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線路の向こう側

金曜日の5限を終え、後期最初の一週間が終わった。


履修登録は二週目まで、実際に講義を受けた上で変更することができる。


けれど遙は、このままの時間割で後期を受講することに決めた。


帰り道。


遙は実家から大学に通っている。


電車と徒歩を合わせて、片道四十分ほど。


大学を出て、最寄り駅へ向かった。


ホームには、同じ大学の学生らしき人たちが大勢いた。


楽しそうに話しながら電車を待つ学生たち。


手を繋いで通り過ぎていくカップル。


五、六人で集まっている男子学生。


友人を見つけるなり、大げさに手を振って合流する女子学生。


遙はベンチに座り、ぼんやりとその様子を眺めていた。


こうしていると、自然と人間観察をしてしまう。



すると——


「あ……」


線路を挟んだ向こう側のホーム。


そこに、先ほどの“秀平”が友人たちと現れた。


秀平は、遙には気づいていない。


友人と何かを話しながら、楽しそうに笑っている。


遙は、なんとなくその姿を見ていた。


けれど——


また目が合うような気がして、鞄から本を取り出す。


(また手を振られても、どう反応したらいいか分からないし)


ページを開く。


(……でも、もう私のことなんて忘れてるでしょ)


必修で買わされた、講師の著書。


遙は適当にページをめくる。


(教授とか講師って、ある程度もらってるはずなのに。印税でも稼ぐなんてね……)


そんなことを考えていると、遙の乗る電車がホームへ滑り込んできた。


顔を上げる。


その瞬間。


秀平と目が合った。


「あ……」


けれど、次の瞬間——


秀平側のホームにも電車が滑り込んできた。


二人の間を、大きな車体が遮る。


遙は立ち上がった。


なんだろう。


今日、初めて会っただけなのに。


なぜか、意識が向いてしまう。


名前のわからない感情は、まだ心の奥に残っていた。


秀平。


金本秀平。


私とは違うタイプ。


——だから。


また傷つくのは、いやだ。


遙は小さく息を吐いた。


離れよう。


そう思いながら、電車に乗り込んだ。


(来週からは座る場所変えよ。)


そう考えながら、帰路を進む。


心は、まだ何かソワソワと落ち着かなかった。

こんにちは。

名無しのkikoです。

不定期更新とお伝えしましたが、なんとか毎日12時更新が間に合っています。しばらくは毎日12時更新を目指しますので、よろしくお願いいたします。

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