22.「何のお祝い事」
翌朝、私が目を覚ますと、城全体がいつになく慌ただしい空気に包まれていた。
寝台から起き上がると、すぐにグレタが満面の笑みを浮かべて部屋に駆け込んでくる。
「エミア様!陛下が、本日正式に発表なさいます」
「発表……?」
まだ半分眠気の残る頭で尋ねると、グレタは手のひらをそっと胸に当て、嬉しそうに言葉を続ける。
「エミア様を、正式に皇后としてお迎えになると、帝国中に宣言なさるのです」
その言葉に、私は思わず息を呑む。
昨夜の告白が夢ではなかったという現実。
頬が瞬く間に熱を帯びていくのを感じながら、私はただ言葉を失っていた。
支度が慌ただしく進められていく間、城内のあちこちから、これまでにない活気に満ちたざわめきが聞こえてくる。
廊下を行き交う使用人たちの表情は、皆一様に晴れやか。忙しなく準備に追われながらも、どこか浮かれた様子が伝わってきた。
「これは何のお祝い事なの?」
窓の外から聞こえてくる話し声に、私はそっと耳を澄ます。
「皇帝陛下が、ついに皇后をお迎えになるらしいぞ」
「あの氷の皇帝陛下が……!一体どんな方なのかしら」
行き交う人々の会話に、私は思わず頬を緩める。
この国の民たちが、これほどまでに喜んでくれていることの何と嬉しいことか。
支度を終え、謁見の間へと向かう道すがら、廊下に並ぶ使用人たちが次々と深く頭を垂れていく。
「皇后陛下、おめでとうございます」
まだ正式な戴冠を迎えていないにもかかわらず、すでにそう呼びかけられることに、私は照れくさい気持ちを抑えきれずにいる。
謁見の間に足を踏み入れると、彼が玉座の傍らで待っていた。
私を見つけた瞬間、その表情がわずかに、けれど確かに綻ぶ。
「おはよう、よく来た」
そう言って差し出された手を、私はそっと取る。
集まった側近たちの前で、彼は高らかに宣言した。
「本日をもって、エミア・エールを、私の皇后として迎える」
謁見の間に、歓喜の拍手と歓声が沸き起こる。
誰もが晴れやかな笑顔で、この知らせを祝福している。
その光景を見つめながら、私は照れながらも、心の底から幸せな笑みを浮かべた。
かつて追放され、絶望の淵に立たされていた自分が、今こうして誰よりも大切にされ、祝福されている。
その事実が、胸いっぱいに広がる。
これから始まる新しい日々への期待を胸に、私は隣に立つ彼の手を、そっと握り返すのだった。




