ep.29
「お、おお……リベット兄さんもついに子持ちか……」
「違うからな」
「分かってるよー。名前は……リルナちゃんとレルナちゃん……ね」
「名前……見えるのか?」
俺がそう言うとサリアは信じられないような顔をする。
「兄さんマジで言ってるの?」
「マジもマジ。大マジだ」
「えー? 冒険者ギルドで最初に教わることだよ?」
「そこのミウロゥに巻き込まれてな。ギルドで証を作った後は月光の森に一直線だ」
「嘘っ!? あの森は初心者にはだいぶ厳しいのに!」
だろうな。少なくとも初心者が相手をするようなボスじゃないしな。
『そこは私が頑張った』
「いやまぁ、確かにそうだが……」
「そんなに強いの?」
「世界を救うくらいには強いらしいぞ」
ブイサインをするミウロゥを信じられないという表情で見つめるサリア。
いやまぁ、気持ちはわかるが。
「ま、まぁそれはいいとして……じゃあ兄さん色々知らないんだ」
「まぁほぼ知らないな」
「んー……アタシだけじゃ手に負えないから……ちょっと待ってね」
そう言ってウィンドウを操作し始めるサリア。
何をするかはさっぱり分からんが……とりあえずなにか注文するか。
「3人は何が食べたい」
「お父様、私たちはこの柔らかそうなほっとけーきを食べてみたいです」
「お父様、私たちはこのとても甘そうなほっとけーきを食べてみたいです」
「「そしてお父様と一緒に食べたいです」」
『んー、私はこのぷりんで』
店員を呼べばほんの少し待つだけで届いた。
仮想現実ってすげぇな……
「これがほっとけーきですか、お父様」
「随分と丸いのですね、お父様」
「「とても美味しそうですよ、お父様」」
「温かいうちに食べちまえ。美味いぞ」
恐る恐ると言った感じで2人同時にフォークを突き刺す。
切ってないからもちろんそのままホットケーキはダランとなってしまう。
アタフタする2人に少し笑ってしまうが、
「ほれ貸してみろ」
2人のフォークを手に取って、まずは皿に戻す。
付いてきたナイフで1口くらいに切り分ける。
「ほい、あーん」
フォークでリルナの口元に持っていく。
口を大きく開けたリルナにホットケーキを入れる。
「ほ、ほいしいれす、おほうはま!」
「り、リルナだけずるいのです、お父様! 私たちにもしてほしいのです!」
「わかってるわかってる。ほれレルナ」
レルナにも同じようにホットケーキを差し出す。
2人して美味しそうに食べているのを見ると少しホッコリする。
「やっぱり娘じゃん」
「違うと言っているだろ」
ニヤニヤとした顔でこっちを見ているサリナは知らん。
自分もやってもらえばよかったという顔をしているミウロゥはもっと知らん。
既に無くなってるじゃねぇか。
今回もお読みいただきましてありがとうございます。
周りから見ればただのお揃い家族にしか見えない。




