歴史に残るような者もいる。だが〈闇の力〉をもつ者は――あ――最初はどんな魔術師も、その才能と魔力は持っているんだ。たとえ、〈闇の力〉を持っている奴でもな――自分は闇の力を持っている、と本人が確信した時点で、知らずうちに必要のない魔力が消え、その分の力が闇の力に加算されるんだ。これは闇の力がもともと強い奴に多くある。―――じゃあここでさっきの五つの分類の話に戻るが・・・・たとえば、お前は風使いだから、他の魔術師より風についての魔法が優れている。さっきのバリアも大きく見れば風の魔法に入るから、お前が風使いであることは確信に近い」
「え――さっきのバリアって、強かったの?」
「ああ――ありゃあ、百年に一度だって、滅多に見られないぜ」
「ふーん・・・・」アデルはあまり実感のないまま、先を続けるディスパーのほうに、耳を傾けた。
「まぁ、バリアは自覚のないものだから、お前がピンと来ないのも解るが・・・・フム・・・・お前は稀に見る〈その他の能力〉者かもしれない・・・・」
ディスパーは呟くように言いながら、アデルの中の魔力を見透かすかのように、真っ青な瞳をじろじろを覗き込んできた。
「ぼ――僕、魔力がそんなにあっても、迷惑だよ・・・・ディスパー、人の目をじろじろ見るのやめろよ すごく居心地が悪い」
ディスパーは、アデルの言葉を無視して、一人で考え込み始めた。アデルはディスパーがとりあえず自分をじろじろと見るのをやめてくれたのでほっとし、こうもりからそっと離れた。
アデルは好奇心と恐れを入り混じらせながら、巨大トカゲの体に近づいた。トカゲの頭は、かなり先のほうまで垂れ下がっていて、大きなギョロ目はピタリと閉じている。身動き一つしない。本当に死んでしまったのだろうか。アデルはトカゲの尻尾の先を、そっとなぜた。――途端にアデルの体全体に、やけに響くドスの聞いた声が、どっと流れ込んできた。
《俺の体から離れるな小僧。 俺は、インプだ。お前の横に居る、へなちょこの弱っちいインプと一緒にされちゃ困るけどな―― 俺はもっと妖力を持ったインプだ。お前がぶっ飛ばしたこのトカゲに乗り移ってる。名前はアスター。あまり時間がない。唐突に言う。さっきのバリアの力で分かったが、お前はかなりの魔力を持っている。ああ、生まれながらにして、だ。お前のことは、よく知ってる。異界でも有名だし、俺は昔、お前によく似た野郎の教育係をやっていた。・・・・・ま、そんなこと、今は関係ない。お前の魔力は、魔術師のなかでも、相当な力だ。百年前に死んだ、風使いの力に良く似ている。お前も知ってるだろう? イーストビレッジにやってきた、伝説の魔術師を》
アデルは呆然として全身から血の気が引いていくのを感じた。
なんだ? こいつ・・・・・インプ―――?
もしかして、さっきディスパーが言ってた力の強いインプのことか・・・・・。
でもそのインプが、僕に何の用だろう。しかもなんで、あの言い伝えの魔術師のことを知ってるんだ?
アデルは顔を歪めて、トカゲの全身に視線を滑らした。どこかに、インプの妖気が溢れ出しているところがないか、見える範囲で探してみる。しかし、途中で別の聞きなれた声が割り込んできたので、アデルの思考は中断され、頭の中は大騒ぎになった
《ようアスター。俺様の相棒になんの用だ?》
ディスパーだ! 咄嗟にアデルは思った。
《・・・・おやおや。裏切り者のディスパー様のお出ましかい? 久しぶりだなぁ・・・。千年前、お前に異界の牢獄に入れられて以来だ》
なんの話をしているのか、解らない。アデルは鈍く痛み始めた頭を抑え、苛々とインプの話に耳を傾けた。
《あぁ。お前、いつ牢獄からでてきたんだ。力の強いインプだと思ったが、まさかお前みたいな囚人だったとは・・・予想外だな》
――さっきまで目を輝かせてトカゲの周りを飛び回ってたくせに、今その正体が分かるとすぐ態度をかえるな、ディスパーは――
アデルは二人の会話を黙って聞きながら静かに思った。
《で? アスター、こいつになんの用だ?》
《・・・・・ふん、さすがだな。一番いいたいとこを、突いてくる。じゃあ俺も、早速だが――この小僧、かなりの力を持っている。お前なんかにお守りをさせてるより、力のある俺が、こいつの面倒を見てやったほうがいいと思ってな。まぁ・・・簡単に言っちまうと、この小僧を俺のところにくれ。ということだ。分かるだろ? こいつの力、あいつの能力とそっくりだ。アーウィン・ノードリーのな》
アデルは驚いて目を見開いた。――アスターが言ったアーウィンとは、アデルの遠いご先祖様の名なのだ。百年ほど前に亡くなったといわれているが、とても偉大な発明を幾つもした有名な学者だと聞かされていて、魔術師だったなんて、思ってもみなかった。それに、アスターはアーウィンのことを伝説の魔術師とも言っていた。
まさか、伝説の人物が実在していて、しかもそれがアデルのご先祖様?―― そんなこと、ありえない。
アデルは混乱してきた頭をおさえ、インプの会話に聞き入った。
《・・・・》
ディスパーは「アーウィン」という名を聞くと、途端に珍しく黙りこんでしまった。 その様子に満足したのか、アスターは嬉しそうに嘲笑う。
《どうした? 覚えているはずだろう》
アスターはずっと口を開かないディスパーに調子をよくして、歌うようにアーウィンの名を口にし始めた。
アデルは、今やガンガンと頭蓋骨に響く痛みに必死で耐えながら、どういうことなのか考えた。しかし考えてみたところで、頭の痛みが酷くなるだけだ。
どういうわけか、インプたちがアデルの頭の中で言葉を交わすたびに、まるで頭を金棒で思いきりぶん殴られたような痛みが、何度も頭を突き抜けるのだ。アデルはとりあえず、自分の頭の中で何か言ってみることにした。早くこの痛みから、解放されたい。
《あの――あのう・・・・聞こえてますか?》
すぐにアスターの歌うような声が途絶え、それと同時に、ディスパーの息を呑む音がか微かに聞き取れた。
これでやっと、静かになった。
アデルは頭の痛みが消えていくのを感じ、ほっとした。のもつかの間、すぐに頭痛がし始めた。
《こりゃたまげた。こいつ、テレパシー能力も持ってやがる。どこまですごいんだ? この坊主、本当に欲しくなったぜ》
アスターが興奮気味に言ったのと同時に、ディスパーも割り込んできた。
《お、お前こんな能力も持ってたのか。早くもっと魔力を見てみたいもんだ》
二人同時に――いや、二匹同時に、しかも飛び切りの大声を頭の中で響かせられたアデルは、あまりの痛さに小さく呻き、気を失いそうになった。
アデルはすんでのところで気を取り直し、頭の中で二匹のインプに文句を言った。
《・・・・二人とも、僕の頭のなかで大声出したりするのやめてよ。う・・・・死にそう》
《あ――ああ。悪いなアデル》
ディスパーがすぐに謝った。すると、頭からすぅーっと痛みが消えていくのをはっきりと感じた。どうやら二匹とも、アデルの頭の中にテレパシーを送るのをやめたらしい。
アデルはどっと疲れを感じ、その場にへたり込んだ。しばらくして顔を上げると、さっきまであったトカゲの巨大な尻尾は無く、ただ小さなトカゲが、アデルの青く澄んだ目を見上げていた。頭上で、パタパタを羽をはばたかせる音も聞こえる。
「大丈夫か? アデル」
こうもりが心配そうに言った。
「本当は、人間の頭の中で長いことテレパシーを送りあうのは危険なんだ。ずっとやってると、その人間の体が弱って、死んじまう可能性もある」
アデルはそれを聞いて、首筋の毛が逆立つのが分かった。文句を言おうと口を開いたが、何を言おうか考えていると再び頭が痛くなりはじめたので、すぐにやめた。
「・・・・しかし、インプとインプのテレパシーの会話に人間が入ってこられたのは初めてだ。すごいぞお前――で、お前、俺と組む気は?」
アスターがすぐ話をそらした。
「ない!」
アデルは即座に答えた。
「はは・・・やっぱりか。・・・・ま、いい。魔力のあるお前が嫌だというんなら、仕方無い。それにそろそろ異界へ帰んないとな。今頃囚人が逃げ出した! って大騒ぎしてるぞ。こりゃ面倒だ。ヒヒヒ」
アスターは言葉とは裏腹に混乱を想像して楽しむかのように小刻みに身体を揺らした
「じゃ、俺は異界へ帰る。・・・・おい小僧、本当に俺と組む気は無いんだな?」
最後の最後までアスターは諦めが悪い。
「無いってば!」
アデルは思わず大声を出した。
「人の頭の中で大騒ぎしといて・・・・・僕が調子に乗って君と組むと思うかい? ――悪いけど、僕はそこまで人は良くないんだ」
「ああ分かったよ。もう諦めたさ! ふん」
アスターが言い終わったと思ったときには、もうその場にトカゲの姿は無かった。
「あーあ・・・あいつがお前の世話焼き係にならなくて、よかったな。もしあいつがなってたら、間違いなくお前は〈闇の力〉を操る魔法使いになってるぜ」
ディスパーは空を見上げながら呟いた。
「・・・・ところでさっき、百年とか千年とか、いろいろすごい数言ってたけど、君ら一体何歳なの?」
それをきくと、ディスパーはふふんと鼻を鳴らして、偉そうに言った。
「五千歳」
「――!」
いつの間にか、夜は明けていた。




