↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/46

どこかで会った?

火曜日、2限。


ゼミが終わり昼休みになった。

大学運営のカフェの一角で、金田遥は石田あゆみと川田成美に詰められていた。


「で!? どんな人?」


「同じ学部?」


「何回生?」


「ちょっと待って」


「いつ知り合ったの?」


「だから待ってって!」


次から次へと質問が飛んでくる。


遙は困りながらも、少しずつ秀平のことを話した。


工学部の三回生であること。


金曜日の『情報開発演習Ⅲ』で一緒になったこと。


なぜか最初から、自分のことを知っていたこと。


「でもさ」


成美が首を傾げた。


「その人、なんで金田さんのこと知ってるんだろうね」


「そう。それが私も分からなくて」


「小中高のどこかで一緒だったとか?」


「それはないと思う。出身地が違うし」


遙は少し考える。


「その人は大学の近くで下宿してるみたいだけど、私は実家から通える範囲だから」


「じゃあ、地元が一緒ってわけでもないのか」


「うん」


「前期で授業被ってたとか!」


あゆみが言う。


「でも、お兄ちゃんが工学部なんだけどさ」


「お兄さん、工学部なんだ」

遙はあゆみのことをまた一つ知った。


「うん。工学部って私らと違って、必修で結構ガチガチに時間割組まれてるんだよ。自由に選べるのって、一般教養とか数コマくらいだって言ってた」


「へえ」


「しかもその人、三回生なんでしょ?」


「うん」


「遙……じゃなくて、金田さんは一回生」


「うん」


「学部も学年も違う」


成美が指を折りながら確認する。


「地元も違う」


「うん」


「なのに向こうだけ金田さんのこと知ってる」


「……そう」


三人で黙る。


「……怖くない?」


あゆみが言った。


「ちょっと怖い」


「でも気になるんでしょ?」


「……」


「黙った!」


「うるさい」


二人が笑う。


「金田さん、どこかで会ってないの?」


成美が聞いた。


「どこか……」


「大学じゃなくてさ。オープンキャンパスとか」


「オープンキャンパス……」


記憶を辿ってみる。


けれど。


秀平の顔に結びつく記憶は、やっぱり何も出てこない。


「……分からない」


「向こうはなんて言ってるの?」


「『やっぱ覚えてないか』って」


「え!」


「なにそれ!」


二人が同時に身を乗り出した。


「絶対どっかで会ってるじゃん!」


「そうなんだと思う。でも……覚えてない」


「気になるー!」


「私も気になってる」


「本人に聞けばいいじゃん」


「一回聞こうとしたんだけど、そのときは授業始まっちゃって。その後も……なんか聞けなくて」


「じゃあ連絡先聞いて、メールで聞けば?」


「……」


またそこに戻った。


「だから、その連絡先をまだ聞けてないの」


「ああー!」


「最初に戻った!」


二人が笑う。


遙もつられて笑った。


そのとき。


「あ、ていうかさ」


あゆみが突然言った。


「ん?」


「もう、遙って呼んでいい?」


「……え?」


「だって、なんか金田さんって堅くない?」


「分かる。私らのことも、あゆみと成美って呼んでよ」


成美も笑う。


遙は二人を見る。


「あゆみ……と、成美?」


「そう!」


「呼んでみて」


「今?」


「今!」


「……あゆみ」


「はい!」


「……成美」


「はーい!」


二人が嬉しそうに返事をする。


なんだか。


それだけのことなのに、少し照れくさい。


「私のことも……遙でいいの?」


「いいに決まってんじゃん!」


「じゃあ遙ね!」


「……うん」


三人で顔を見合わせて。


笑った。


——友だち。


今度は。


そう呼んでもいい気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。