その18
ハメリカとキタコウライの戦争。その戦況が目下の最大の関心事だ。しかし、私には、戦争と比べれば些細ではあるが、もう一つ気になることがある。
それは、皇帝警察の若い警察官のことだ。私のポテトを横からつまんだ警察官のことだ。
彼は若く、まだ二十六歳だ。
その彼のどこが気になるかと言えば、それは、彼が私の孫娘、コカのことを意識していることだ。彼は、時々、コカの方に短く目をやるのだ。
私は妃のコチミの感想を聞いてみた。
「ねえ、コチミちゃん、あの若い長身の警察官、どう見ても、コカのことを意識しているよね」
「ええ、意識していますわね。たぶん、みんなでテニスをした時からでしょうね」
「そう言われると、そうだね、それまでは、特に意識していなかったような気がするね。けど、どうしてテニスをした時からなのだろう?」
「それは簡単ですわ。男はみんなスケベだということですよ」
「なにそれ、意味が解らないよ」
「では、ヒントを差し上げます。アンダースコートですよ」
「アンダースコート、あ、そう言えば、お尻の頬っぺたがいつもよりも出ていたような気がするね」
「はい、そのとおりですわ。あの警察官は、そこを見てから、意識するようになったのですよ。それに、そうでなくても、コカは美人で可愛いですからね」
「なるほど、そういうことか。それにしても、どうして、あんなに、お尻が出ちゃったのだろうね?」
「ウフ、コカが着けていたアンダースコートが小さ過ぎたからですわ」
「どうして、そういうことになったの?」
「あのアンダースコートは、コカが中学生だった頃に着用していたものなのですよ。城内にたまたまあったものです。借りるように言ったのですが、コカが人のアンダースコートを借りるのを嫌がって、無理矢理はいたのですよ。そうしたら、あのようなことに」
「そうだったのか。いずれにしても、あの警察官のこと、注意しないとね。悪い虫になってもらっては困るからね」
「あら、その必要はありませんことよ」
「どうして?」
「だって、コカの方も彼のことを意識していますわよ。気が付かれませんでしたか?」
「え、そうなの。気が付かなかったよ。それだったら余計に気を付けないと」
「彼なら彼でいいじゃないですか。好青年ですよ。家柄もルックスもいいし。それに、彼の長身から繰り出す剛速球サーブ、カッコよかったでしょ。そりゃあ、コカだって意識しますわよ。自然の成り行きに任せましょうよ」
「そうかなあ。なんだか不満だなあ。まあ、いいや。今はそれどころではないしね」
そう、それどころではないのだ。なにせ、ハメリカとキタコウライが戦争をしているのだ。
それでも、その夜は、キタコウライ側からのさしたる反撃もないままに終わり、私たちは就寝した。
ところが、翌日の未明になって、シェルター内に警報音が鳴り響いた。
=続く=




