転校生
夏休みも終わりを迎える。
9月に入り、新学期。
「今日は転校生がいるぞ。入れ」
と、入ってきたのは。
「お、アルト?」
「エルさん?」
アルトだった。
たしか転校する羽目になったとか言っていた。転校先がここか。
アルトは黒板の前に立ち、自分の名前を黒板に書いていく。
「初めまして。私は勅使河原 愛理と申します。よろしくお願いします」
勅使河原って珍しい名字だな……。私も人のことはあまり言えないが。
アルト……もとい愛理は私の隣の席になるらしい。
「まさかエルさんの学校に転校するとは……」
「世界って狭いね」
「ですね」
朝のホームルームが終わると、愛理の周りに人が集まる。転校生というのはだいぶ珍しいのと、夏休み明けという中途半端な時期の転校に物珍しさを感じているのだろうか。
「笑留〜〜!」
「お、転校生。この学校の名物が来たぞ」
「名物?」
「元天才子役の麗 天子だ。知ってんだろ?」
「そうなんですか? この学校にいるとは……」
「驚きだろ?」
クラスの男子が天子を見て噂している。
「なんの話してんのー?」
「あ、いや、なんでもない……」
「お前が美人だって話だよ」
「やだぁ! 当たり前じゃん!」
「嘘だよ」
「は?」
天子は有原を睨む。
「て、転校生に君のこと教えてただけだよ。天使、ちょっと」
有原は顔を近づけてくる。
「やめろよそんな揶揄いかた! 麗さんから俺のイメージが下がるだろうが」
「へっ」
「こいつ……!」
有原は千円を机の上に置く。
「嘘だよ天子。この学校には元子役の天子がいるって話してただけだよ」
「ほえー」
「現金なやつ……」
「お金でどうにかしようとする奴に言われたくないですけども」
「ちゃっかり受け取ってんじゃねぇか」
「だからきちんと説明してあげたデショ」
私は財布にお金をしまう。
まぁ千円もらったお返しはしておこう。
「天子さんや」
「なぁーにぃー」
「有原が握手してほしいんだって」
「えっ……」
「ん」
天子が手を差し出してくる。
有原は恥ずかしそうに手を握っていた。
「んもー。握手はタダじゃないんだぞー」
「はいはい。なんか奢ってあげるからよ」
「ふふん。じゃ、また昼休み!」
天子は上機嫌で走っていく。
「……天使ありがとう」
「おうよ」
有原は自分の手を眺めて席に戻っていく。
「エルさんのお友達なんですか?」
「まー、そんなとこ」
「すごい……!」
愛理は羨望の眼差しで見つめてくる。
「私、"ドギマギ交響曲"のドラマが好きで……!」
「あー、たしか天子出てたっけ」
ドギマギ交響曲、バツイチの女性と堅物の男性が付き合う恋愛ドラマ。
天子はバツイチヒロインの連れ子役での出演。天子が演じる美衣子の悲痛の叫びが話題になっていた。
「ならゲームで私たちのギルドに入る? いるよアレ」
「いいんですか!? ぜひお願いしたいです!」
「うむ。よかろう」
やっぱり天子って人気なんだなぁ……。




