ep.82
「あれは一体……」
「ふぅ、危ないところだったな。流石はミウだ」
『ふふん。あれくらいならなんとかなるよ』
「ちょっと〜? ボクもなんとかしたよねぇ?」
「お前が邪魔をしなければもう少し奥に押せていたものを……」
【魔王ディモニの屋敷】
〘地底世界の王、ディモニが暮らす屋敷。生半可な実力ではそもそも近寄ることすら不可能〙
魔王ディモニの住む屋敷は今いるエントランスからして広かった。
ここでダンスパーティーでも開くつもりか?
「随分と騒がしいと思えば……これまた久しいお客様ですね」
急に声が聞こえてバッと振り向くとそこには執事が立っていた。
髪は真っ白で、ヤギの角が両方の側頭部に生えている。
執事の羊?
「よっ、ラドバー。久しぶりだな」
「リンコニ様、どうなさいましたか? 急な来訪とは言えこのように大勢、で……貴女様は……」
「あー……やっほー? 久しぶり……」
クランがどこか言い淀んでリンコニの背中に隠れようとしている。
何やってるんだ?
「……そうですか……魔王様、クラウン様がお戻りになられました」
「見ている。少し待っていろ」
執事が虚空に声をかけると、虚空からもまた声が帰ってきた。
どんな仕組みなんだ?
「そちらにおられるお方はお初ですね。私、執事のラドバーと申します」
「リベットだ。大人数で邪魔して悪いな」
「いえいえ、この地底世界を訪れる異界人の方は貴方が初ですので……どのようなお食事をご希望されます?」
「食えるもんならなんでもいいんだが……」
ラドバーがずずずいっと俺に近寄ってそんなことを聞いてくる。
「随分と久しぶりだな、リンコニ。お前がこちらに来るなどとは珍しいこともあったものだ」
「そこにいるリベットの頼みでなぁ。でなけりゃわざわざくるかよ」
「ほう……」
いつの間にか俺の傍には男が立っていた。
黒のマントで全身を包み、黒い髪に鋭い目をした男が。
「ふむ……途中から見ていたが、お前が異界人か」
「そう、だ?」
「なぜ疑問を浮かべる必要がある。魂を見ればわかること。地上にいる者の魂ではない、ならばここ数年地上を賑やかしている異界人の他あるまい」
魔王は魂まで見れるのか。
「お前、名をなんという」
「リベット、異界人のリベットだ」
「リベット……その名覚えたぞ。さて、ミウロゥよ。なぜこの地底世界を訪れた?」
『ディーに会いに来た』
左手でブイサインを作り出すミウロゥ。
そうじゃなくて俺をここから助けて……
「そのためにわざわざリンコニまで使ってか」
「ソイツは強ぇぞ、ディモニ。なんせこの俺様をぶっ倒したからな!」
「ほう。その話詳しく聞かせてもらおうか。ラドバー、食事の用意をしろ。客人用で構わん」
「かしこまりました、魔王様」
俺の肩を離さないまま魔王ディモニは歩いていく。
クランはリンコニの後ろから出てこないし、ミウロゥも助けようとしてくれないし……
誰か助けて……
今回もお読みいただきましてありがとうございます。
まおう が あらわれた
りべっと は たすけ を もとめた !
まおう は はなれない !
だれ も たすけようと しない !




