↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/46

こっちは覚えてたのに。

「……なんで」


遙は秀平を見る。


「なんでもっと早く教えてくれなかったんですか?」


「え?」


「傘のことです」


「ああ」


秀平は、何でもないことのように笑った。


「言ったじゃん」


「いつですか?」


「『やっぱ覚えてないか』って」


「……」


遙は一瞬、言葉を失った。


確かに。


言われた。


言われたけれど。


「そんなんじゃ分かりません!!」


「だろうね」


「……!」


分かっていたらしい。


「じゃあ、ちゃんと言ってくださいよ!」


「でも、遙ちゃん全然覚えてなさそうだったから」


「……それは」


「ちょっと悔しかった」


「え?」


「こっちは覚えてたのに」


秀平は笑っている。


冗談なのか。


本気なのか。


分からない。


「……すみません」


「謝らなくていいって」


秀平が腕時計を見る。


「あ。そろそろ5限じゃない?」


「……あ」


遙も携帯電話で時間を確認する。


もう、講義開始まであまり時間がない。


「行かないと」


遙が立ち上がる。


「あ、遙ちゃん」


「はい?」


「今度さ」


秀平が言った。


「傘、返すよ」


「……まだ持ってるんですか?」


「持ってるよ」


「新しいの買ったから、もういいですよ」


「そんなこと言わずにさ」


秀平が笑う。


「磨いといたから」


「……傘を?」


「うん」


「……」


傘って。


磨くものだっけ。


「じゃあ、また」


「あ……はい」


遙は数歩進んでから。


振り返った。


秀平はまだそこにいた。


目が合う。


ひらひら。


いつものように。


手を振る。


遙も。


小さく手を振り返した。





遙の姿が見えなくなるまで見送ってから。


秀平は研究棟へ向かった。


工学部の研究室。


扉を開ける。


「お疲れー」


「お疲れ」


中にいた友人二人が。


同時にこちらを見た。


「……」


「……」


秀平は嫌な予感がした。


「なに」


「いや?」


「別に?」


「……」


ニヤニヤしている。


「なんだよ」


「秀平ちゃん」


「なに」


「頑張ったねえ」


「……は?」


「見てたぞー」


「……何を」


「腕」


「……」


「つかんだねえ」


「……見てたの?」


「見てた見てた」


「俺たちはお前の恋を応援しています」


「うるさい」


秀平は鞄を机に置いた。


「で?」


「何が」


「何話してたの?」


「別に」


「嘘つけ!」


「教えろ!」


「研究しろよ、お前ら」


秀平は自分の席に座る。


「そういえばさ」


友人の一人が言った。


「遙ちゃんの友達っぽい女の子二人もいたぞ」


「え?」


「俺らと同じように見てた」


「……」


「目合った」


「なんか、お互い分かった」


「何が」


「俺らは秀平ちゃん側」


「向こうは遙ちゃん側」


「……何その陣営」


「知らん」


秀平は呆れながら、パソコンを立ち上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。