表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は皇帝  作者: 破魔矢タカヒロ
PR
9/21

その9


 今、私と妃は、皇帝家の紋のあるサプリームに乗車して慰問先の特別養護老人ホームへと向かっている。しかし、私も妃も慰問のことに気が向かない。


 その理由は明らかだ。それは、キタコウライが発射した10基のミサイルだ。


 後部座席にはテレビが装備されている。しかし、めったに視ない。特に「お手振り」のときにはオンにさえしない。


 それでも、今日は別だ。私も妃のコチミも10基中6基が我が国、太陽国の排他的経済水域に落下したミサイルのその後のことが気になるのだ。だから、サプリームに乗車してすぐテレビをオンにしてもらい、二人とも画面を注視している。


 ハメリカ政府も太陽国政府も当然ながらキタコウライ政府を最も厳しい言葉で非難した。


 私は、テレビからも情報を得るが、皇帝庁経由で首相官邸からも情報が入ってくる。


 しかし、今回は、テレビの情報よりも詳細なものは入ってこない。


 いずれにせよ、私が入手した情報によると、ミサイル10基の内訳は短距離ミサイルが4基、中距離が4基、そして長距離が2基とのことだ。長距離ミサイルは大陸間弾道弾とされるが定かではない。


 情報の中には、いつもと違うものが含まれている。


 キタコウライ側は、ハメリカ側の妨害によってミサイルが誤誘導されたために、我が国の排他的経済水域に落下したと主張しているのだ。


 もちろん、ハメリカ側はキタコウライ側の主張を全面的に否定している。


 まだ事態の全容はつかめない。


 そうこうするうちに、サプリームは慰問先に到着し、私たちは慰問を終えた。


 そして、帰路についた。


 なんだか訪問しがいのない慰問先だった。だから、私は、コチミに叱られそうなことを、つい口に出してしまった。


「特別養護老人ホームの慰問なんて、意味があるのかなあ。あの施設の高齢者はかなり重度の認知症だから、私が皇帝だなんて、誰も理解していなかったよ」


 すると、コチミは、やはり、私をたしなめた。


「あらあら、いけませんわね、そんなことを仰っては。潜在意識のレベルでは理解しているかもしれないじゃありませんか。それに、フラダンスを披露した御老人たちは、私たちに観られて、この上なく喜んでいたでしょ。受け手のことは受け手にしかわかりませんことよ。行って良かったのですよ、陛下」


「まあ、そうだね」


 コチミには逆らえない。なぜなら、これまで、コチミは常に正しかったからだ。それでも、私は、苦労知らずなせいか、つい愚痴を言ってしまう。まったく、いつまで経っても、コチミには追い付けない。


 居城に戻った私たちは、夕食を終えると、テレビの前のソファーに座り込んで、二時間ほど動かなかった。


 さすがに10基のミサイルが発射されたとあって、インタビューを受けた市民たちは、その誰もが動揺と不安を口にした。


 非常に奇妙なのは、キタコウライ側の出方だった。


 いつもなら、ミサイル実験の成果を誇らしげに発表するのだが、今回は、ハメリカ側の妨害によるミサイル実験の失敗と、我が国の排他的経済水域への落下がハメリカ側の陰謀によるものであることを繰り返し、執拗に主張したのだった。


 明日は、内閣総理大臣からの国政の報告、すなわち、内奏がある。


 ちなみに、明日は祭祀がない。だから、今日のところは、ぐっすりと眠り、総理大臣からの内奏をじっくりと聞こうと思う。


 はたして、総理は、報道以上の情報をもたらしてくれるのだろうか?


=続く=


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ