ブリのおさしみ
必殺技もそうだが、私にはまだまだ問題点は山積みだ。それこそ防具である。
武器は職業適正のある弓ではないとはいえど黒剣を手に入れたし、しばらくは良いとしても、防具は以前初期装備だ。
回避すれば問題ないとは言え限度というものがある。防具も少し考えた方がいい……。
「テンコはその防具どこに頼んだの?」
「え? あー、私は防具屋で買ったものなんだ〜。生産ギルド、行きたいんだけど受けてくれるかどうかはその人次第だからさ……。敷居がちょーっと高いんだよね……」
「なるほど。でも人の手で作った方がクオリティはいいんでしょ? 行こうよ」
「そーだね。エルもいるしいこー!」
だがどこの防具屋にするかである。
この前アシュリーが挙げていた真夏のアバンチュール。そこでもいいんだけどどこにあるか知らないし……。
「…………なんか視界の端に意気揚々と自分を指さしてる女の子が見えた」
「あ、気のせいじゃなかったんだ」
「……さっきの会話聞いてたりします?」
私がそう話しかけると。
「もちろん。しかとこの耳でよーーーく聞いておりましたとも。お嬢さん方、腕のいい鍛治師はいらねぇかい?」
「あ、この人は……!」
「おやァ? そちらの人……テンコさんはあたいのこと知ってるみたいだねぃ?」
「ブリのおさしみさん!」
「そう! あたいはブリのおさしみ! ちなみに名前の由来はゲーム始める前に食べてた晩御飯だよ」
良いもの食べてるな……。
テンコが知っているということはこのゲームでもある程度の有名人ではあるわけだ。
「さすらいの鍛治師って噂でね! Sランククオリティを簡単に作るの!」
「ほぇー。腕はいいんだ」
「失礼だねチミは。こういうモノづくりは昔から大好きでねェ! どうだい? あたいを一つ、仲間に入れてくれちゃあしねェか?」
「仲間?」
「ギルドだよ。あたいとお前ら二人で建てるのさ。ギルドを建てる最低人数は3人。あたいは二人組が来るのを待ってたのさ……」
な、なるほど。二人組を誘ってギルドに……。
しかも自分の職業は鍛治師だからギルドに一人はいて欲しいだろうと踏んで……。
意外と策士だなこの人。
「どうでい? あたいはお前さんも知っとるよ。元天才子役で現在は配信者の麗 天子だろ? そんな有名人と一緒のギルドなんか願ったり叶ったりだぜ!」
「……どーする?」
「どーするって言われても……。決めるのはリーダーのテンコだぞ」
「私いつリーダーになったの?」
「今さっき」
テンコはむむむと頭を悩ませていた。
「ブリのおさしみさんはさすらいの鍛治師だったよね? 今まで一匹狼だったのになんで?」
「そりゃさすらってた方がかっけぇからな。なんで今さらかと言やぁ……。そろそろあたいも世帯を作る時が来たと思ってね……」
「私と一緒で願ったり叶ったりって有名になりたいの?」
「あたぼうよ! 元よりあたいは承認欲求のために鍛治師として腕を磨いてきたからな!」
承認欲求の化け物……。まあ動機がなんであれそこまで有名になる程洗練されてるのは素直に凄いが。
「まぁ……いいよ。私たちも防具欲しいし……」
「交渉成立。じゃあギルドの拠点を買おうぜ! あたいが払ってやらぁ!」
「お、太っ腹!」
「よせやい。持ちつ持たれつだろぃ」
ブリのおさしみが仲間に加わった。




