セルリアンの運命
セルリアンと駅前で待ち合わせ。
せっかくの花火大会ということで天子が浴衣を着せてこようとしたが拒否した。
なんというか、私は浴衣は動きづらくて嫌い。私がセルリアンを待っていると。
「おー、天使。お前も花火大会にいくのか?」
「おー、吉田」
吉田が友達と花火大会に向かうようだ。
「花火大会いくの?」
「そーだよ。こいつが彼女のために席取ったのに彼女がいけなくなったからって誘ったきたんだよ」
「ふぅん。大変だね」
「天使も花火大会に?」
「そ。友達が一緒に観ようってさ」
「ほぉ。でもいいのか? 早くしないと席なくなるぞ?」
「んー、まぁ大丈夫っしょ」
セルリアンのことだからきっとS席みたいな場所は取ってあるのだろう。
クラスメイトの吉田たちが花火大会の会場に向かうわと去って行った瞬間、目の前に黒い車が停り、セルリアンが窓から顔を覗かせてくる。
「運命の人っ! ぜひお乗りください!」
「え、こっから会場向かうんじゃないの?」
「え?」
「え?」
ここから会場は車で行くまでもないぐらいの距離だ。それに車が停められる場所なんてあるのだろうか。
私は疑問に思いながら車に乗り込むと、到着しましたと告げられる。そして、降りた先にはマンションが建っている。
「…………??」
「人混みの中で花火を見るなんてそんな……。夏の夜は外には虫もおりますしね。ささ、どうぞどうぞ」
マンションのオートロックを解除するセルリアン。
そして、通された部屋は花火大会の会場がよく見えるマンションの個室。
「…………えっと、ここはセルリアンの家?」
「まさか! ここは運命の人と花火を観覧するために借りたんです!」
金持ち怖い。花火を見るためだけに部屋を借りやがった。
ちょっと私の理解の範疇を越えるっていうか……。これできる金持ちってやっぱすげーとか……。
「お飲み物もありますよ。何がよろしいですか?」
「え、あ、オレンジジュースで……」
「かしこまりました」
するとキッチンの方でシェフがオレンジを絞っている。目の前で調理。まさかの果汁100%すぎるオレンジジュース。
シェフの人は料理も作っていたようで、私の前に今まで食べたことのないような綺麗な料理が運ばれてきた。
「……そろそろ始まるみたいです!」
「う、うん」
料理を一口食べてみたいが……。
「作法は気にせずとも大丈夫ですよ。ここには私と運命の人しかおりません」
「シェフいるけどいない扱いなん?」
「ささ、どうぞどうぞ!」
「い、いただきます」
口に料理を運んだ瞬間、窓の外から花火が聞こえてくる。打ち上げ花火は下からじゃなく横から見るというなんとも貴重すぎる体験。
食べ物は美味しいし、花火は綺麗だし思い出には間違いなく残るが……。もう全てに呆気に取られてしまっている。
「……お気に召しませんでしたでしょうか?」
「あ、いや……。ちょっとビビっただけ! 楽しいよ。料理も美味しいし」
「あ……すいません。慣れないですよね……」
「はは……」
花火が打ち上がる。
「アルフロとかでも花火観られたら私はそちらでも良かったのですが……」
「まぁ……こういうのは体験だから私はこれでもいいよ。うん、私のためにしてくれたんだから嬉しいさ」
「……っ! 運命の人っ!」
外に打ち上がる花火はとても綺麗だ。
私もこういう家をぽんっと借りれたらなぁ。この部屋は今だけの体験。しっかりと目に焼き付けておこう。
「とても綺麗です、ね。花火はやはり日本の風物詩です」
「……セルリアンって日本に来てからどれくらい経つの?」
「私は生まれも育ちも日本ですよ?」
「そーなの?」
「私のお母様が日本のアニメが好きでこの地にやってきたのです。そこでお父様と出会い結ばれ、私が生まれたんですよ」
「の割には顔に日本人の血を感じないような」
「父もイギリス人ですから。父も母と同じような形で日本に在住し、アニメの話題で盛り上がったみたいです。イギリス人が日本で出会い日本で結婚して日本で子供を産んだんです」
なんつー運命だよ。
両親はイギリス人で生まれも育ちは日本。すごい運命的な出生すぎるだろ。
「私も父や母と同じ運命を感じるんです。あなたにっ! 私はあなたに救われたんです!」
「救われた?」
「私は鬱になってたんです。周りからの期待、学友との交友、全てが嫌で引きこもってました。動画投稿サイトを漁って配信者や動画を見続けてました。そしてあなたに出会ったんです。楽しそうにアルフロをプレイなさるお姿……。私もそれからアルフロを始めてみて、楽しいと心の底から笑えるようになったんです。なのであなたは私の恩人であり、運命の人なのです」
……人に理由あり。
いや、そんな重い理由だったの?
「あなたに運命を感じてから私は人生ハッピー! 順風満帆! あー素晴らしい! 運命って素晴らしい! 運命の人もそう思いますわよね!?」
私の手を握り締めてそう語るセルリアン。
まぁ、なんだ。
「君が助かったんなら運命と言っても差し支えないか。素晴らしいね」
「ですよね!」
私でも誰かの救いになれるんだ……。
ブクマしていただいてる数が思っていたより多くて嬉しいんだよォー!




