ep.92
火山の上と言っても竜王の加護板があるからこそ熱さを感じないんだろう。
次からは直で行ける訳だが。
そんなこと思っていると、謁見広場の近くに戻ってきていた。
今度は飛び降りたりせずに、尻尾からゆっくりと降りていく。
「ふぅ……久しぶりの飛行ってのも悪くねぇもんだ」
『お疲れ、リンコニ』
「この程度じゃ疲れねぇって。んじゃ戻ってきて早速だが、行くとするか」
「街は近いのか?」
「向こうにある扉を抜けたらすぐそこだ。まっ、この謁見広場が広すぎるから少し歩くんだがな」
降りた所は真ん中辺りだが、それでも距離があるな。
「にしても街か。どういう感じなんだろうな」
「洞窟みたいなのがいっぱいあってそこに住んでるんですよ!」
「岩をくり抜いた家がいっぱいあると思う」
「まだまだですわねぇ。きっと普通の家みたいなのがいっぱいでしてよ?」
どれもピンと来そうでこないな……
リンコニはニヤニヤしてるし。
『そういえば私も行ったことないんだよね』
「え、そうなのか?」
「その頃はまだ街なんぞなかったからな。だいぶ後になってからようやく街を作ってなぁ……大変だったんだぜ?」
しみじみと言うリンコニ。
色々あったんだろうな。
そんなことを話していると、扉は目の前だった。
玉座の横にあったのか……試練の時は全く気づかなかったが。
「さっ、扉を開けてみろ。すげぇもんが見れるぞ?」
「パパ、一緒に開けよ」
「お父さん、一緒に開けましょう!」
「分かった、分かったから引っ張るな」
リルナとレルナに引っ張られ扉を押していく。
開いた先に見えた景色は
「おー……おお?」
「家と洞窟と」
「岩でいっぱいですね……」
予想は全部当たりだったみたいだな。
リンコニがニヤニヤしてたのはそういうことか。
「どうだ、俺様の街は?」
「街か……これ?」
「あの家あるだろ? あれが店だ」
「……洞窟は?」
「竜の家だな」
「岩」
「家だな」
ほぼ全部が家じゃねぇか!
店なんて2つくらいしかねぇぞ!
「もう少し……こう、増やした方がいいぞ」
「だろうな。ということで、ミウと道化は借りていくぞ」
「あ、ちょっ! ボク行きたいところが!」
『あーれー』
2人は引きずられて行ったが……ミウロゥはどこか楽しそうだな?
「パパ、リルナ達も行っていい?」
「いいが……大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。レルナ、いこ」
「あ、ちょ! お父さん、行ってきます! リルナ、待ってくださいよ!」
先に行ったリルナを追いかけてレルナが走っていく。
残ったのは俺とエルナ。
「あら、偶然にも2人きりですわね」
「ホントにな」
「ではお父様、私とデートでもいかがかしら?」
手を差し出されたので、その手を取る。
普通逆じゃないか?
「エスコートなんて上品なもんはできないぞ?」
「お父様と歩けるのであれば火山だって赤い花が咲き乱れる絨毯に様変わりしますわ」
「どういうことだよ……」
クスクス笑ってないで説明してくれ……
「とりあえず行くとするか」
「足元にはお気をつけくださいね、お父様?」
そう言って腕を組んでくるエルナ。
……歩きにくくないのならそれでいいが……
「にしてもホントに岩と洞窟だらけだな」
「竜の住処ですもの。人とはまた違いましてよ?」
「それもそうか」
種族が変われば住む場所も食うものも変わるか。
……溶岩魚は二度とゴメンだが……
今回もお読みいただきましてありがとうございます。
次回、デート。




