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婚約破棄の原因となってしまった令息  作者: えとう蜜夏


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十一 学園の卒業式

 婚約式の四日後、僕らは学園の卒業式を迎えた。

 総代はザネンザ王子殿下ではなく、メリアーナ公爵令嬢が立派に答辞を述べ、最優秀をいただいていた。

 ザネンザ王子殿下は特別枠ということで言葉を述べていたが相変わらず何を言っているのか分からないまま終わった。それから直ぐに会場を退出したので話す機会はなかった。

 それから、あの男爵令嬢の姿はどこにもなかった。

 誰かから、彼女は卒業前にどこかに輿入れしたとか修道院に行ったとかいろいろと噂していた。 

 だけどメリアーナ公爵令嬢がそのことについて僕に話すことはなかった。

 僕の級友たちは下位貴族が多かったので、婚約式の後、ミローネ公爵家ご令嬢と僕が婚約したという公示があっても、信じていなかったようだ。式に出てないから分からないだろうし。

 こうしてメリアーナ公爵令嬢の隣で並んでいると彼らは遠巻きに僕を見遣っていたので、メリアーナ公爵令嬢に断って彼らに近づいて話しかけた。

「皆。お互い卒業おめでとう! 今までありがとう」

「お前……、いや、バルモア伯爵家令息殿。この度はご婚約なされたことをお祝い申し上げ……」

「いいよ。公の場以外はそんなに畏まらなくてもさぁ。」

 俺がいつもの口調で彼らの背中を叩いた。すると彼らが情けなさそうな声を上げた。

「ラスティ! お前、心配したんだぞ! あれからどうなったのかって……」

 彼らからの非難の言葉に僕はただひたすら謝った。

「皆にはごめん! 本当にごめん!」

 一応何人かには手紙で事の顛末は知らせておいたけれど。

「本当に……、寮から急に出て行って、もしかして王家に拉致されたとか考えたんだぞ」

 おいおいと仲間の中から泣く奴もいた。

 そんなこと言われたら、ちょっとこっちも熱いものが目元にくるじゃねえかっ。

「本当にごめん」

「で、公爵令嬢とはどうなんだ? と聞かないでも大丈夫そうだよな。なんたって、あの時熱烈な恋の歌を歌い上げて……」

「わわわ! それは言うなって!」

 僕は級友があの時の歌を歌いそうになったので口を塞いだ。

 それから別れを惜しんで、メリアーナ公爵令嬢のもとに戻った。

 彼女も数人の貴族令嬢と楽しそうに話していた。

 僕が戻るとそれぞれに挨拶をして公爵家に戻るために馬車に乗った。

「ふふっ。楽しそうでしたわね」

「ええ、気のいい奴らばかりです」

「もし、ラスティ様がよろしければ、うちにもお呼びになればいいわ」

「そうですか! お許しいただいて、ぜひ機会があれば……」

 でも、それぞれ、職場とか家業に就いてしまったから、またいつかになるな。

 その時、僕は水だけにしよう。そう固く胸に誓った。

「あの時の方々にはお世話になったもの」

「えっ! 覚えてらっしゃったのですか?」

「ふふっ。だって、あの方々はラスティ様を庇って、いろいろと助けてくださったのよ。ラスティ様はザネンザ王子に縋っていたから……」

 メリアーナ公爵令嬢はあの時の王子との事も思い出したのか、少し身震いをされたので、慌てて僕は上着を脱いで彼女に被せた。彼女は驚いて僕を見た。

「いや、その。あいつらはあの時のことを覚えていたみたいで、その、僕のあの時の歌まで覚えていて歌って……」

「まあ。うふふ」

 ちなみに僕は覚えていません。

「メリアーナ公爵令嬢のその気高き美しさ、艶やかな夜色の髪、夜空の星のようにまたたく瞳、僕はあなたを……」

 彼女が覚えていたところを口ずさんでいた。

 まさか級友みたく、その口を手で覆う訳にもいかず僕は冷や汗たらたらだった。

 恥ずかしいやら、恥ずかしいやらで、もういたたまれない。

「恥ずかしいので、その辺で……、おやめ下さい」

「あら? どうして? もっと聞きたかったわ。だってわたくしを賛美してくださる歌なんて初めてでしたもの」

 平々凡々の元子爵三男の僕から見ればあの高嶺の、高嶺の麗しい憧れの公爵令嬢から頬を染めてキラキラした瞳で見つめられていた。

 どうする!?

 理性はほぼない。擦り切れた。

 僕はついぎゅっと彼女を抱き締めてしまった。

 馬車の中は揺れていたけどそんなことは気にならなかった。

 メリアーナ公爵令嬢も最初は戸惑っていたけれど僕に身を預けてくれた。

 もう僕の馬鹿な頭は舞い上がったね。

 あの時の誕生会どころじゃないよ。

 てっぺんを越えたね!

 僕の心臓はバクバクしすぎて痛くなってきた。

 気がついたら彼女は僕の方を見上げていて、至近距離すぎた。

 彼女の艶やかな唇が目に入り……。


 気が付けば公爵家のフットマンが公爵家に着いたことを外から知らせてくれた。いつの間にか馬車の揺れも止まっていた。

 僕と彼女はさっと体を離した。

 うん。このことは二人の内緒で。


 彼女はやや頬を赤くさせて夢見がちのような瞳でとても可愛かった。

 やや唇も腫れてプルプルになっていたような気もしたけど気のせいだ。

 僕もハンカチで自分の口元を拭った。少し紅が付いていたようだが問題ない。

 馬車から邸内へと向かったが、彼女は馬車の階段を踏み外しそうだったので僕は慌てて抱きかかえて、部屋まで行ったよ。

 それだけだよ。だって、公爵閣下にご報告もしなければならないし。

 今までだって、二人きりのシチュエーションなんてなかった。

 あの馬車の中が奇跡的に二人きりだったんだよ。

 公爵家に婿修行に来て二人きりなんてほぼ無かったからね。

お読みいただきありがとうございます。

なんとか今回は最後まで走り切れそうです。ほっ(@_@。

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