ep.19
「す、すげぇ……」
隻腕隻眼であんなに動けるってどうなってるんだ……
っと、そんなこと考えてないでとりあえず隠れないと……
辺りを見回すと茂みが近くにあった。
とりあえずここに隠れて……
にしても凄いな……あの熊もそうだが、それ以上にあんなに動く方が
ポンポン
「今いい所なんだ、邪魔しないでくれ」
おお! あんなデカイ身体でよくも空高く跳べるものだ!
トントン
「今いい所なんだから静かにしろって」
コツコツ
「グルァ」
「だーかーらー! 静かに、しろ……って……」
いい加減鬱陶しくなって後ろを振り返るとそこに居たのはクマ。
プロテージャーよりかは遥かに小さいが人と同じサイズのクマがそこにはいた。
ニッコリと笑うからこっちもニッコリと笑い返す。
ラブアンドピース。
世界は笑顔で平和に
「グルァァァァァァ!」
なるわけが無い!
思わず逃げ出そうとするが、
「グッ!」
クマが両手で背中を押さえつけてきて、地面へと倒れ込む。
なんとか抜け出そうと藻掻くが、到底じゃないが抜け出せるわけがない。
獲物を前にして舌なめずりでもしているのか、背中をそのご自慢の爪で怪我をしない程度に引っ掻いてくる。
クソッ! まだ来たばかりなのにこんな所で初死亡かよ!
デスペナルティとか確かあったよな……というかここで死んだらどうなるんだ……
そんなことを考えていると、視界にトランプの束が入った。
トランプの束……いつのまに……買った覚えも店に並んでいた記憶もない。
思わずソレに手を伸ばすと、トランプの束もまたこちらに寄ってきた。
【トランプの束】
〘トランプの束。54枚入り〙
[パートナー:トランプ]
〖トランプの兵士を召喚することが出来る
1度カードを引くと5分のリキャストタイムが発生する
引ける枚数は1回につき1枚のみ
カードの柄によって性能は変化する
1~10:数字に応じた数の兵士を召喚できる。数字が大きくなるにつれて数は増えるが性能は落ちていく
ええい、長い!
とりあえずカードを引けばいいんだな!
迷うことなくカードの束の1番上を捲る。
「スペードのエース……」
瞬間カードが光り、背中にのしかかっていた重さが消えた。
「グルァ!!」
立ち上がるとそこには鎧姿の騎士がいた。
銀の鎧を全身に纏い、ヘルムで頭をすっぽり覆っている。
左手には盾を右手には剣を持っているようで、後ろからはそれしか判断できない。
クマが爪で切り裂こうとしても盾で防ぎ剣で攻撃する。
だけど、それじゃ時間がかかるし、他のクマやモンスターが来ないとは限らない。
どうしたら……
「ん?」
気づくと目の前には2枚のカードがクルクルとゆっくり回っていた。
ジョーカーのカード……
恐る恐る触ると、カードが光り、
「……え?」
カードがあった場所に2人の子どもがいた。
2人とも同じ格好をしていて、黒の燕尾服に黒のズボン、手にはステッキを持ち、頭にはシルクハット。
顔は真っ黒に塗りつぶされていて分からないが、唯一判別できるのが口元だった。
2人とも赤い三日月のようにニヤリと笑った顔をしてはいるが、片方は左が上に、もう片方は右が上になっていた。
「……助けてくれるならなんでもいい。あの騎士を手伝ってくれ!」
2人は俺の言葉に親指を立てて1度頷くと、たたたっとクマの元へ走っていった。
片方がクマの後ろに浮かび上がり肩をトントンと叩く。
クマが不思議そうに振り返るが、そこには誰もいない。
なぜなら振り向く瞬間に地面へと降り立っていたから。
もう片方も浮かび上がり、反対側からまたトントンと肩を叩く。
クマはまた振り返るが、当然いるのは少し離れた所にいる騎士と俺だけだ。
叩ける距離では無いことを理解したクマが首を傾げていると、肩を再び叩かれる。
回数が重なる度にどんどんスピードが上がっていく。
終いにはクマの首だけ左右に動くようになっていたしな。
結局クマが何度も何度も振り返るのを繰り返し、目を回して地面へ倒れ込んでしまった。
そこを騎士が心臓を一刺しし、首をハネてようやく終わった。
「ハァ……」
大きくため息をついてからようやく安心した。
本来は平原とかで戦闘の経験を積んでからこの森に入るのだろう。
そこをすっ飛ばしてきたもんだから、そりゃこうなるよな……
ふと気づけば騎士の姿は消えていて、手元にはトランプの束だけが残っていた。
これが俺のパートナー。
召喚系の武器……なのか?
王都に着いたら詳しく見るとして、
「なんでまだいるんだ?」
そこにはまだ子どもが2人残っていた。
騎士と同じように消えると思っていたんだが……違うのか。
2人は顔を見合わせるとトコトコと俺に近づき、背中を押すようにミウロゥの元へ行くのだった。
今回もお読みいただきましてありがとうございます。
ちょっと長いんですが、そうしないと中途半端になったので。
ということでパートナーの登場です。
これからも大活躍していきます。




