ep.76
「人族?」
「コイツらも元は竜だ。こっちの方が楽だというもんでな、させたいようにさせてるまでよ」
ほー……それを知らなかったら人族のメイドにしか見えないな。
そんなことを思っているうちにあっという間にテーブルと椅子が現れて、食事まで運んでいた。
「まぁ座れや。少なくとも街では食べられないような料理だぞ?」
「それじゃお言葉に甘えて」
適当な席に座ると左隣にリルナが右隣にレルナがまず座り、俺の正面にクランとミウロゥ、上座に竜王が座った。
目の前には既に料理が並べられていて、まず目に入ったのが
「赤いスープ……」
「クックックッ、まずは口に含んでみろ」
言われるがままにスプーンで掬い口へ運ぶ。
辛いのかと思えばピリッとくる程度の辛さで、熱すぎるのかと思えば程よい熱さで、それでいてどこかで食べたことのあるような味わいは
「なるほど、トマトのスープか」
「溶岩トマトという種類でな、その名の通り溶岩をぶっかけることで育つトマトだ」
「恐ろしいトマトがあったもんだ」
そんな恐ろしい名前のトマトで作られたスープだが、非常に美味しい。
気づけば空になっていたので、種でもくれないだろうか……
「さて、次は魚だ」
「これも随分と赤いな」
まさか頭付きで出てくるとは思わなかったが、その身は非常に真っ赤だった。
これも溶岩で泳いでいるとか言わないよな?
「安心しろ、コイツは溶岩では泳がん」
「ならどこで……」
「地中を泳ぎ、溶岩を飲水にして生きる。その名を地炎魚という」
火山にある植物も動物もとんでもないのしかないな。
それはさておき、味は……
「かっっっっ!」
滅茶苦茶辛いじゃねぇか!
み、水!
「はい、お父様!」
「んぐはぁ! た、助かった……ありがとうリルナ」
「いつでも申し付けください、お父様」
「そんなに辛くないのです?」
マジか……そう言いながら、レルナは特に辛さを感じないのかかなり速いペースで食べ進めていた。
「クックックッ……あの賢者のガキも同じ顔をしてやがったな……クックッ」
「……分かってて出しやがったな、この野郎」
「もちろんだ。俺様達は今日初めて会ったのだ、何が好みなど分かるはずもない。だが安心しろ、次からはマトモだ」
魚が載った皿は下げられ、代わりにステーキの載った皿がでてきた。
「ボルケーノカウのステーキだ。火山にしか棲息しない牛でな、コイツもまた溶岩を飲水にし岩を食って生きておるのだ」
「火山っておっかないな……」
とりあえず1口……ッ!
「う、美味い……!」
「美味しいです……ッ!」
「これは……プロテージャーといい勝負なのです!」
「ほう、あの護りの獣を食ったのか。あれもさぞかし美味かっただろう」
口に入れ咀嚼すると、絶妙な歯ごたえを感じ肉汁が飛び出す。
凝縮された旨みが口の中を駆け巡る。
脂も入ってはいるだろうが、それもまたアクセントとなり、肉汁の邪魔をするどころか、更に肉の旨味を引き出させている。
つまりは、美味い。
「帰りに土産でも用意させよう。その顔を見れば気に入ったのが丸わかりよ」
「それはありがたい。しばらくこの味を忘れられなさそうだ」
ゲームの中だと言うのにこんなに美味い料理を食べて大丈夫なのだろうか……
あっちに戻った時、味がしなさそうだ。
「さて、腹ごしらえも終わったことだ。試練を始めるとしようか」
「その内容は?」
「俺様を倒してみろ。だが、そうだな……うむ、俺様は一切手を出さない。それと、道化! お前は手を出すなよ? ミウ、分かってるな?」
「へいへーい」
『分かってる。私が見ておくから』
なるほど、俺の植物魔法とトランプの兵士達、それにリルナとレルナで何とかしろって訳だ。
面白いじゃないか。
「さてそれでは」
突風が巻き起こり、さっきまでそこに居たはずの竜王は
『始めるとしようか。俺様はそう簡単に倒されんぞ?』
元の姿に戻り、
「いくぞ、リルナ、レルナ!」
「「はい、お父様」」
俺たちは、トランプを、ステッキを、それぞれ構える。
『さぁ、こい!』
今回もお読みいただきましてありがとうございます。
俺たちの旅はこれからだ!
次回、vs竜王。




