アストラVSゼイン
アストラとゼインの戦いは始まっていた。
近付くにつれ剣同士の接触する音が耳が痛くなるほど連続で入ってくるし、魔力同士の衝撃波動が周辺にまで及んで身体がビリビリする。
「凄いな……」
アーシュが必死に二人の動きを目で追っている。
ゼインが大きな剣を振り上げてアストラ目掛けて振り下ろす。それをアストラは短剣で止め長剣でゼインに向かって振るう。
互いの攻撃を止めたり避けたりが目にも止まらぬ速さで行われている。
どちらが優勢なのかすらわからない。
時々二人が避けた攻撃が周囲に飛んでくる。
私は剣を構えるがそのまま動けずにいるので、全部アーシュが魔力を込めた剣で守ってくれている。
「避けて跳ね返された攻撃だけでこれだけの威力だ、
普通の人間は直接受けたらひとたまりもないだろうな」
アーシュが時折呟いている。
ゼインが攻撃しながらアストラに話しかける。
「どうだ、楽しいだろう。強い者と戦うのは」
アストラが微笑を浮かべる。
「そうだな。今までどんなに戦っても戦っている気がしたことはなかったからな!」
言い終わりながらまた長剣を振り下ろす。
それをゼインは結界を施した左腕で受け止める。
「兄ってのは弟や妹を可愛がるものじゃないのか?
お前のやり方は傷つけて苦しめてるだけじゃないか」
「自分の物差しで人を測るなよ。
俺には俺のやり方があるんだよ!」
ゼインに止められている長剣はそのままで、水流で包んでいる短剣をゼインの胴へ押し出す。
だが、すぐにゼインの剣で止められた。
「俺とお前の違い見せてやるよ」
アストラは剣から魔力だけを抜き取るようにして水流で鋭利な剣を作り出す。
ゼインは素早く後ろへ跳ぶが、水の剣がそれを追いゼインへぶつかる。その瞬間に結界で弾かれ雨のように水しぶきが上がった。
アストラが面白そうに笑う。
「あの兵士たちのように簡単には貫かせてくれないか……」
「当然だ。誰と戦っているかちゃんと見ておけ」
ゼインが構えを見せる。
「だが」
アストラが不敵に笑う。
「これはどうかな」
アストラがゼインの方へ手をかざすと、さきほどの水しぶきが一斉に宙に浮きはじめ、一粒一粒が小さな針のような形になりゼインへ向きを定める。
ゼインが避ける間もなくその全ての針がゼインの身体を貫通していった。
軽いうめき声と同時にゼインが膝をつく。
ゼインの全身に血が滲み始める。
思わずアーシュへ声をかける。
「だ、大丈夫だよね? ゼインは治癒能力があるから治せる……よね?」
アーシュは目を凝らして二人を見ている。
「魔力はコップに注がれた水のようなもので、使えば使うほど減っていくんだよ。
元に戻るのに時間を置かなければならないのに、戦い始めてずっとゼインは魔力を使ってる。
しかも、この戦いの前にも結界を張ったりして魔力を使ってただろ?
あとどれくらい使えるのか……」
「じゃあゼインは……」
「わからない。ただ、結界が緩んでいなければさっきの攻撃は全て防御出来たはずだ。
それが出来なかったということは……」
「そんな……」
「それに対し兄さんは魔力を魔剣で増幅している上に、ここぞという時しか魔力を使っていない」
その時、どこからともなくトニーとフランがゼインの前に現れる。剣を構えアストラへ刃を向ける。
ゼインが剣に掴まって立ち上がりながら声を発す。
「これは俺の戦いだ。邪魔をするな」
トニーがゼインを軽く振り返りながらそれに答える。
「傷が治せてないじゃないか。魔力が残り少ない証拠だろ。無駄死にする気かよ」
「やっと叶った戦いだ。ここで死んでも本望だ」
ゼインは、そう言いながら二人の背後に近づいてくる。
フランがそれを睨みつける。
「お前の本望なんてどうでもいいんだよ。
お前が死んだら悲しむ奴がいるだろ。
その悲しむ奴のために戦うんだよ」
アストラが上機嫌で笑っている。
「いいよいいよ、三人ともまとめてやってやるよ」
長剣を左下に構え魔力を込めている。
それをその場で右上へと振りかざす。
すると剣を囲んでいた水流が鋭くなり、針の雨を三人の元へ降らせた。
トニーとフランは魔力を込めた剣で、ゼインは周辺に結界を張ってそれに対抗する。
だが止めれなかった針のような雨が身体を貫通していき血が滴り落ちていく。
アーシュもみんなの元へ行きたそうだが、私を守るためにその場にとどまっている様子。
「皆の所へ行っていいよ?」
心配そうな表情を浮かべ皆から目を離せないでいるアーシュへ声をかける。
「いや……ここを離れてお前に何かあったら皆が戦っっている意味がなくなる……」
アーシュは剣を強く握りしめている。
私がもっと強ければこんな想いはさせなくていいのに……




