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異世界転生した看護師の規格外な冒険物語 ※なお、スキルに頼れたのは最初だけ(悲)  作者: VANRI


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今なすべきこと

 ゼインに言われた。

「今なすべきことをしろ」と。


「今なすべきこと……」

呟きながら辺りを見回す。


 ゼインにさっき聞いた感じだと野獣の方は何とかなるだろう。

 アストラはゼインがしばらくは相手をしてくれそうだ。

 フランやトニーはこちらに向かって来ている。

広間の端で味方同士の筈の兵士が戦っている。


「そうか!! これか!!」

一人で納得し、アストラとゼインから目を離せないでいるアーシュに声を上げる。


「アーシュ!! 行こう!!」

「え? どこに?

 でもゼインと兄さんが……」


「私たちには今なすべきことがあるんだよ!!」

アーシュの手を取り走り出す。


 味方同士で争い合っている兵士たちの元へ行く。

このままここにいては双方ともに争いに巻き込まれるだろう。


 兵士たちの真ん中にアーシュと一緒に飛び込んだ。

「早くここから逃げて!!」


「メアリー様……!」

「アーシュ様!?」

兵士の一部に取り囲まれる。


「覚えてらっしゃらないでしょうか、あなた様方がお産まれになった日に城にいたものです……」

「アーシュ様……! ご無事で良かった、

お見かけしないのでどうされてるかと心配しておりました……!」


 そうか、一部は敵意がない兵士たちか……

と言うことは……



「何やってるんだお前ら!!

 国王様を裏切るのか!?」

「早く殺さねばならないというのに……!!」

もう一方の兵士たちは私やアーシュに迷わず剣を向けてくる。


 敵意のない者たちに対する反対勢力。

つまりこの国王側について意志が変わらない者たち。

 一部は国王の考えやアストラの動きを見たことで、この国の本性を知って気持ちが揺らいでいるのだろう。


「早くここから逃げて!! ここにいては危ないから!!」

 両者に語りかけるが当然のように聞き入れてもらえない。


「メアリー様方がお逃げください!

あなた方が命を狙われているのですよ!!」


「国王様をお守りするのだ! 

逃げるわけないだろう!!」

いつでも攻撃できる構えを見せられる。


 これまた両極端だな。


 その中でも高齢で、白い髭を生やした紳士的な男性が近寄って来て、膝をつき深々と頭を下げる。

「メアリー様、イーサンと申します。

わたくしは貴方様がお産まれになる随分前から執事として働いておりました。

 だが、国王様のこんなお姿はもう見たくありません。

 国王様は変わってしまわれた。

生命の重みを感じる心を失ってしまわれたのです……」


 顔を上げられたので、しわくちゃの顔と目が合う。

「この老いぼれの生命、貴方様の為なら惜しくはありません。最後に貴方様の為に尽くさせてください……」


 それを聞き、周りの兵士も次々とひざまずき始める。敵意のある兵士たちはただ黙ってそれを見ている。


 敵の兵士たちも同じように国王の為に身を捧げる覚悟なのかもしれない。

そうならば説得は難しいだろう……


 イーサンと同じように膝をつく。


「メアリー様!! 貴方様がそんな格好をしては……!!」


「私も同じです。あなた方を守るために命を懸ける覚悟でいます。

 だから、私のためにここから逃げてください」

「そんなこと出来ません!!」

即座に返される。


「あなたにして欲しいことがあるの」

そう言ってイーサンの顔に近付き耳打ちする。


「どう? 出来そう?」

「そうです……ね。

 全く出来ないことではないと思います……」


 煮えきれない返事だが、まあなんとかなるだろう。


「ではお願い」


 イーサンは即座に立ち上がり、こちら側の兵士に語りかける。

「行くぞ皆のもの」

そう言い、広間から外へ向かう。

 周りの兵士たちは何が何だかわからない様子だが、イーサンの指揮下にあるのだろう、それに付いていく。


 広間から出る寸前にイーサンが軽く振り返る。

「どうかご無事で。必ずまた会いましょう」


 目を見据え力強く頷いて見せる。

それを見届けると、従う兵士たちを連れ広間を去って行った。


 それにしてもゼインが言った通りだった。

これは私たちだから出来ること。

私たちを幼い頃から知っているからこそ動かせた感情だったのだろう。

 今なすべきことだ。



 さあ、残された国王側が半分か。

相変わらずこちらに剣を向けている。

だが、半数が広間から出て行ったので動揺している者も少なからずいるようだ。


「メアリー、こっちはどうするんだ?」

アーシュは攻撃された時のために剣を構えている。


「好きにすればいい……」

「は? 逃がさなくていいってことか?」

アーシュが目を見開きこちらを見てくる。


 考えた結果がこれだった。

「こんな国王にでも忠誠を誓い、それを貫き通したいならそうすればいい。

 それで死んだとしても本望でしょ」


 兵士たちの中には迷っている者もいるだろう。


「ただ、命が惜しい者は逃げなさい。

ここにいては安全を保証してはやれない。

 自分のかけがえのない生命を、この国王に懸ける価値があると思うなら残ればいい」


 それだけ残しその場を離れた。

追ってくる兵士もいなかった。

ただ呆然と立ち尽くしているように見えた。





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