黒龍
始まりの町の次の町、トネクス。
大きさ的には始まりの町とほとんど同じくらい……。なのだが、始まりの町では見なかった施設もあった。スキル販売屋とかそういうの。
「まぁ大体は始まりの町と同じだろ。早いところ次の町にいこうぜ」
「そんな急がないでもいいんだよ! エルの実力ならすぐ隣り町いけるし、このエリアも探検してみよーぜっ!」
「探検つっても先人たちがいろいろ発見してんだろ? 探索する旨味ないよ」
「でも天使だったりまだ未発見のことだって山ほどあるんだよね。今一番進んでるギルドでまだ5番目の町だし、私もまだ3町しかいってないし、エルのことだから豪運で何か未発見のもの見つかるかもよ?」
「そんな都合よくいくわけないでしょ」
まぁでも、新たなところを探検するのはありかもしれない。
とりあえず私はモンスターが出る場所に向かう。ここは始まりの平原とは違い、だいぶ荒れている。まるで荒野だ。
枯れ草が地面に放置されていて、地面がむき出しになっていたりする。
「ここはトネクス荒野。平原にはいない魔物しかいないよー」
「ふぅん」
「あと……このエリアからはエリアボスとは違って徘徊する超強いボス、レジェンドエネミーが出るんだよね。それと出会ったら逃げ一択。まず誰一人として勝ったっていう報告がないんだよね」
「へぇ」
レジェンドエネミーか。出会いたくはないな。
私がそう思った瞬間、あたり一面が暗くなる。突然雲が太陽の光を隠す。
「なんだ?」
「言ったそばから……!?」
太陽が完全に隠れ、私たちの近くで何かが羽ばたく音が聞こえた。
ばさ、ばさと翼の音。私は上を向くとそこには、真っ黒なドラゴンが空を飛んでこちらをぎろりと睨んでいた。
ファンタジーの定番といえば定番の魔物。だがしかし、いざ見てみると迫力が段違いである。
漆黒のドラゴンは私たちを見て吼える。
「ひえぇ~~~! ハイドラントドラゴン!」
「これがレジェンドエネミーってやつ?」
「そう! とりあえず攻撃かわしながら逃げるよ!」
「だな。これは勝てねー」
ドラゴンはブレスを吐いてくる。
私はそのブレスを飛んで避ける。全速力で逃げるにしてもどこまで逃げたら無事に帰れるんだろうか。まぁわからないけどテンコのいう通りにしなくちゃならない。
私は空を飛び、とりあえずドラゴンの上に回り込む。
すると、ドラゴンの上に何かを見つけた。ドラゴンの背中に何かが突き刺さっている。剣のような代物だが……。
私はドラゴンの背に降り立ち、とりあえず剣を引っこ抜いてみることにした。
めちゃんこ硬い。だがしかし、徐々に抜けていっている気がする。
私は全力で剣を引っ張ると、すぽんっと剣が抜けたのだった。
「なんだこの黒い剣……。まぁ、もらっとこ」
思わぬ収穫である。
私は黒い剣をイベントリにしまった瞬間、ドラゴンが揺れ、私はそのままバランスを崩して落ち……なかった。
黒いドラゴンが私を咥えて、優しく地面に置いてくれた。
「ギャウ」
「え……?」
「え、エル! 大丈夫……?」
「あ、うん」
「ガウ」
ドラゴンは目を細め、なんだか嬉しそう。
そしてそのまま、ドラゴンは自分を傷つけたかと思うと、鱗と血が落ちてくる。素材として落としてくれたらしい。
「あれ、戦闘になってないの……?」
「う、うん。なんか穏やかになった」
「え、えぇ……?」
「ガウッ!」
《黒龍の加護 を取得しました》
《スキル:黒龍の咆哮 を取得しました》
《スキル:黒龍の波動 を取得しました》
《種族進化先:堕天使 が追加されました》
なんかたくさんアナウンスが聞こえてくる。
「え、エル? 見た目が……」
「あん?」
私の見た目に変化があった。
なんだか左半身から黒いオーラが出ている。右は何ともないが、左だけ変な感じのオーラが。
『なんか左半身闇に染まってて草』
『左が黒い眼になってるしなんかかっこよくなっちゃってんぞ』
私は自分の姿をスクショしてみてみる。
そこにはなんだか中二病を拗らせたような見た目をした私の姿があった。




