ep.27
『着いたよ。まだやってて良かった』
「服飾クレイダン?」
ショーウィンドウには服を着せたマネキンが置いてある感じからして服屋なのは分かるが、
「ホントにここか?」
『間違いないよ、ささ入ろう』
「お、おう」
扉を開けるとカランカランとベルが鳴り響く。
店の中はそこそこの広さで、壁際には一定間隔でマネキンが置いてあった。
「あら、お客様? いらっしゃいませ」
「ウチは服屋だよ。生憎と食べる物は置いてないんだ」
店の奥からそんな声が聞こえてきて、そっちを見るとカウンターの向こう側に少女と女性がこちらを見ていた。
『あれ? ベストーリオのおじいちゃんは?』
「ベスおじいさんの知り合い? おじいさんならしばらく前に亡くなったよ」
「私たちが彼の跡を継いだのよ」
『そう……』
顔見知りが亡くなってたら悲しくなるわな。
とりあえずそっとしておくか。
「見ての通りボロボロでな。少し見繕って欲しい」
「確かにボロボロだね。それにその服……初心者さんかな?」
「多分始めたてね。私たちもプレイヤーなのよ」
おお、ここにきて初めて俺と同じプレイヤーと会えた。
遠くから見たことはあったが、話すのは初めてだから新鮮だな。
「リベットだ。数日前に始めたばかりでな」
「私はパレイオよ。服屋の店員の方ね」
「私はレギン。服屋の生産の方かな」
少女がレギンで女性がパレイオか。
「それで、服を見繕ってほしいの?」
「ボロボロだからな。だが手持ちが非常に少なくてな……」
「ウチは最低でもこれくらいは取るけど」
差し出された金額は到底じゃないが支払えない。
うーむ……
「お金の代わりになにか面白そうなものがあればそれでもいいわよ?」
「面白そうなもの……」
「皮とかそういうのでいいよ」
皮ならちょうどいいのがあるな。
「これはどうだ? プロテージャーの皮なんだが」
「へー? 月光の森から来たんだ。にしては随分早いね?」
「巻き込まれてな」
ミウロゥの方を見ながら言うと、2人は納得してくれたようだ。
「となると……満月花関係?」
「そうだ。一応根っこ付きの花もあるが……」
「もし複数あるなら1株でいいから欲しい。その代わりお金は取らないで服を見繕ってあげる」
「そりゃいいが……いいのか?」
こっちにとってはありがたい話だが……
「もちろん。満月花は採取が困難だからね。それにあのプロテージャーもいるし……厄介極まりないのさ」
「1株とは言え植えれば満月の夜には収穫出来るし、種も取れる。こっちにとってはお金より欲しいものなのよ」
「ほー……あげてもいいか?」
俺の後ろでじっとカウンターを眺めている2人に聞く。
2人から貰ったものをそのままあげるのは気が引けるからな。
「はい、お父様。回り回ってお父様の役に立てるなら花も本望でしょう」
「はい、お父様。気持ちが大切ですし、花はまた取りに行けばいいのです」
「「お父様がなされることは何においても優先されるべきなのですから」」
ちょっと重たいな?
「というわけで、服と花を交換で頼む」
「面白い双子ちゃんね。パートナー?」
「まぁちょっとな」
正確に言うとちょっとややこしいし、どこまで話していいものか分からないからな。
「服はどんな感じがいい? ウチは見ての通り一通り取り揃えているわよ?」
「可愛いからカッコイイまで、夜のパーティーから戦闘服まで。ありとあらゆる種類は揃えているよ」
「なら、この子達と同じ感じの服はあるか?」
正直に言うと俺も着てみたい。
「あら、いいわね。確かあったはずよ」
「親子でお揃い? 最高だね」
左右からギュッと抱きしめられてる気がするが、まぁいいか。
「ところで着替えるにはどうすれば」
「服を持った時に出るはずよ」
「そのまま変更が可能で楽なのよ」
今回もお読みいただきましてありがとうございます。
ちなみにここだけの話なんですが……普通の一般プレイヤーは満月花に関しての情報を一切知りません。
またプレイヤーが店を持つにはそれ相応のお金と信頼とかが必要になってくるので……
彼女達の出番はchapter2以降にちゃんとあります、多分。




