ep.78
今回も三人称視点になります。
ご注意ください。
あと少しだけ長いです。
途端辺り一帯が暗くなる。
完全な暗闇となった謁見広場の真ん中にどこからともなくスポットライトが照らされる。
「レディースアンドジェントルマン。ようこそ、私のショーへ」
コツ、コツ、と音を立てながら1人の女性がスポットライトの真ん中目指して歩いていく。
「此度お送りいたしますは竜の輪切り、失礼。竜の体を3分割し、無事に元通りにしてみせましょう。ですが、それには助手が1人必要となりますね」
スポットライトの真ん中に立った女性は、どこか雰囲気がクランと似通っている。
リルナとレルナがそのまま成長したらそうなるだろうと思われる顔立ちに、黒のシルクハット、黒の燕尾服、黒いズボン。
右目が赤色で、左目は青色のオッドアイをした女性はリベットへと向き合うとお辞儀をする。
「この姿では初めまして、お父様。私はジョーカー。貴方の娘、リルナとレルナが1つになった姿でございます」
「なんて呼べばいい?」
「お父様のお好きに。ジョーカーでもよろしくてよ?」
「いいや、お前の名前はもう決めてある」
差し伸ばされた手を掴みながらリベットはスポットライトの下へと進んでいく。
「いつかそんな時が来たらと考えていた名前だ。気に入らなかったら拒絶してくれてもいい」
「まぁ、お父様から頂くものに対して文句をつけるなど……そのような恐れ多いことできませんわ。それで……どのような名前なのでしょう?」
スポットライトの下で、2人の距離が少しずつ近づいていき、ついには密着する寸前まで近づいていく。
「エルナ。それがお前の名前だ」
「……とても、そう、とても素敵な名前をいただきました。これより、私はエルナと名乗りましょう」
エルナはシルクハットのツバを掴み少し顔を隠そうとしながらそう言う。
「で、あの竜の王様をどう3分割するんだ?」
『そうだそうだ。この姿勢も少し辛くなってきたのだが?』
「あら、お待たせしたようで。では、お父様? 先程キングから貰ったあの種を使ってくださいな?」
「それはいいが……ただただ普通に使ったら面白くないよな?」
「ええ、その通りですわ。でしたらやることは1つですわね」
「あぁ、やることは1つだ」
互いに顔を見合せ1度頷くと竜王へと同時に顔を向けた。
互いにソックリなニヤリと笑った顔を。
「「何事も面白おかしく!」」
その様子に竜王が訝しんでいると、
「合わせろよ、エルナ? 『種よ、生長しろ!』」
リベットは空中へと種を投げてステッキを頭上高く掲げる。
「もちろんですわ、お父様」
エルナはリベットが種を投げたのを確認したあと竜王に向けて腕を真っ直ぐ伸ばし、指を1度鳴らした。
『む?』
「さぁて、3分割だったな。ならコイツでどうだ?」
気づけば宙高くに三日月が浮かび上がっていた。
そこには確かに天井があったはずなのに、星々が輝く満点の夜空と淡く光る三日月が浮かんでいた。
「お前の名前は……なるほどな。『咲き誇れ三日月花。あのデカイやつを切り刻め!』」
リベットの前にウィンドウが現れ、サッと目を通していく。
夜空に咲く三日月の花の名を呼んだその時、途端に三日月が光り出し、回転を始める。
回転数はみるみるうちに上がり、まるで満月のように見えてくる。
そして、ゆっくりと回転が遅れ始め、また元の三日月へと戻った。
『ヌハハハ、何をするのかと思えばただただ回っただけではないか! ヌハハハハ!』
「本当にそう思うのか?」
「ご自分の身体をご覧下さいな」
『何も変わって……俺様の身体があちこちに!?』
気づけば竜王の体は箱に納まっており、空中に頭だけがでている箱、胴体らしき場所に納まっている箱、箱の中から出ている尻尾、と3つに分かれていた。
「ちなみにこのままでは貴方の身体はバラバラになってしまいますわ」
『ヌガァ! 早く元に戻せ!』
「でしたら、交渉といきましょう」
『こ、交渉だと!?』
「私達の目的を叶えることを約束してくださいな。そうすれば貴方の身体は元に戻して差し上げましょう」
『グヌヌヌ……分かった、話を聞いてやる。まずは元に戻すのだ!』
「いいですわよ」
エルナが指を再度鳴らすと箱はゆっくりと縦へと並び、そして消滅していった。
後に残ったのはツタと光の輪で拘束されている竜王だけだった。
『ヌハハハ! 話は聞いてやろう、話は!』
「あら約束が違いますわね」
『誰も叶えるとは言っておらん! さぁ、貴様らの目的を叶えたくば俺様を倒してみせろ!』
「それは結構なのですが……私ばかりに注目していてよろしいので?」
『ヌゥ?』
竜王が目を細める。
さっきまでスポットライトに当たっていたはずのリベットの姿が見当たらない。
『リベットはどこに……』
「ここだよ、ここ」
バッと顔を上げるとはるか上空にリベットが立っていて竜王を見下ろしていた。
『な、なんだと! いつの間にそこへ!?』
「さぁ? それは自分で考えてくれよ」
リベットはシルクハットへと手を伸ばし、竜王へ向けて何度かシルクハットを上下に振り始めた。
『な、何をしておる……』
「俺さ、実は頭の天辺から足の爪先まで筋肉がミッチリ詰まってるヤツからある物を貰ったんだよな」
『ま、まさか……』
「でもよぉ、使い道ないしさぁ……今ここで使ってやろうかなって」
『ま、待て! 話せばわかる……ッ! 流石の俺様もそんなものを頭の上に落とされてはタダではすまん!』
身動きが取れないため言葉だけで命乞いを始める竜王。
その様子を眺めていたリベットは、
「……まぁ、そうだよな。流石にこんなにデカくて重いもん落とされたら流石に、なぁ?」
『そ、そうだ! そうだとも!』
「でもさぁ」
そこでシルクハットを被り直し、足を1歩前へ踏み出すリベット。
足から地面へ向けて落下を始めるも、
「エルナはどう思うだろうなぁ?」
「ストンと落とせば宜しくてよ」
少し落下したところでエルナがリベットを抱き寄せるようにして立っていた。
しかし、片手でシルクハットを掴んで上下に振っている。
『ま、まままままて! さ、さっきのは言葉の綾というかなんというか……!』
「ではおやすみなさいませ、竜王」
『そんなことをしちゃいかんとおそわらながッ』
まるで鐘を突いたかのような重く低い音が鳴り響き渡ると、ついに竜王は地へと伏したのであった。
「あら、私の創造主はあの外道ですわよ? むしろ推奨する側でしてよ」
今回もお読みいただきましてありがとうございます。
イッツイリュージョン!
あの時貰ったアダマンタイトの棍棒の唯一の使い道。
だって重すぎて持てないんだもの。
エルナの詠唱がないのは詠唱短縮した結果です。
「箱を出すだけなら指を1度鳴らすだけでいいですもの。あとはお父様が何とかしてくれると信じておりますし」
とのことです。




