その20
しかし、シェルター専用の速報画面を見ても、各局の報道番組を視ても、チュンコクが核ミサイルによる攻撃を受けたと報じている。
情報を一通りチェックした私たちは、今、フリーズしてしまっている。
しかし、フリーズしていても仕方がないので、取り敢えずは、私が口を開いた。
「キタコウライは、チュンコクの同盟国だから、チュンコクを攻撃するなんて、あり得ないよね。ならば、攻撃したのはどの国だ? ハメリカか?」
北宮も意見を述べた。
「ハメリカに戦線を拡大する動機なんかありませんよ」
更にハルノ宮も見解を述べた。
「ハメリカはナシですね。もちろん、キタコウライでもない。欧州の各国にもチュンコクを攻撃する動機なんかまるでない。だったら、消去法でシロア連邦しか残りませんね」
ここで、妃のコチミが厳しい表情で口を開いた。
「シロア連邦が自国の方から全面戦争を仕掛けたことなんか、歴史上、一度もありませんわ。利益にならないことはしない国です。皆さんは、ひとつ、お忘れですわよ」
勘の鋭いコチミの見解だ、私は、それを是非とも聞きたいと思った。
「その『ひとつ』というのは、どの国のことだい?」
「国ではありません。結びつきの緩やかな漠然とした勢力ですわ」
そう言われても、察しの悪い私にはピンとこない。
「そう言われても、私ではわからないよ。もっと具体的に言ってくれるかな」
「テロリストですよ。テロリストの各集団ですよ」
「各集団? 一つの集団ではなく、複数のテロリスト集団ということ?」
「さようです」
「じゃあ、複数のテロリスト集団が組織的に動いているということ?」
「いいえ、組織化されているわけではないでしょう。ただし、彼らは、それぞれの発想が同じだから、連絡を取り合わなくても、組織化されていなくても、同じ方向に動くでしょうね」
「そんな、野生動物みたいなことがあるのかな? 人間は、組織化されているか、連絡を取り合うかしないと、同じ方向には動けないでしょ」
「それが彼らなら動けるのですよ。その理由は、彼らの倒すべき敵が同じであり、それを成し遂げるために抱く発想が同じだからですよ」
「その共通の敵とは、どの国だね、あるいは誰だね?」
「狂信的なテロリスト以外の全員ですわよ。つまり、ハメリカもシロアもチュンコクもキタコウライも、そして私たちの太陽国も、とにかく、彼ら以外の全員が敵なのですよ」
「じゃあ、テロリストたちは、私たち全員を殺すと言うのかね?」
「ええ」
「けど、方法は? いったいどうやって?」
「世界が滅びれば、彼らの敵は、その全員が滅びることになりますわね」
「世界を滅ぼす? だから、方法は? 手段は?」
「だから、核兵器ですよ」
「では、テロリストが核ミサイルとかを保有していると言うのかい?」
「保有していないでしょうね。保有する必要もないでしょう。制御を奪えば済むことですわ」
「制御を奪う? それって、どういうこと?」
「核ミサイルが発射されたら、それを察知して、そのミサイルの制御を奪うのですよ。そして、自分たちが設定した標的へと誘導するのですよ」
「具体的には?」
「ハッキングですよ。おそらく、テロリスト集団のどれかがキタコウライのシステムの一部を乗っ取ったのでしょうね」
「どうして、そう思うの?」
「キタコウライの核ミサイルはカミガタ市に着弾したけど、この東京には飛来しませんでしたわね。でも、そんなわけはありませんわよね。カミガタ市を標的にしたのなら、東京を標的にしないわけがないでしょ」
「あ ・・・ では、東京に着弾するはずの核ミサイルは ・・・」
「ええ、チュンコクの首都に着弾したのでしょうね」
それは、頷ける分析だった。そして、コチミの勘は常に百発百中なのだ。
=続く=




