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繋がる気持ち

遙は家庭教師のアルバイトを終え、帰路についた。


歩きながら、携帯電話を開く。


『話したいことがあります。

明日、会えませんか?』


その二行を打って、送信ボタンを押すまでに時間はかからなかった。


本当は。


今すぐ会いたいくらいだった。


携帯電話が鳴る。


秀平からだった。


『俺も話したい。

明日、会えるよ。

どこがいい?』


届いたメールに、少しほっとする。


返信を打とうとした、そのとき。


もう一度、携帯電話が鳴った。


『ていうか、今すぐでも会いたい』


「……」


胸が、ぎゅっとなった。


私も。


そう思った瞬間には、もう電話をかけていた。


『もしもし?』


「秀平?」


『うん』


「私も……今すぐ会いたい」


『……うん』


「秀平の家、行ってもいい?」


『いいよ』


少し間があって。


『駅まで迎えに行く』


「……うん」


電話を切る。


会いたい。


話したい。


それだけだった。


*


駅まで走った。


電車に乗ってからも、落ち着かなかった。


秀平の最寄り駅までが、いつもよりずっと遠く感じた。


電車が駅に着く。


ホームから改札へ向かい、外へ出る。


「遙!」


呼ばれた先に、秀平がいた。


目が合った瞬間。


秀平が遙の方へ駆けてくる。


「ありがとう。会いに来てくれて」


「……ありがとう。迎えに来てくれて」


そう言うと、二人とも少し笑った。


どちらからともなく、手を繋ぐ。


そのまま秀平の家まで歩いた。


言葉はほとんどなかった。


それでも。


繋いだ手から、何かが伝わっているような気がした。


*


部屋に入る。


遙が鞄を置いた、その直後。


秀平が遙を抱きしめた。


「……ありがとう」


「何が?」


「会いに来てくれて」


遙は秀平の胸元で、小さく笑った。


「それ、さっきも聞いたよ」


「何回でも言うよ」


「……そっか」


少しだけ、目の奥が熱くなる。


遙は秀平の服を、そっと掴んだ。


「……私ね」


「うん」


「自分の中で、少し気持ちが整理できたから」


「うん」


「聞いてほしい」


秀平は遙を抱きしめたまま、小さく頷いた。


遙は一度、息を吸った。


「私にとって、全部初めてだったから」


「……うん」


「秀平にとっても、初めてであってほしかったの」


秀平の腕が、少しだけ強くなる。


「だから……嫉妬してた」


「うん」


「ごめんなさい」


「謝らなくていいよ」


「……でもね」


遙は続けた。


「気づいたの」


「何に?」


「秀平にとって、初めての恋人じゃなくても。初めて手を繋いだ人じゃなくても。初めてキスした人じゃなくても」


少しだけ、胸が痛んだ。


それでも、もう言葉は止まらなかった。


「私とするのは、全部初めてなんだって」


「……」


「だから」


遙は秀平の胸元から顔を上げた。


「これから、二人の初めてを作っていけばいいんだって」


秀平が遙を見つめる。


その顔を見たら。


今度はちゃんと、自分から言えた。


「だから……」


少しだけ声が震える。


「これからも、一緒にいてくれますか?」


「……」


秀平が一瞬だけ目を見開いた。


そして。


「当たり前だよ」


もう一度、遙を抱きしめる。


今度は遙も、自分から秀平の背中に腕を回した。



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